
HOW TO
【覚えることは3つだけ!】ショートヘアのスタイリング実践講座
大好評のスタイリングのハウツー連載第2弾はショート編。「ショートは楽チン!」と思いきや、意外にもスタイリングに苦戦する女子が急増中!? 今回は、美容コンテスト「ミルボンDAインスパイア」のグランプリ受賞者に“かわいい”を作るスタイリングのノウハウを直撃します。抜け感たっぷりのスタイリング方法の秘密はなんと、髪の乾かし方にあり!?
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【3つのポイント】
①ベースの乾かし方(最重要!)
②アイロンでの動きの出し方
③ワックスの付け方

小松 マッシュショートスタイルなんだね! いつもどんなスタイリングしているの?
サミー まず、朝起きたらシャンプーをして、ガーってドライヤーで乾かします。そのあと、このストレートアイロンを使って毛先を巻いたりってかんじですかね。
小松 ずいぶんコンパクトなストレートアイロンだね!笑 ワックスは何を使ってる?
サミー このバームを使ってます。オイルと比べて束感が出るからいいのかなって。どちらかというとウエットな質感が好きで、今っぽい抜け感のあるスタイリングになりたいんですが、いつもうまくいかなくって。
小松 じゃあさっそくセリフスタイリングを見せてくれる?


サミー どうでしょうか? 私のスタイリング。
小松 んー、ごめん! 50点!
サミー え〜! どのへんがダメでした…?
小松 ショートのスタイリングで重要なのは、じつはドライヤーの乾かし方なんだ。サミーさんみたいなショートマッシュの場合は、アイロンで髪を動かす前に、土台をしっかりドライヤーで形づくることが大切。最初にドライヤーでボリュームのコントロールをした上で、アイロンやワックスで味付けしていくかんじがやりやすいんじゃないかと思うよ。
サミー なるほど。髪の乾かし方が重要だなんて思ってもみなかったです。ぜひ、教えてください!
小松 乾かし方でスタイリングはほぼ決まってくるからね。今回は、
「ベースの乾かし方」
「アイロンでの動きの出し方」
「ワックスの付け方」
この3つに分けて説明していくよ!
①ドライでスタイリングの8割は決まる!?技ありベースの乾かし方
小松 髪を乾かす前のアウトバストリートメントの付け方にもちょっとしたポイントがあるよ。ヘアカラーはしてるよね?
サミー ヘアカラーどころか、ブリーチしています。
小松 だったらなおさら! 一般的に髪のダメージは毛先の方が強く、根元のほうが少ない。だから、アウトバストリートメントはダメージの多い毛先を重点的につけることが重要だよ。タオルドライ後、髪が濡れた状態でコームを使いながらアウトバスをつけていこう。

サミー 了解しました!
小松 じゃ、乾かしていくよ。こめかみ付近は前にむかって少しひっぱりながら乾かす。そうすると不要なボリュームが抑えられるんだ。同じように浮かせたくないもみあげや耳まわりは手で押さえつけて、タイトめに乾かしていこう。

サミー なるほど。乾かす時点で部分的に髪を押さえつけたりすると、なんだかフォルムがきれいに見える!
小松 そうそう、乾かす段階からボリュームコントロールは始まっているんだ! 完全に髪が乾いた後にボリュームを抑えるのはむずかしいからドライ段階から形を作っておくことが大切。トップの髪は首を傾けながら左右に振って乾かそう。こうすると、スタイリング時に「やっぱり私こっちの方向に行きたいわ〜」と髪が言い出しても動かしやすくなるよ。
サミー なるほど(笑)。スタイリングのために髪を動かしやすくしておくのも大切なんですね。

小松 バックの髪はアゴにむかってななめに風を当てながら乾かすと、シルエットが引き締まって見えるよ。バックの髪が首まわりにフィットすると、今までストンとしていた髪も形よく見せられるんだ。前髪はわしゃっと掴んで、前にグッと持ってくるイメージで。完成形をイメージしながらドライで土台をつくっていくことが重要だよ。
②上段と下段に分けて考える! “こなれ感”を作るアイロンテク
小松 サミーさん、アイロンの当て方はとってもよかったよ!
サミー わあ、嬉しい。
小松 でも、全部を内巻きにしちゃうとマッシュ感が強まっちゃう。だから、ポイントでメリハリを出すためにアイロンを使ったほうが抜け感のあるスタリイングになる!
サミー メリハリってどうやってつけるんですか?
小松 大前提の考え方として、耳より上の「上段」と耳より下の「下段」の2段のセクションにわけてスタイリングをしていく。アイロンを当てるのは基本的に「上段」ね!

