Once upon a time my prince will come / いつか王子様が現れて

自由奔放なルナのパワーが常識のブレーキを壊してくれる
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

昔はただ可愛いからケーキ屋さんになりたかったし、お花が綺麗だからお花屋さんになりたかったのです。やってみたいことに筋の通った理由はいりませんでした。そしてただパンが好きだからパン屋さんになりたかった私からすると、パン屋さんで働くルナの生活も魅力的に思えますが、彼女はそんな日常から夢の世界へ駆け出したかったようです。ルナの物語はまさに子どもが描いた夢みたい。現実には起こり得ない展開でも、誰も止めません。

大人になってしまった私が訳もなく何かをやってみたい衝動にかられたとき、冷静な自分が待ったをかけます。ブレーキをかけるのは簡単。でもエンジンをかけるには一苦労。そんなときは物語のパワーをもらっています。ルナの世界は謎めいていますが、次に何が起こるのかとわくわくします。後ろからついていったら、未来が拓けていくように思えるのです。

現実と夢の境目を曖昧にさせる表現も楽しい本作。私は緑のグッズを掲げた人たちが車道を埋め尽くすところが好きです。皆さんもぜひお気に入りの不思議ポイントを見つけてみてください。