Blackmoll / クロネズミ

大好きだから同じ世界で生きていたいだけ
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

幼い頃、皆が同じ世界で生きていると思っていました。祖父母は両親より遠くにいる存在でしたが、私のすべてを理解してくれている前提で甘えていたし、私もまた祖父母のすべてを知っているということを疑ってもいなかったのです。

大事な人がすぐそばにいても、まったく同じものを見ているとは限らない。それは色々な経験を経て自分自身が作り上げられていけば受け入れられますが、子どもの私が家族の知らない一面に遭遇したときにはひどく動揺したものでした。

カーラもまた、自分はおばあちゃんと同じ世界にいると思っていたのかもしれません。おばあちゃんを理解して、守ろうとするカーラ。「クロネズミなんていない」、と言ってしまったが最後、きっとそこから弾き飛ばされてしまうような気がして恐ろしかったのかもしれません。違う世界に住んでいる人同士がそれでも手を取り合うために、大人は線引きをします。でもそうじゃなくて、大好きだからぴったり離れず同じ世界に住み続けたいのですね。おばあちゃんの言っていることを信じようと寄り添うカーラの真っ直ぐさがまぶしく、愛おしくなる作品です。