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自社の利害よりもヘアデザイナーの課題を優先する。 営業という名の親身|insight into Milbon

ROOTS | 2019.06.05

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企業において営業とはどのような役割を果たすのか。もちろん自社製品を買ってもらうために他者へ働きかけるのだが、本来そのプロセスは全員が同じでなくていい。数学を解くとき、正解に辿り着くのであれば、そこまでの過程は人それぞれで問題ないはず。

その多様性を、自由な社風を自負するミルボンは探ってきた。そこで甲斐輝彦という人物。自分の強みを把握し、自分だけのやり方で営業実績を伸ばしてきた。それは「企画」を経験することで生まれた「課題解決提案型営業」。直接商品をアピールするのではなく、ヘアサロンの課題を聴き、解決するにはどうすればいいのかを美容師とともに考え、必要であればイベントやキャンペーンを立ち上げ、課題解決に必要な取組みとミルボン製品を紹介するというやり方だ。

美容室はいつだってアイディアを欲している。だからこそ企画を届けなければならないと甲斐氏は語る。

ヘアデザイナーの課題解決。カギは「企画力」

――甲斐さんは横浜営業所のフィールドマーケティングセールスのマネージャーという立場です。具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?

フィールドマーケティングセールスというのは、一般的に言うところの営業になります。美容業界の流通は、メーカーが直接美容室へ商品を届けるのではなく、代理店を通じて届けるのが基本ですので、代理店の方といっしょに美容室へ出向くことが多いですね。すでに商品を使っていただいているところには、直接伺う場合もありますが。

マネージャーという役職については、実業務は、プレーイングマネージャーなので、直接現場に行きながら、後輩の指導にもあたり、ヘルプが必要なときは手助けに入るという形です。

ミルボンの判断基準の一つに「それは、ヘアデザイナーにとって良いことか」という言葉があります。うちの商品や提案が、目先ではなく本当にヘアデザイナーの役に立っているのか、自分自身がヘアサロンのことを本当に想ってやっているのか、という考えです。だから僕は営業へ行っても、今は違うなと思ったら商品を紹介しないで帰ってくることもありますよ。

――営業をしないということですか?

もちろん手ぶらで帰ってくるわけではありません。美容室の課題をしっかり聴いてきます。例えば、ただお客様(エンドユーザー)が求めるヘアスタイルが簡単にできるいい商品ですよ、とは言えるんですよ。でも僕はそういうやり方はしません。
今は美容室も大変な時代で、お客様(エンドユーザー)の要望が多岐に渡っていて、美容師の方が求められるサービスや技術はより高く、悩みや要望も多くあるんですよ。
だからこそ、その要望をしっかり聴いて
だったらこのミルボン商品でその要望を叶えて行きませんか?と、そうすれば美容師さんも納得してその商品をつかっていただけるんです。


しかし、それだけでは利益という面では不安定。ここからが企画力の勝負とだと思ています。お客様へダメージケアキャンペーンを実施するなら「若いスタッフ様が多いので、しっかり大人の女性が満足できるような髪の知識を身につけましょう」とか、「その知識を説明して、お客様に信頼される環境を整えましょう。」とか、こちらが美一歩踏み込んだ姿勢が実は美容室から喜ばれ、信用へと繋がっていくのだと思います。僕はイベントの企画や、教育セミナーを企画開催することができる。それが強みだと思っています。

――普通の営業の人はイベントの企画やセミナーを開催することができない?

もちろんできるんですけど、普段はあまりやることがないので大変だと思います。僕は、営業をやる前はマーケティング部教育企画課というところに所属し、イベント、フォトコンテスト、各種セミナー、製品のマニュアル創りなどの企画をやっていました。だから、どうすれば美容師さんが求めるイベントや教育セミナーを開催できるかというノウハウを持っているんです。

でも、これってミルボンでは珍しいケースで、普通は営業をやってから企画課へ異動するパターンが多いんです。企画から営業へ異動したのはミルボンの歴史の中でも僕が初めてだったようですね。

今だからこそ企画を経験して良かったと思いますけど、入社してすぐに企画課へ配属されたときは、正直なところビックリ、というかショックでした……。

希望外の配属先で本気を出せないでいたが……

もう昔の話なので言いますが、企画はミルボンでやってみたかった仕事ではありませんでした。学生のころ、就職活動をしているときにミルボンのHPを見て、伸び伸び仕事ができていろんな人に出会える営業という仕事がしたくて入社を希望したんです。提出する書類にどの部署を希望するか丸をつける欄があり、僕は営業に丸をつけました。縁あって内定をいただき、研修も終了して、いざ配属という段階になったらマーケティング部教育企画課……。「なにそれ? どうすればいいの?」という感じでしたね。

――新入社員って「違う」と思ったらすぐに辞めてしまう傾向があると言われています。甲斐さんの中で会社を辞めるという選択はなかったのですか?

