MILBON DA INSPIRE

DA Grand-Prix Final 2017.05.16 tue DA of the yearの栄冠は誰の手に?その瞬間を見届けよ!

Part.1 ライブレポート Live Report

5月16日に開催された『MILBON DA GRAND-PRIX』。
2部構成で実施され、1部のFINALは東京青山スタジオにてコンテストが行われた。
ファイナリスト8名による白熱したヘアバトルはもちろん、
コンテストの裏側についてもレポートします。

コンテストは個人戦ではなく、
スタイリスト、モデル、アシスタントが
融合した団体戦。

闘いは会場が静まりかえっている午前のうちから始まっていた。12時40分からスタートする35分間のバトル。その2時間40分前の10時には、福岡から勝ち名乗りをあげた那須美和一行が黙々と仕込みをしていた。遅れること15分。台湾の江宜伶グループが登場する。続いて韓国のLEEたちが、さらには大阪で権利を得たmiiたちも入ってくる。
会場に出場者が増えてくると自然と熱気が帯びてくるものだが、感じられない。熱さよりも冷たい空気が充満しているようだった。それは緊張を隠そうとするときに発する無意識の素っ気なさではなかったか。

出場者が仕込みをしているとき、別室にはゲスト審査員たちが続々集まっていた。ここもやけに静かだった。自分たちが経験してきたコンテストという様式へのリスペクトなのか、はたまたプレイヤーに思いを馳せるシンパシーなのか。
審査員たちへのルール説明が行われたのち、部屋にパネルが持ち込まれ、8名の出場者たちが作ったヘアデザインの写真、A(リアル)、B(クリエイティブ)が飾られた。審査員たちはAとBを見ながら作品のクオリティを評価していく。先入観なく、より作品に集中できるように制作者の名前は分からないようになっている。そして、このあとのC(リアリティブ)のモデルの仕上がりとの総合点で結果が決まるというわけだ。

審査員たちが採点している頃、出場者たちは控え室へと戻り、そのときが来るのを待っていた。先程まで仕込み場であった会場は、テーブルや鏡が一斉に片付けられ、何もない空間へと変わっていた。あるのはモデルが座るイスと、AとBの写真が貼られた8つの黒いボックスのみ。12時20分になると、審査員25名がコンテスト会場へと入ってきた。出場者8名に対して、ゲストが25名と圧倒的に多いのはコンテストの中でも珍しい。

12時30分。MCが1組ずつエントリーナンバー、ヘアサロン名、スタイリストの名前を読み上げ、ヘアサロンごとに入場してくる。先頭を歩くのはスタイリスト。その後ろにモデルがいて、最後がアシスタントという並びだ。

開会の挨拶があり、12時40分にいよいよアジア一への火蓋が切られた。高揚感をあおるようなBGMが流れる中、出場者たちは頭に描いた設計図を頼りにヘアデザインを構築していく。音楽にかき消されることなく、ハサミの音が鳴る。歩き回る審査員の視線がナイフのように突き刺さる。彼らの気配自体、重量級アスリートの圧迫感と同じだ。それでもスタイリストは一心不乱でモデルと向き合う。ある意味、根性試しともいえる。あえて鏡の持ち役となるモデルもいれば、凜とした佇まいで我々のほうを向いているモデルもいる。アシスタントはスタイリストがスムーズに動けるように、常に一歩前の準備を怠らない。そうして目の前にいる出場者たちは同じ空間で同じ時を刻みながらも、各々の役割を果たすという意味において、別々の時間を過ごしていた。

この様子を眺めていたら、不思議な感覚に襲われた。濡れた服が体にまとわりつくような違和感に似ている。ふとパンフレットに目を下げた。そこにはスタイリストの名前だけが書かれている。しかし視線を上げると、確かに3人が3様の役割を果たしながら闘っている。そのとき初めて気づいた。これは個人戦ではなく団体戦なのだと。そう考えると腑に落ちる。なぜ3人で入場するのか。個人戦ならばスタイリスト一人で現れ、モデルとアシスタントはすでにその場にいればいいのだ。そうでないということは、3人のチームで戦えというメッセージだ。つまり、このコンテストはサロンの延長線上を競っていることになる。

2部のAWARDのとき、スタイリストたちに聞いてみた。「3人で戦っているように見えたのだが」。全員が「そのとおりですね」と答えた。そのあとで「いや、もっといます」と言う。衣装係、先輩、後輩、お客さま……。今日の出場者の中で誰が最も真剣に、そしてストイックに日頃のサロンワークをこなしているのか。日常を一番大切にしてきたチームが勝利を掴むべきなのだ。
13時15分。緊張感漂う、密度の濃い35分間が終わった。そのときファイナリストたちにゲストから惜しみのない拍手が送られた。栄冠は誰の頭上に輝くのか。結果はこのあとに決まる。

総評 General Comment

HEAVENS小松 敦

DAはAパネル(リアル)で登場したモデルを使ってリアリティブを表現する大会。ファッションを含めて、どれだけイメージが変化し、新鮮さを与えることができたかがポイントだったと思います。僕たち審査員は切る前のモデルの状態を知っていますから、「この子をこんなふうに変えたんだ」という驚きがほしいんですね。
そういう意味では、全体的に良かったと思います。僕もプレイヤーなので、若くて才能ある人たちからたくさん学んで、感じることができました。

writtenafterwards山縣 良和

僕はファッションデザイナーなので、カット技術については分からないのですが、スタイリングが終わってクロスを取ったときのインパクトはどれも印象的でした。ヘアとファッションって地続きでつながっているので、服と髪がどこまでコラボレーションしているのかという視点で見ていました。その中において、台湾や韓国の髪型やファッションは、隣国なのに日本とはかなり違うものだったのでおもしろかったです。とても楽しめるコンテストでした。

kakimoto arms小林 知弘

今までDAは1位を決めていませんでした。今回から決めるということで、出場者の自信や達成感につながるのであれば、僕はいいことだと思います。外国の美容師さんはいい意味で刺激的でした。日本人の作るスタイルって繊細な要素が強いんだなと改めて感じました。細かいところまで気を配って、細かく細かく作っていく。一方、外国人チームを見ていて、荒削りだけど大胆な発想をするなと感じ、とても新鮮でした。さらにいろんな国から参加すると、もっとおもしろい大会になると思います。

LILI山本 真梨子

どんな女性像を作るのかなという気持ちでワクワクしながら見ていました。街中を歩けるくらいのリアルを残しながらも目を引くデザインで、その人らしさをどう表現したのかというところをジャッジしました。たくさん切ったからいいというわけではないし、ちょっとしか切っていないからダメというわけでもなくて、バランスとしてどうだったのかというところですよね。出場者が8名で、審査員が25名という中でのコンテストは、やる方としては大変だったと思います。出場された方々の姿はとても美しくて、自分自身、背筋が伸びたイベントになりました。

Photo : Koki Okumura

Text : Yasuhide Takizawa

Edit : Shingo Mine

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