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美容師と目線を合わせて挑む、TAC製品開発システムの未来|insight into Milbon

ROOTS | 2019.03.12

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皆さんは自分で使うシャンプーやトリートメントをどのように選んでいるだろうか?CMや広告などの企業から発信された情報だけではなく、ネットやSNSから流れてくる膨大な情報の中から懸命に吟味し、「自分に合う製品はどれなのか」と必死に探し求める人も多いのではないかと思う。

そんな時代の中で、美容室にこだわりぬき、あえてサロン専売品のみを展開し続け、美容に関心の高い女性に向けて製品を作るミルボン。多くの顧客の審美眼にかなう製品を発売し続けることができているのはなぜなのか 。その理由を知るべく、―商品開発部部長 田中雅也氏に話を聞いた。

ミルボンの核となる「TAC製品開発システム」とは

―多くの美容師、美容フリークに人気のミルボンの製品ですが、どのように製品を開発しているのでしょうか?

ミルボンでは7~8割、TAC製品開発システムという仕組みを使って、製品を世に送り出しています。TAC(タック)とは「Target Authority Customer」の略で、顧客代表制開発システムのことです。要は、お客様に支持されている美容師の代表の方と一緒に製品を創るということです。メーカー側が売りたいものを作るのではなく、市場で今必要とされているものを最も理解している美容師さんに開発にご協力いただき、製品を創っています。

―数多くいる美容師の中で、どういった基準で代表となる美容師を選んでいるのでしょうか?

お客様からとても人気がある、支持されているのはもちろんのこと、突出した技術やデザインをもって成功されている美容師の方にお願いしています。顧客のニーズに的確に応える技術があるからこそ、成功していると言えますので。

担当者が年間100軒ほどサロンを訪問する中で、その都度ヒアリング、調査をしてTAC製品開発に協力してくれる美容師さんを見つけることもあります。「シャンプーを作るからこの美容師さんにしよう」というモノ先行の考え方ではなく、ミルボンの各ブランドのターゲットとなる女性たちに、次の未来をみせるために必要な美容師さんは誰だろうという視点で考えるような形ですね。

―ただ人気の美容師を探すということではなく、ブランドのターゲットとなる女性の悩みや願望を解決してくれるような技術をもった美容師さんを探すということでしょうか?

そうです。サロンで実際にされている価値の高い技術をお持ちの美容師さんを探しています。私たちはその代表となる美容師さんの成功技術や成功ノウハウから学んで製品を創っているので、美容師さんの考え方や、「どういった哲学を持っているのか」というところもしっかり分析し、明確にしてから商品化を進めていくようにしています。

―考え方や哲学までも?

そうですね。モノに込められた価値をどう伝えていくかというところまで考えるのが、TAC製品開発システムの特徴ですから。技術だけでなく、製品を通したお客様とのコミュニケーションの取り方、市場の展開策までTACに携わった美容師さんから学ぶことが非常に多いです。

―TACに携わる美容師が決まった後、田中さんをはじめとする商品開発部のメンバーはどういった形で関わられているんですか?

私たちは企画だけでなく、TACに携わる美容師さんと開発者のいわば通訳的な役割を担います。TAC製品開発に携わる美容師さんが常に開発の現場にいることはできないので、美容師さんがいないところで製品の思いや考えを代弁すること、また反対に美容師さんが感覚で感じていることを言語化して開発者に伝えることを私たちが担っています。

ミルボンの製品開発で大事にしているのが「感性と科学の融合」という言葉です。美容師さんの持つ感覚を科学で分析して、水分量がどうなっているか、髪の表面はどうなっているかなど、定量的な分析をしてすり合わせ製品化していく。だから美容師さんとのすり合わせは一度だけではなく、何度も何度も行います。

―TACに携わる美容師が納得するまで、商品は完成しないんですか?

そうですね。開発プロジェクトの回数は2,3回で終わることもあれば、一年経っても完成しないこともあります。中には半年待ってから再スタートすることも・・・。しかし、長い期間を経て美容師さんも、開発者も私たちも、みんなで1つのチームになっているし、お客さまに喜んでいただける製品になるまでこだわり続けてほしいので妥協はありません。

美容師の考え方×製品力=TAC製品開発システムの成功法

―TAC製品開発システム(以下TAC)では、今までどのようなヒット製品が生まれてきたのでしょうか?