反骨心といいますか、何もしていないのに辞めるのは嫌だという気持ちのほうが大きかったですね。それにそもそもミルボンを選んだのは僕ですから。ただ、やる気が出ないんですよ。一応、やる気のある姿勢は見せるんですけど、楽しくないから本気が出ない。仕事を与えられても、クレームが来ない程度の7割、8割の力しか出せない、そんな感じでモヤモヤしてました。

――教育企画部にいるときは一度も本気になることはなかった。

それがですね、入社して3年目くらいのときに、仕事に対する分岐点になるようなことがありまして。

当時の上司が僕を見透かしていたんでしょうね。そのころ僕はフォトイベントの企画を任されていて、企画提出が2週間後に迫ったとき、何度も煮詰めて最終的に作成した企画書を提出したら、上司がパッと見ただけで「もう1回サロンへ行ってこい」と。最初は何を言われたのか理解できませんでした。ようやく飲み込めたとき、「もう時間がないのに無理だよ……」と正直思いました。上司の顔を見ると妥協する様子はなく、僕は渋々美容室回りへと出かけました。

美容師さんと話していてもテンションは低かったと思います。しかし、様々な美容室へ行き、いろんな美容師さんと話をしているうちに、美容室がやりたいフォトイベントと僕が考えるフォトイベントが全然違っていることに気づいたんです。僕が企画したものはこちら側の一方通行であって、相手のことを何も考えていなかった……。

ですが、美容師さんがやりたいフォトイベントを語ってくれているわけですから、やるべきことは確実に見えました。すると仕事が楽しいと思えるようになったんです。トータルで20軒くらい回ったと思います。美容師さんから聞いたことを企画書にまとめて再提出したら、見事に通りました。

そのフォトイベントは以前からあるもので、当時は180作品くらいの規模だったんですが、美容師さんに寄り添ったその企画によって700作品まで増えたんです。フォトイベントは成功しました。短い期間でたくさんの美容師さんに会いに行くという行為は、本気にならないとできない。この1回の経験によって、本気でやったら成果が出るんだということが分かりました。これが今でも僕のベースになっています。

企画と営業は根底でつながっている

――仕事の楽しさを知れた企画課からフィールドマーケティングセールスへ異動したのは、どんな経緯があったのでしょうか?

もともとミルボンの営業をやってみたくて入社したのに、そこをやらないのは正直嫌でしたし、企画をやる上で「現場を知らないのに」と言われるのも悔しい気持ちがありました。「純粋に企画をやって良いものを突き詰めたらいいんじゃないか」という考えもありましたが、自分の中では、この先ミルボンで活躍するためには今のままではいけないという想いが強かったです。

とはいっても、そう簡単に異動ってできないですよね。じゃあ、どうすれば企画でお世話になった方にも胸を張って異動できるんだろうと考えたときに、企画課の中で一番大きな仕事をやってやろうと。やりきって、結果を残せたら、そのときに異動願いを出そうと思ったんです。それで一番大きいイベントであるDA(ミルボン主催の大々的なヘアコンテスト)を「やらせてください」と上司にお願いしました。その願いが通って、イベントを担当。上々の成功を収めることができました。そしてコンテスト終了直後に「営業へ行ってみたいです」とお願いしました。

答えはNO。それならばとDAをもう1年担当して、再度「これからもミルボンで活躍したいので営業へ行かせてください」と伝えました。そのときはもう32歳になっていたので、年齢的にも僕にはチャレンジでしたし、ミルボンにとっても企画課からフィールドマーケティングセールスへ異動したケースはなかったのでチャレンジだったと思います。結局、最後は会社が了承してくれました。会社が決断してくれたのだから、ナンバー1の営業マンになってやろうと思いましたね。

もちろん不安がないと言えば嘘になります。営業をやったことがない30を超えた人間で、発注の仕方も商品の説明もしたことがない。だけど、やってやろうと思いました。そしてなぜか、こういうことを口にすると、みんなが助けてくれる。ミルボンってそういう会社なんですよね。

――実際に営業へ行った感想は?

7年間携わっていた企画課の人脈って、トップクラスのヘアデザイナーさんばかりなんですよ。そういう方たちといっしょに仕事をしてきたということは営業において非常に自信になりました。営業をしていくうちに、僕には企画力があり、人の話をきちんと聴くヒアリング力が備わっているということにも気づきました。これらは全部、企画課で企画を実現していく中で身についたものだったんです。このことが営業の現場で活かせるなんて思ってもみなかった。

美容室の課題をヒアリングして、企画に落とし込んで提案する。営業と企画は名前が違うだけで、僕にとってはいっしょだと感じています。違う道を歩いていたようで同じ道を歩いていました。このやり方がミルボンの営業においてすべてだとは思いませんが、自分が持つ強みを掛け合わせてこれからも仕事をしていきたいと思っています。

――今後、今の部署でやってみたいことはありますか?

マネージャーという立場ですので、やはり人材育成に力を入れたいです。その上で、別にどこでというのはないんですが、営業所長になったりして、より広いエリアで組織的に美容室へ貢献していけるようになりたいですね。まだまだフィールドパーソンの役割や強みを見出し始めたばかりです。営業活動にはさまざまなアプローチがあっていいと思いますし、なによりも美容師さんの課題解決のために知恵を絞って、美容師さんのベストパートナーになっていきたいと思います。

取材・執筆:滝沢ヤス英
写真:ミネシンゴ

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