HAIR DESIGNER

髪を切りにくるだけじゃない。何度でも戻ってきてしまう美容室

並んでおしゃべりする姿は、まるで仲のいい姉妹のようです。表参道のサロン「nu+LIM」のトップスタイリストの京里さんと、京里さんの作品のモデルをしたことがきっかけでお客さまになったヒロミさん。すでに6年ほどのお付き合いになるというおふたりに、お話をうかがいました。

ーーおふたりはどのように出会ったんですか?

京里:東京に出てきた頃によくモデルハントをしていて、ヒロミさんに原宿で声をかけました。6年くらい前かな? 今ヒロミさんが25歳だから。

ヒロミ:あのときはまだ10代でしたね。

京里:お客さまとして来てもらう前に、モデルをしてもらったんです。当時は月に1度、個人の作品撮影をすると決めていて。雑誌のためとかではなく、自分でいろいろやってみていた時期です。その撮影をしたときに、初めてちゃんとしゃべりました。

ーーお客さまとしてサロンに行くようになったのはいつ頃ですか?

ヒロミ:作品のモデルをはじめたのと同じ頃だと思います。

ーーモデルをしたからといって、必ずしもお客さまになる訳でもないと思うのですが、それはなぜ?

ヒロミ:えー!(照)

ーーおふたりのなれそめから聞く企画なんです(笑)。

ヒロミ:何でだろう……。当時行きつけのサロンがなくて、たまたま声をかけてくれたのが京里さんでした。それから仲良くさせてもらっていたのがきっかけかな、多分。ふと「行ってみよう」と思ったんです。

ーー今、通う頻度はどれくらいですか?

ヒロミ:すごくバラバラです。

京里:かわいい子なので、ほかにもいろいろなサロンからモデルを頼まれているんですよね。だからコンスタントに来店してくれるというより、ちょくちょく来てくれる感じです。

ーー京里さんに施術してもらいたいと思うのは、どんなときですか?

ヒロミ:「髪型をガッツリ変えたいな」というときです。基本はショートなんですが、たとえば伸びてきた襟足を切るだけなら、ほかの美容師さんにお願いすることもあります。でもちゃんと変えたいときは京里さんにお願いします。

ーー最近もそういうこと、ありました?

ヒロミ:はい。この間、グリグリとした強めのパーマをかけてもらいました。最初は別のサロンでかけたんですけど、あまり思い通りにならなくって、それで京里さんのところへ。どういう風にしたいかを伝えたら、絶対に気に入るようにしてくれるので。実際、そのときもすごく気に入りました。

ーー自分のやりたい髪型を、どんな風に京里さんへ説明していますか?

ヒロミ:この前は「強めのパーマをかけたい」って伝えましたよね?

京里:でもまぁ、割とふんわりしているよね(笑)。だから、前にやった髪型と比べてどう変えたいかや、今の髪型の何が気に入っていないかを聞いて、どうするか考えていきます。でもヒロミさんは基本的に「何でもいい」って言うイメージ(笑)。

ヒロミ:一応、毎回ひとつだけ「これだけは譲れない」というポイントは決めて来て、そのほかはお任せしています。

ーー京里さんに担当してもらった中で、「これは挑戦したな!」という髪型はありますか?

ヒロミ:ここ(※左右もみあげ付近の髪のひと束)を黄色にしましたね!

京里:作品撮影のときだね。原宿の「CODE+LIM」に勤めていたときに、美容専門誌のカラー特集に参加することになって、モデルを頼んだんです。髪の毛をポイントでブリーチして、カナリアみたいな黄色を入れました。

ーーかわいい! ヒロミさんは、髪型へのこだわりは何かありますか?

ヒロミ:うーん……、基本はボブですよね?

京里:そうだね。ボブが短くなったり、少し長くなったり。でも何をしてもかわいくなるんですよ(笑)。

ーーじゃあ京里さんからすると、ヒロミさんへの施術は、素材を信頼してちょっと遊んでみるというような感覚ですか?

