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香料開発者インタビュー

インプレアの魅力をさらに深堀するインタビューシリーズ。
今回はインプレアの香料開発を担当された、コーセー研究所 香料ユニット 村瀬正剛さんに、インプレアの香り開発の秘密をお聞きしました。

編集担当 ※以降 【編集】 
「まずは、一般的に化粧品に香りをつける意味とは何なのでしょうか?」 

村瀬正剛さん ※以降 【村瀬】
「香りは、そのブランドであることを示す個性のようなものだと思っています。例えば、その化粧品がインプレアであることを、まずは容器で認識しますよね。では、乳液をふたつ手に出されて、インプレアだとどう判別するでしょうか?香りは間違いなく化粧品に個性をもたらすものです。香料開発者としては、成分の混合物である液体や紛体が、香りによってたちまち化粧品としての命を吹き込まれるような感覚があります。」

【編集】
「インプレアは、美容室で販売されるということで、初めに香料開発の依頼を受けたときはどのように感じられましたか?」

【村瀬】
「まずは美容師の方がお客様へ商品を紹介する場面を想像しました。そこにはドラッグストア等のセルフの販売とは違い、コミュニケーションが存在します。
滞在時間が2時間以上ある中で、美容師さんとお客さまが会話をしながら、化粧品のテクスチャや香りを、よりじっくりと感じていただくことが可能だと思いました。しかし同時に、美容師さんは髪の専門家なので、どのように化粧品の香りを魅力的に発信していただけるか、分かりやすさ、語りやすさがあると良いと思いました。それが後でお話しする美容成分との連動や、脳波のデータでした。」

【編集】
「美容室で販売されるというのも新しいですが、インプレアのコンセプトは“印象革命”ということで、これを香りに反映させるのはとても難しかったのではないですか?」

【村瀬】
「髪の毛をキレイにするために訪れる場所で化粧品を紹介されることを考えると、“印象を変える”というコンセプトは、お客様にとって自然に受け入れられそうだと思いました。髪の毛をキレイにすることも、化粧品を使うことも、どちらもより良い自分になりたい、自分の印象を変えたいという共通の思いに基づく行動だと理解できました。化粧品が売られる場所、ブランドコンセプト、売る人を理解することは、香りづくりにおいてはとても重要です。インプレアの“印象を変える”と言うコンセプトに対し、使用前後で“印象が変わった”とお客さまが感じてくださるために、香りが役立つと思いました。美容室で販売されることを考えるとあまり個性的な香りになり過ぎると、多様な美容室の雰囲気に合わない可能性があります。一方で、あまりに無難な香りになってしまっては、お客様に積極的に選んでいただけません。特にインプレアは高級品ですから、万人に受けることと、特徴な香りであることのバランスをうまくとりながら創香しました。」

【編集】
「万人に好かれるのに、記憶に残る香りの設計なのですね!インプレアの香りはどのような構成になっているのですか?」

【村瀬】
「開発スタート時に、水の滴る花の画像やキーワードをいただきました。それをもとに、狙った香りはフレッシュで透明感のあるフローラルを中心に、使うごとにくせになるような香り。そして、ヘアケア製品ではアップルの香りが非常に多用されることと、美容成分としてベビーアップルエキスが配合されることから、アップルをアクセントとして効かせ、美容室・美容成分との連動を図りました。アップルは万人受けしますし、明るい印象を与える一方、量が多くなると安っぽく感じられてしまうので、バランスには十分注意しました。また、クセになるような香りと、リラックス効果を狙ってハーブを積極的に使いました。ただしこちらは量が多すぎたり、質を誤ると好みが分かれる素材なので、こちらも全体のバランスを見ながら適切な量と質で創香するのがなかなか大変でした。さらに、リラックス効果のデータはどんな香りでも結果が出るわけではないので、過去の知見を生かして、狙って創香しました。」

【編集】
「2つのアイテムで、インプレアの香りのアレンジがありますが、それぞれどんな工夫がされているのですか?」

【村瀬】
「ジェルクリームは、日常のスキンケア用としてだけでなく、睡眠マスクとしての提案をする商品なので、現代の忙しいお客様により深いリラックス感を味わっていただきたく、ハーブをより強調したアレンジにしました。インプレアとして共通の世界観を持ちつつ、特別感もある香りとして、適度な距離感で創香できたかなと思います。」
「フェイシャルオイルはローズをコンセプトとした製品ですので、香りもローズをアクセントにしました。ただローズと一口に言っても、軽やかでフレッシュな薄いピンクのイメージから、真紅で濃厚なイメージ、フルーティがかったものや、野性味のあるグリーンなものなど、さまざまな種類があります。今回はインプレアの基本の香りのイメージに上手く溶け込むように、フレッシュで軽やかなローズのイメージを中心に、ハーブとの繋がりを考えてややナチュラルな印象を意識しながら全体を整えていきました。」

【編集】
「最後に、美容師さんに向けてメッセージをお願いします。」

【村瀬】
「お客様が化粧品に求める価値は様々だと思いますが、化粧品を使って“より良い自分になりたい”という前向きな気持ちになるため、また、心地よく使い続けていただくためにも香りは大きな役割があると考えています。そうした香りを開発するためには、企業にその風土があることと、専門スキルを持った研究員がいることが必要です。コーセーの香りづくりは非常にこだわりがあります。コーセーで香料開発に携わるには、嗅覚テストで素質を認められなくてはいけません。そして、長い期間をかけて香料の専門知識を学び、スキルを身に着けた者にのみ許される仕事なのです。
私たちは香りの流行を見逃さないため、いつも最新のフレグランス製品を評価しています。また安全性に関しても、世界的な基準に加え、自社独自の基準を設けて開発を行っています。化粧品における香料開発にここまでのこだわりを持つ企業は非常に珍しいですし、インプレアの香りもこのような過程を経て開発されていますので、これからもぜひ、美容師のみなさまに自信をもってご提案いただけると嬉しいです。」

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