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「私が髪を切っているのではない。髪が私を切っているのだ。」豊橋のネクストレベルな美容師をインタビューした。

OTHER | 2018.03.27

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美容師:木戸大紀(Assure代表)

インタビュアー:熊谷真士(ブロガー/ライター)


木戸「まず、お客さんの髪を切る際に我々美容師が心掛けているのは、徹底的にお客様の気持ちになる、ということです。例えば、熊谷さん。いま、どのようなお気持ちですか?」


熊谷「今ですか?少しお腹が空いていますね。」


木戸「なるほど。そういう場合、我々のようなプロの美容師は、お客様同様、自分自身もお腹が空くようにします。」


熊谷「どういう意味ですか?」


木戸「まずはお客様の気持ちになるのです。そうしないと、お客様の真に求める “髪型” を表現することは出来ません。ですから、お越し頂いたお客様のお腹が空いているのであれば、我々美容師も、慌ててお腹を空かせるわけですね。」


熊谷「すみません、さっそく何を言ってるのか理解が出来ないのですが、どのようにお腹を空かせるのでしょうか?」


木戸「私の場合、まずは目を瞑り、次に最高級の松坂牛を想像します。そしてそれを空想の世界で焼きます。ジューという音と共に肉汁が溢れ出ています。辺りには肉の匂いが漂っている。するとどうでしょうか。お腹が空きますね。空腹だ。大変な空腹です。」


熊谷「何が起こってるんですか?」


木戸「尋常ではないほど腹が減ってきました。ああ、これはまずい。空腹過ぎて髪なんて切っている場合ではないぞ。なにが散髪だ。腹が減った。」


熊谷「大丈夫ですか?」


木戸「こうして、ついに、お客様と美容師の目線が一致するんです。お客様の空腹に呼応し、美容師も空腹になった。深い信頼関係が築かれました。結局、“カット” というのは技術ではなく、信頼関係が一番大事なんです。良いカットになるかどうかは、実は、切る前に8割が決まってしまいます。」




木戸「実際、カット前に信頼関係さえ築けていれば、後はもう、どうにでもなるんですね。適当にその辺のハサミを持ってきてですね、もう何となく雰囲気に身を任せて、チョキチョキチョキ〜ンって感じです。何と言っても、もうその頃には信頼関係が出来てますからね。」


熊谷「技術よりも、そういった人間関係的な側面が大切なんですね。」


木戸「その通りです。カット前に信頼関係さえ築けていれば、適当にその辺のハサミを持ってきてですね、もう何となく雰囲気に身を任せて、チョキチョキチョキ〜ンって感じです。」


熊谷「お客さんに、どういう髪型にするかとか、聞かないんですか?」


木戸「それには順番があって、最初に聞くわけではありません。まずはチョキチョキと切って、一通り切りまくってから、最後にお客さんに聞くんです。ところでこんな感じで合ってましたか?って。」


熊谷「そんな美容院あります?」


木戸「いや、正確に言うと、まずはチョキチョキと切りまくって、そして一通り切り終わってからお客さんに聞くんです。ところで今日はカットで宜しかったですか?って」


熊谷「違ったらどうするんですか?」










木戸「ジーザス」



木戸「と言います。」



熊谷「いや、ジーザスじゃ済まされないでしょ。」


木戸「はい、済まされません。しかし、ジーザスと言っている私の手には、なんとハサミがあるわけです。ハサミは英語でシザース。つまり?」


熊谷「はい?」


木戸「ジーザスwithシザース。」


熊谷「何ですかそれは。」


木戸「何でしょうか。」


熊谷「はい?」





木戸「ところで熊谷さん、先ほど、良いカットになるかどうかは信頼関係で8割が決まると良いました。そして1割は、美容師の技術で決まります。では残りの3割は何だと思いますか?」


熊谷「あ、木戸さん、すみません。ちょっと計算が合わないんですが。」


木戸「信頼関係が8割。美容師の技術が1割。そして残りの3割は、何だと思いますか?」


熊谷「どこに3割が残されてるんですか?」


木戸「正解は、“パッション” です。結局、パッションが大切なんですね。お客様に満足して頂きたい。お客様の役に立ちたい。お客様の為だったら、何でもするぞ。この強い気持ち。これが最後には大事になってきます。」


熊谷「いや、パッションの前に、計算が合わないです。」


木戸「このパッションがないままに技術だけを磨いたような輩が、一番危険です。強い情熱のないままに、見せかけの技術だけを向上させていき、やがて傲慢になっていきます。」


熊谷「すいません、計算を先に解決して頂かないと、話しが全く耳に入ってこないです。」


木戸「技術だけを向上させ、パッションのないまま、情熱を持たないまま技に溺れていく美容師達。彼らはやがて、ダークサイドに落ちていき、そして美容師の友であり命であるハサミ、これで人を殺めるようになるのです。」


熊谷「何の話をしてるんですか?」


木戸「しかしダークサイドに落ちて人を殺めるようになったからと言って、彼らのような美容師を責めることは出来ない。彼らは確かに、正しい情熱を持てなかった。しかし、それは社会の責任でもある。彼らは、社会に殺されたんですよ。社会という名の美容師が持つ、常識という名のハサミによってね。」


