The Dog Who Lost His Bark / 吠えるのをやめた犬

愛することが少しずつ上手になれたら
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

作品を観終えた今、「愛情とは何か」を問われているように思います。
私にとっての愛情とは、はっきりと感じ取りたいのに決まった形がない。
永遠であってほしいけれどいつか失われてしまうかもしれない。
不安定なのに縋りつきたくなってしまう。
なんともやっかいなものです。

そんな中でも、飼い犬は私に変わらない愛情を信じさせてくれる存在のひとつ。
私は至らない飼い主かもしれないけれど、彼女は私の愛情を疑うことなく、私を信頼してくれるのです。

最初の飼い主に酷い仕打ちを受けた犬のオズ。そして両親の別居に不安を覚える少女ロイジン。二人はともに過ごしながら、互いに心を開いていきます。

父親の裏切りを許せないと思いながら、自らもまた違う形でオズを傷つけてしまうロイジン。
大事にしようと心に決めたはずなのにうまく出来ない。
私にも彼女たちのように、愛し方を間違えてしまうことがきっとあります。

それでも、ロイジンに健気に応えるオズが教えてくれます。
愛し方を間違えてしまったという事実から逃げないこと。
自分が傷付けた場所を手当てして、『あなたを大切に想っている』と伝えること。
そうすれば、最初から完璧で美しい形ではなくても、愛することが少しずつ上手になっていけるかもしれないから。