サミー なるほど。上下2段にわけて考えるんですね! 詳しく教えてください。
小松 まずは重要な後頭部の巻き方。セルフスタイリングでは、後頭部がないがしろになっちゃってたよね。じつはこの部分をいじるだけで後ろから見たときでもバランスよくなるんだ。つむじ付近の髪をひと束持てるかな? 自分の手で握れる量で大丈夫だよ。

サミー うーん、後ろって自分から見えないから自信ないなあ。
小松 焦らず、一旦アイロンをおいてからねらった毛を掴んでみて。
サミー はい!
小松 狙った毛を手で掴んだら、毛先をアイロンでパクッとかませる。根元まで挟まなくてOKだよ。そしたらグーっと内巻きにしてみよう。この部分を巻くと、「下段」のえりあし付近の毛と差が出て、違った質感を作れるよ。同じようにトップの毛はざくっと前に向かって巻いてあげればOK。左右もそれぞれざっくり内巻きしておこう。

サミー じゃあ、「上段」は頭のてっぺんから4方向に向かってやればいいんですね。
小松 そうそう! そして前髪。上下に分けてちょっとずつ曲げてあげるイメージで巻いていこう。あんまりアイロンを当てすぎると髪が曲がりすぎて不自然だから、動かしたい方向に毛を引っ張り、トントンとアイロンを当てるだけでOK。で、最後に塩こしょうを振る!
サミー え? 塩こしょう!?
小松 料理を作るときも最後に塩こしょうで味を加えたりするでしょ? 鏡を見て、「このへんの毛がハネてたらかわいいな〜」という部分の毛をアイロンでぴょんと巻いてあげる。
サミー んーっと、どのへんに塩こしょうをしたらいいとか目安ってあります?
小松 例えば、両目の横のラインの毛をちょこっとだけ外ハネさせると瞳が印象的になるよ。あとは、耳後ろの細い毛をぴょんっと外ハネ巻きさせると正面から見たときのポイントになる。あくまでもフォルムをバランスよくきれいに見せてくれるポイント付けだから主張しすぎない程度に塩こしょうを振ってあげて。

サミー 本当だ! ちょっと外ハネ巻きを入れるだけでなんかこなれて見えます!
小松 ここも前髪と同じようにしっかりアイロンは当てすぎず、パクパクとかませるくらいのイメージで。「トントントントン日野の2トン♪」みたいなリズムでやってもらえるといいかも(笑)
サミー あ、CMのやつだ! リズムよくできますね(笑)
③バームで作るウエットな質感スタイリング
小松 さて、次はバームをつけていくよ。寒くなってくるとバームも固まっているから、ツメでぐっと取ってあげると取りやすい。手の温度でだんだん溶けてくるから、指と指の間にまんべんなくなじませてあげて。

サミー あの、私のセルフスタイリングのときのバームの量って足りなかったですか…?
小松 髪の量が多いからわりと多めにつけてあげたほうがいいね。要所でつけてあげればベタベタしたかんじにはならないから、心配無用!
サミー わかりました! ツメでグッとですね。ネイルみたい!
小松 ゴテゴテネイルだね(笑)。では、もみあげと耳まわりからつけていくよ。さっき話したように、スタイリングは二段階構造で考える。耳より下の「下段」は髪を落ち着かせるために、タイトめにつけるよ。バッグの「下段」はハの字型におさえるようにつけてみて。顔まわりの生え際は、前の方向へおさえつけるようにつけよう。

サミー 結構タイトにするためにピターッとさせながらつけるんですね。
小松 そうそう。絵画に額縁があるように、スタイリングでもフレームをしっかりつくってあげることが重要なの。そしたら、トップの毛を上に引き出して手でわしゃわしゃーっと振ってあげるよう。髪を掴んで放射状に落とすイメージでね。
サミー あれ? こんなにバサバサ髪をふったのにぜんぜんつぶれてない!
小松 ドライでちゃんとベースを作っているし、さっきアイロンで後頭部を内巻きにしたからだよ。自然だし、抜け感もちゃんとあるでしょ?
サミー すごい! あ、前髪ってどうすればいいですか? ちょっと透け感っぽい感じに憧れてて。