最近ですと、オルディーブというブランドのアディクシーというカラー剤がヒットしました。実ははじめ、このカラー剤は社内で反対にあったんです。

―社内で、ですか?

ミルボンでは長年、日本人に似合う色味をとても大切にしてきました。要は上質で、コンサバティブな女性たちが求めるブラウンベースのカラー剤です。けれど近年、鮮やかな色や透明感のある明るいヘアカラーを楽しむ人たちもどんどん市場に出てきていて。

ミルボンの今までの視点からすると、「そんなカラーを求めるのは一部の人でしょ?」という意見が多く、高彩度のカラー剤を創ることに反対も多かったんです。けれどその分野で成功している美容師さんからカラー剤の使い方、美容技術、顧客とのコミュニケーションなどを学び、そこには今までと違う「外国人のようになりたい」という顧客のニーズがあるんだとはっきり感じました。顧客ニーズと強く合致した製品だからこそ、ヒットに繋がるんだと確信しましたね。

―反対にヒットに繋がらなかった製品とは?

協力してくださった美容師さんも素晴らしい考え方で、多くのお客さまからのニーズもあったけれど、ヒットに繋がらなかった製品もあります。製品のパフォーマンスが悪いと、初めはよくても次第に売れなくなる。かつて、この経験をしたときに、美容師さんの考え方と製品力という掛け算がちゃんとできないと、なかなかヒットに繋がらないんだと痛感しました。

どんなに良い製品だったとしても、高い技術力がある人だけが使えるものでは意味がないんです。技術がないと使えない製品は、一部の美容師さんしか使いこなすことができない。その先にいるお客さまはもっと使えなくなる。それを、製品の力でどう標準化するかが私たちの役割なんです。

これからの多様な未来を見据えて進む、ミルボンの製品開発とは

―刻一刻と変わるトレンドを読みながら、美容師はもちろんのこと、一般の人にも喜ばれる製品を創り続ける。目まぐるしく変わる美容業界でミルボンはこれからどんな挑戦をしていくのでしょうか?

少し前なら美容師さんが喜ぶ製品を考えて作っていれば、美容師さんを通じてお客さまに価値を伝えることができていました。けれど今は、数ある情報の中から選ぶ時代。お客さまに選ばれ、かつプロである美容師さんに喜ばれる、この両輪がないといけない。

―難しい時代なんですね。

時代は本当に変わりました。メーカー側の私たちだけでなく、美容師さんの意識も変わってきたように思います。以前は自分のデザインをお客さまに受け入れてもらおうというスタンスの美容師さんが多かったのですが、今最近はトップデザイナーでも「お客さまのニーズに合った」という言葉が出るようになりましたね。私たちも美容師さんも、多様化するニーズをどう捉え、どう提案するかが肝になっていると思います。

TAC製品開発システムはあくまで「仕組み」で、時流に沿って進化しなければならなくてはいけないものなのです。お客さまに喜ばれるものを作る仕組みであって、型ではないので。TAC製品開発システムがミルボンの成長を牽引してきたのは間違いないのですが、そこがすべてではありません。

やっぱりTACに携わる美容師さんの頭の中をただ形にするんじゃなくて、本当にお客さまに喜ばれるものを創らなきゃいけない。時には美容師さんとぶつかることもあります。けれど、お客さまのリアルな声を常に聞き、どうすれば伝わるものが作れるのか、一緒に考えていかなければならないと考えています。


―それは美容師とミルボンの目指すものが、同じになってきたということなんですね。

はい。今までは美容師さんを通じてお客さまを見ていたけれど、美容師さんと共にお客さまを見て製品を開発しているという感覚です。TACに携わる美容師さんの知識や哲学、美容技術をもとに、そこからさらにお客さまに喜ばれるものを創ることは、メーカーの責任です。多くのお客さま、女性に、美容の価値を感じていただけるためにこれからも挑戦し続けていきます。


取材・執筆:三上由香利
写真:ミネシンゴ

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