L'âge acrobatique / 宙を舞う恋

あの痛々しく純粋だった日々が恋しい
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

ダイナミックな体操で魅せるミルティーユに夢中なリュカ。リュカが回転を成功させる姿はなかなか見られませんが、本作では彼の綺麗な空回りを見続けることになります。傍からはリュカとミルティーユの温度差が明らかなのに、当人には最後まで分からないというのが皮肉ですよね。彼女を想うあまり、待ち伏せや勝手な相性占いなどを始めるリュカ。まだ得体の知れない恋に踊らされている姿が、子どもの頃の自分を思い起こさせます。

私が好きなのは、リュカが友人と3人で恋愛話をするシーン。ささやかな進展を自慢したり、キスという未知の存在について話し合ったり……。彼らはリュカが大人になったときの話もしていましたが、その頃記憶に残っているのは、ミルティーユとの思い出よりも案外こちらかもしれませんね。あるとも無いとも言えるようなことについて延々と語り合っているうちに陽が落ちる、そんな日が私の一部を作っていったと思うのです。あの日々が痛々しくも、愛おしく感じてなりません。

登場人物たちの洋服や、背景にマッチした花束など、おしゃれな色合いも楽しめる本作。リュカのようにのめり込んで観るのも、一歩引いて観るのもおすすめです。