LUNA AND THE BRAIN TUNA / ルナと空とツナ

空想に羽根をつけ直せば、荒波も越えられる
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

子どもの空想には羽根がついていますね。どうしたらそうなるんだとか、そんなこと起きるわけないとか、大人の常識をひらりと躱してどこまでも飛んでいけそうです。私もかつては空想を広げて楽しく遊んでいたはずなのに、いつしか「正解」が求められる世界に来てしまったようです。
大人の世界では、まさに正しく理解することが求められていますよね。例えば大事な人とのすれ違い、実らなかった努力、失ってしまった宝物……、とてもここでは挙げきれない、さまざまな悲しみが人生にはあって。そんな事実をそのまま受け入れ乗り越えよと、自分自身に言い聞かせて、自分の言葉に傷付いてしまいます。

レオも最初はなかなかルナに話が通じず困った様子でしたが、彼女の空想に手を引かれ、落ち着きを取り戻していきます。深刻な病気についての告白も、脳内のツナを巡る冒険譚に変えてしまうルナ。目の前で起きていることを絶望的な出来事に変換しているのは、他でもない私自身なのだと気づかされます。

受け入れがたい悲しみに襲われたとき、ルナならどんなふうに見方を変えてくれるのでしょうか。あの元気な空想の羽根をもう一度自分につけ直して、荒波を越えて、少しでも穏やかで美しい世界に飛んでいきたいです。