熊谷「はい?」





木戸「ときに熊谷さん、音楽はお好きですか?」


熊谷「どうでしょう。まあ、普通ですかね。普通に好きですけど、やたら詳しいというわけでもないです。」


木戸「かしこまりました。」






木戸「では熊谷さん、こちらはどうですか?」


熊谷「どういうことですか?」


木戸「私は今、目にコインを入れてます。」


熊谷「いや、それは分かってるんですけど、どうですか?というのはどういうことですか?」


木戸「この目にコインを入れている男性を見て、どう思いますか?」


熊谷「どう、と言うと、やはり目にコインを入れるのやめて欲しいな、とは思いますね。インタビューの途中なので。」


木戸「なるほど。音楽とどちらが好きですか?」


熊谷「“音楽” と、“目にコインを入れている男性”、どちらが好きか、ということですか?」


木戸「はい。」


熊谷「音楽の方が好きですね。」




木戸「そういうことなんです。」


熊谷「はい?」


木戸「音楽単体で好きかと聞かれるとどちらでもない、と答えた熊谷さんですが、目にコインを入れる人を比較対象として出したとたんに、音楽が好きになりましたね。これこそが、美容師にとって非常に重要な技術です。」


木戸「美容師が漠然とどんな髪型にしたいかと聞いても、お客さんは上手く答えられないんですよ。よほど髪型にこだわりのある方は別でしょうが、普通、そういう曖昧な質問をされると回答に詰まると思います。」


熊谷「はい。」


木戸「しかし、比較を出してあげると、とたんに答えてくれるようになります。どんな髪型が良いかと聞くのではなく、雑誌を広げて2つをピックして、どちらの方が望ましいか聞くんです。これにより、お客さんは気持ちよく自分の好みを伝えることが出来ます。」


熊谷「なるほど。確かにそんな気がします。」


木戸「とどのつまり、美容師の仕事というのは、2択を迫ることなんですね。これこそが美容師の仕事の本質です。髪を切ることではありません。2択を迫ることです。美容師は切り手ではなく、迫り手なのです。」


熊谷「なんですか?迫り手って。」


木戸「美容師とはつまり、2択の迫り手。このようなイメージを持って頂くと、美容師のことがグッと身近に感じられるんではないでしょうか?」


熊谷「いや、迫り手と表現されることによって、グッとイメージし辛くなったんですが。なんなんですか迫り手って。“手” とかつける意味ありますかそれ。」


木戸「インスタに我々美容師をアップする際も、“いつもお世話になってる迫り手さんです!” とコメントを添えて頂けると嬉しいですね。“素敵な迫り手さんですね!” とコメントがつくと思います。」


熊谷「いや、どんだけ “迫り手” と呼ぶように迫ってくるんですか。迫り手と呼ぶように迫り過ぎでしょ。もうそれ、迫り手じゃないですか。」


木戸「は?」


熊谷「え?」








木戸「最後に、プロの美容師から見て、今後トレンドになってくるであろう髪型について説明しておきます。ある程度の長さを残した状態で、このように全て髪を持ち上げるようにして下さい。」







木戸「次にこれを、2つの大きな束になるように分け、毛先をねじります。」








木戸「完成です。」



熊谷「なんですか、これは?」


木戸「この髪型は、“エターナル・ツー” と言います。永遠の2、ですね。右と左の2つに分けたからこのような名前がついています。どうですか?」


熊谷「どう、と言われると、どうでしょうね。非常にコメントが難しいです。」


木戸「正直にどうぞ。」


熊谷「正直に言うと、あまりカッコ良くはない気がしますね。」


木戸「なるほど。」


熊谷「いや、なんていうか、ダサいというよりも、ちょっと僕の理解が追いつかないというか。何て言うんでしょうかね。」


木戸「いや、良いんです。大丈夫です。以前うちのスタッフに見せた時も、盛大に罵声を浴びせられたので。」


熊谷「そうですよね。」






木戸「たしかに、この髪型はダサい。ダサいですよ。それは僕も一美容師として承知しています。ダサいですし、面白さとしても中途半端です。もう、全く意味が分かりません。そんなことは充分に理解しています。」


熊谷「安心しました。」


木戸「ですが、髪型がダサいからと言って、なんなんでしょうか。」


熊谷「はい?」


木戸「髪型がダサいから、何なんでしょうか。そんなに髪型が大切ですか?」


熊谷「いや、今後トレンドになってくる髪型を教えてくれるという流れだったので、少なくともこの会話においては髪型は大切だとは思います。」


木戸「熊谷さん。これからはね、“人間力” が試される時代ですよ。髪型じゃない。髪型がカッコイイからなんだ。それが人間の価値ですか?」


熊谷「すみません、何を言ってるんですか?」


木戸「僕はね、うちに髪を切りに来たお客さんには、毎回、決まってこう言うんです。髪なんて切ってる暇あったらね、」







木戸「内面を磨きなはれ。」



熊谷「ヒャぃ?」



木戸「大事なんは、人間力や。見てくれやない。大切なんは、信用やで。辛いときも歯食いしばって頑張るんや。仲間を大切にして、大志を抱き、社会にウンと幸せをもたらすんや。」



熊谷「あの、髪を切りに美容院に来てるんですよね?お客さん。」



木戸「ええか、お客さん。小さいことに拘るんやないで。自分の中に、がっしり、太い幹みたいな信念を育てるんや。それに毎日水をやって、大きく大きく、育てるんや。」



木戸「いつかそれが大木になり、そこに花が咲き、世界を明るく照らすんや。そんな人間になるんや。本日はどうなさいますか?エターナル・ツーで。畏まりましたあぁっぁあぁああああぁぁああぁぁあ〜!!!」








木戸「ええと、そういうわけで、豊橋に来た際には、是非、Assureに足を運んで下さい。愉快なスタッフ達が、あなたにピッタリの髪型を提案させて頂きます。」


木戸「あ、ちゃんと、どんな髪型にするのかも事前にヒアリングしますし、技術力も文句無しです。熊谷さん、今日はどうも有難う御座いました。」


熊谷「色々なお話が聞けて良かったです。本当に有難う御座いました。」


美容師:木戸大紀
企画・インタビュー・文:熊谷真士

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