CLODAGH / クローダ

これまでなんて裏切ってもいいほどほしいもの
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

クローダの才能に惚れ込むも、居住地の制限で彼女を自分のクラスに入れることができず悶々とする主人公。その一項目をごまかすくらい、きっと誰にもばれない。そして皆もクローダを仲間に迎えることを望んでいる。それでも主人公はクローダを家に帰します。主人公にとって、禁じられたことを行う、つまり嘘をつくのは許されないことなのですね。嘘をつけないのは世間に対してでしょうか。それとも神様に？　周りに対してももちろんですが、自分自身を裏切るのってなかなか難しいですよね。

私が主人公と同じ選択を迫られたら、彼女と同じく、クローダを即座に引きとめることはできないでしょう。私にとって『○○すべき』、と強く信じるのって、そうしていれば平穏に生きられると思っていること。これまでその生き方に支えられてきたわけで、急に変えようなんてしたものなら心臓がぎゅっとなってしまいます。

でも、変えかねない存在に主人公は出会ってしまったのですよね。そんな人に、ことに出会うなんて一生に何度あるでしょうか。何かを得るためにあり方を変える、そんな局面で運命は動くのかもしれません。あとは自分が覚悟を決めるだけ。さて、主人公は書類にサインできるのでしょうか。