Whales don’t swim / クジラは泳がない

独りを恐れず手に入れた美しさは、簡単には奪えない
―古海カナエ（MILBON AWARD大賞受賞者）

『結局は自分が怖いだけだろ』というイヴの台詞が、今も私の痛いところに刺さっています。
本当はきっと一人でも生きていけるけれど、独りであることを恐れてしまうのです。
分かりやすく美しいものは目を惹くから、「いつも誰かに囲まれているあの子」を羨ましく感じてしまう。どれだけ多くの人が傍にいたとしても、誰とも繋がりを感じていなければそれは孤独にほかならないというのに。

夜な夜な一人でシンクロナイズドスイミングの練習を重ねるイヴは、彼をいじめているクラスメイトから見れば恰好の的なのでしょう。でも、水面がゆらゆらと光を反射する幻想的なこの空間で、真剣に努力する彼と一対一で向き合ったら、決してプールの中には立ち入れない。

誰も見ていないところで頑張らなければならないとき、寂しさからどうしても自分を否定しがちな私。そんなとき、孤独を埋め合わせるだけの関係に逃げるより、努力する自分自身を褒めてあげられたらどんなに素敵でしょうか。イヴとシャルロッテのように、独りであることを恐れずに己を磨き上げた人同士がパワーを与え合ったら、その絆は簡単には壊れないのですから。