京里:そうですね。パーマをかけたり、ストレートにしたり。前は黒ベースでカラーも入れていましたが、最近はあまりしていないかな。施術中は、仕草や表情をよく見るようにしています。それで、たとえば「あ、今本当は『ちょっと長い』と思っているけど、言いにくいんだな」と感じたら、こちらから聞いてあげる。ヒロミさんに限らないですけどね。

ーーところでヒロミさんは、毎日きっちりスタイリングとかできるタイプですか? というのは、自分がズボラなほうなので……。

ヒロミ:わたしもやらないです。コテで巻いたりもしません。

ーー京里さんはヒロミさんの髪型を作るとき、そういう部分も考えていますか?

京里:スタイリングのことは、これもヒロミさんに限らず、みなさんに確認しますね。おふたりみたいな人もいれば、逆にすごくスタイリングが好きな人もいます。あとはライフスタイル、たとえば朝起きてどれくらいの時間をスタイリングにかけられるのかなども含め、どのような提案をするか考えます。

ーーそんな風に考えられているからか、今日のヒロミさんの感じもナチュラルで素敵です。

ヒロミ:おしゃれ過ぎるよりもシンプルで、無造作にしていても大丈夫な髪型が好きです。

京里:わたしも個人的には、適当にしてかわいい髪型が一番いいなと思っていますね。

ーーおふたりが施術中、どんなお話をしているのかうかがいたいです。

京里:どこへ行ったか、何がよかったかという、プライベートの近況を報告し合います。あとは仕事のことですね。「職場でこういうことがあってうれしかった」という前向きな話が多いかな。

ヒロミ:京里さんは、距離感が遠いようで近い人という感じ。京里さんも自分のことを話してくれますし、誰にでも話すわけじゃない、深い部分の話もできる。いわゆる「お客さんと美容師」というより、「人と人」みたいな距離感です。

京里:それはヒロミさんの人間性もあると思うんですよね。人間味があるというか、一見ふわっとしているようで、すごくしっかり考えている人。一方で、わたしはどうも人から遠い存在に見られやすいらしく、そのイメージをできるだけやわらかくしたいとは常々思っています。お客さまとは、まさに「人と人」としてお付き合いしたいんです。

ーーヒロミさんから見た京里さんの魅力を、改めて教えてください。

ヒロミ:もちろん髪のことはお任せできます。でもそれだけじゃなくて、「京里さんにこの話を聞いてもらいたいから、髪を切ってもらおう」と思うときがあって。この間、パーマをかけてもらったときもそうでした。生活に変化があって悩んでいて、それを聞いてもらいたかったんです。

ーーでは京里さんから見て、ヒロミさんはどういうお客さまですか?

京里:癒し系、かな(笑)。でもさっき言ったように、若いときから働いているからか、すごくしっかりしています。わたしより年下とは思えないくらい、自分が好きなものをちゃんとわかっているし。たとえばミニシアター系の映画をよく知っていたりだとか、センスもすごくいい。最近もInstagramで映画のことをUPしていたよね?

ヒロミ:早稲田松竹(※東京・高田馬場にある名画座映画館)で観た、ジャン=リュック・ゴダール監督の2本立て上映のことかな?

京里:うんうん。そういう姿は見ていておもしろいし、すごく素敵だと思います。

ーー京里さんはお客さまに今後、どういう髪型を提案していきたいですか?

京里:「おすすめの髪型はありますか?」と聞かれたときに、そのときどきに合う提案を常にできるようにと心がけています。その提案を更新し続けるために、いつもヒントを探したり、練習したりしています。そこはブレません。

ーー最近だと、どんな髪型がおすすめですか?

京里:パーマスタイルです。湿気が多い夏も、髪のことがいやにならないような髪型やカラー。それを人に合わせて提案するという感じですね。その場限りではなく、家に帰ってからの扱いやすさも含めて、お客さまの期待以上の髪型をつくろうと意識しています。

ーーそういう真剣な思い、お客さまであるヒロミさんにもきっと伝わっていますよね?

ヒロミ:はい。京里さんに髪を切ってもらい、話をしていると、何だか前向きになれるんです。だから別のサロンに行っても、やっぱり戻ってきてしまうんですよね。

写真:ミネシンゴ
取材・執筆:川口ミリ

TAGS

RECOMMENDED POSTS

FOLLOW US