小松 前髪は内側と外側の2段に分けた二段階構造で考えるとやりやすいよ。まずは、前髪の中まで手を入れてバームをなじませる。そのあと、外側の髪を整えるイメージでバームをつけよう。仕上げに内側の前髪にポイントをつけていくよ。目の上の透け感がほしい部分の髪を前にひっぱりながら、毛先をちねるように束を作って。こうすると束感が出るんだ。ほら、今っぽいでしょ!
サミー ここの束ってどれくらいの量がいいんでしょうか?
小松 そうだね。なるべく細めに束を作ってあげたほうがこなれて見えると思う! 最後に仕上げの味付けをしよう。さっき、アイロンで目元の毛をちょこっと巻いたところにもバームを少量つけてあげて。

サミー これは……塩こしょうのところですね!
小松 そう! ただし、つけすぎには注意して。さっきアイロンで形をつくってあげているから、あくまでもバームをプラスしてあげるかんじでね! あとは前髪の束なんだけど、中央はもう少し細くしてあげてもいいかも。目の横の両サイドは少し厚めに束を残して、鼻の延長線上にある前髪の中は薄く細めの束感を残す。すると、透け感にもメリハリが出るよ。
サミー なるほど〜。
小松 最後に、トップのふんわり感! せっかくドライで作ったふんわり感をつぶさないように頭のてっぺんでぎゅっと握って、ふわっと手を離すくらいがオススメ。
サミー ほんとだ! これだと自然に髪がふわっと広がりますね。

小松 では、もう一度自分でスタイリングしてみよう!



サミー 覚えるの大変でした…仕上がりはどうですかね?
小松 うん!すごい上達しました!ヘアスタイルにメリハリも有るし、スタイリングの手順も理論を理解するとスムーズになりますよね。よくできました!
サミー よかった〜!(泣)

小松 今回のスタイリング講座、どうでしたか?
サミー まさか髪の乾かし方が重要だなんて思っても見ませんでした。でも、今日ポイントをたくさん教えてもらったから明日からセルフスタイリングをもっともっと楽しめそうです。重要なのは、「メリハリ」ですよね!
小松 そうそう! その調子で頑張ってね!
ミニインタビュー
―ミルボン デザイナーズ アワード2018グラプリ受賞おめでとうございます! 数々のコンテストに挑戦されている小松さんですが、コンテストに挑戦し続ける理由を教えてください。
ありがとうございます。コンテストに挑戦することでデザインや感性、たくさんのものを吸収して学べると思っています。自分自身が成長できる場でもありますね。
―コンテストに向けてどのような練習をされましたか?
技術の練習はもちろんですが、僕は行きや帰りの電車などのちょっとしたスキマ時間にいろいろなデザインを見るようにしていて。日本だけではなく、海外のデザインやおしゃれな建物、写真の加工の雰囲気など自分が「かっこいいな」「これはかわいくないな」と思ったものをなんでもファイリングしてストックしています。そして、「なぜ素敵に見えたのか?」をとことん考える。こうしていくと、自分の感覚が洗練されていくんです。フォトのコンテストに挑戦し始めたのも自分の感性の“記録”という意味合いもあります。

—一般のお客さまにとって美容業界のコンテストは聞きなじみ薄いと思うのですが、コンテストとサロンワークのつながりってあるのでしょうか?
はい、コンテストとサロンワークはすごくつながっていると思います! コンテストは自分のデザインを爆発させて、爪痕を残さなければ審査員に選ばれない世界です。でも、サロンワークも同じように“お客さま”に選ばれ続けなければならない。そのために自分の感覚や技術を磨き、引き出しを増やす。さっき言ったような感性をストックすることもとても重要だと思っています。
―最後に、今度どんな美容師になっていきたいかを教えてください!
M SLASHのアイコンとなるような自分ブランディングをしていきたいと思っています。業界雑誌や一般雑誌などに出たり、サロンワークでもお客さまに支持され続ける美容師でいたいです。僕がいる美容室はセンター北にありますが、「都内に行く必要のないくらい、いい店見つけた!」と思ってもらえるような技術力やデザイン力を今後も磨いて行きたいです。もちろん、コンテストにも挑戦し続けますよ!
―小松さん、ありがとうございました!

小松将也 M.SLASH センター北店
1986年2月2日生まれ。松本理容美容専門学校卒業。新卒でM.SLASH入社後、今年勤続13年目。現在、同店のクリエイティブチームに所属しながらスタイリストとして活躍中。コンテスターとして数々のタイトルを獲得している。近年の主な受賞歴は2018年、「Tokyo Hairdressing Award」デザイナーズ賞・八木岡聡賞受賞。2018年、「ミルボンDAインスパイア」グランプリ受賞など多数。
写真:ミネシンゴ
取材・文:宮本香菜