A Day Without Prohibition / 禁戒が解けるその日まで

きっとこの先何度もあなたのページを開く
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

美しい友情とはどんなものでしょう。いつでも傍にいること？　それとも長く続くこと？
ずっと友だちでいようねと指切りした、そのうち何人との約束を守れているか分かりません。人生は思ったよりも長くて、ことあるごとに私たちを引き離そうとするのです。疎遠になってしまったら、友だちではなくなるのでしょうか。

エルヴィとイルヤが言葉を交わすのは、これが最後かもしれません。そして声色も、表情も、次第に記憶の中で薄れていってしまうかもしれない。それでもダンスパーティーで一緒に踊ったあの時間は、きっとこの先エルヴィとイルヤの心を温め癒すはずです。二人がお互いの手を取り合ったように、心細い夜には縋る光になるでしょう。

二人を見ていると、友情とは忘れられないページみたいなものかもしれないと思うのです。たとえその友人が近くにいなくとも、共に過ごしたことが記されたページはいつでも開けるように栞を挟んであって、何度も思い出しては読み返す。エルヴィとイルヤの物語を通して、自分の中に刻まれている強烈な数ページが開かれていくようでした。