SALON MODEL

「30代であることは大きな武器」大人系サロンモデルが見つけた自分に合った生き方|もしもサロンモデルが居なかったら

サロンモデル、通称サロモ。美容師と作品づくりをするパートナーとして必要不可欠な存在だ。多くのサロモが所属する『Coupe』には、経歴、職種、十人十色の人生観をもったサロモたちがいる。

今回紹介するのは、サロモとして数々の有名雑誌やヘアカタログへの掲載歴を持つAiさん。“クール”や“オトナ”といった言葉がキーワードになる雑誌の企画で、彼女を見たことがある人も多いかもしれない。落ち着いた表情と立ち居振る舞いに、銀座や新宿の街がよく似合う。実は彼女、30歳の主婦である。

作品撮りの凜とした表情とはうってかわって、ふだんはよく笑うAiさん。つねに笑顔をたやさず、みずからボケたりツッコんだりもする。Aiさんがいると、しぜんと場の雰囲気が明るくなる。整った顔立ちに、やわらかい笑顔のギャップが魅力的だ。


Aiさんは北海道士別市で生まれ育ち、高校卒業を機に札幌へ移り、就職。しかしその頃は、夢や目標はなく、じぶんが本当に何をやりたいのか、わからなかった。「つまらない人生を過ごしていた」とAiさんは当時を振り返る。

あるきっかけで、フリーのモデル・タレントとしてゆるやかに活動を開始。すると22歳の頃、『札幌美少女図鑑』創刊号のモデルに抜擢される。

『美少女図鑑』は「街に美少女を増やそう」というコンセプトのもとにつくられたフリーペーパーだ。2002年に新潟市で『新潟美少女図鑑』が発行されたのを皮切りに、全国の都市に広がっていった。事務所に所属しない女の子をモデルに起用するが、ブレイクのきっかけになることも少なくない。『沖縄美少女図鑑』でモデルをつとめた二階堂ふみや黒島結菜、鳥取の山本舞香、岡山の桜井日奈子、そして本メディアにも登場していただいた新潟の馬場ふみかなど、数々のモデル・女優を輩出した。

(Find Your Beauty MAGAZINE×ナタリー 馬場ふみか)
https://www.milbon.co.jp/fyb-magazine/interview/article-15/

『札幌美少女図鑑』創刊号のモデルだったAiさんの同期たちも、CMや雑誌でどんどん活躍していった。そうした姿を見ているうち、Aiさんのこころに火が点いた。

「雑誌に出たい」

小さい頃から憧れてきた想いが、次第に形となり重みを持って、リアルな目標へと変わった。

「自分のちからが知りたかった。本気になってどこまでできるのか。もっとがんばれるんじゃないかと思ったんです」

そう決意してみたものの、すでにその時点で23歳。始めるにはかなり遅いとわかっていた。だから、今すぐ行動しなくては――。

翌月、Aiさんは東京にいた。仕事をやめ、引っ越して、東京で暮らし始めた。

「でもやっぱり甘くはなくて、最初はぜんぜん仕事がありませんでした。飲食店でアルバイトをしながら、一年かけていろんなところに履歴書を送って、事務所を探しました」

やがて事務所が決まり、すこしずつ仕事をもらえるようになった。現在はふたたびフリーに戻り、サロモを中心に活動している。
依頼はInstagram経由で受けることも多い。サロモを志望しているひとは、いちど彼女のInstagramを見てほしい。
https://www.instagram.com/aaaiii.59/

もちろんプライベートな写真もあるが、これだけで立派なヘアカタログが一冊つくれそうなほど、多くの作品がポストされている。作品のなかで、プライベート時のように歯を見せて笑うことがすくないのは、やはり“大人っぽく”というイメージで依頼されることが多いからだという。

「でも大人に見られすぎて、若づくりしたくなっちゃって、さいきん前髪を切りました。あまりにも“大人っぽい”がしっくりきすぎている感じがしたんです。20代前半までは年上に見られると嬉しかったけど、それ以降も年上に見られるのは、女性として微妙な気持ちもあって。……とはいえ、結局また伸ばしてるんですけどね。ちょっとした悪あがきでした(笑)」

少女のように微笑みながら話すさまには、作品との大きなギャップがある。エレガンスとイノセンスが同居していることがAiさんの大きな魅力のひとつだ。

「やりたい髪型よりも、じぶんにもっとも似合う髪型や、美容師さんにいちばん求められる髪型でいたいと思うようになりました。モデルってそういうことですよね。見た人に“いいな”と思ってもらい、その美容室に行ってもらう。それが仕事だと思うので。わたしの場合、ショートで前髪長め。それが美容師さんにとっていちばん使いやすい髪型みたいです」

大切なのは、じぶんに似合うスタイルを見つけること。Aiさんからは、等身大であることのすばらしさが伝わってくる。そして、当たり前のことだが、等身大とは、努力を怠ることとはまったく違う。じぶんと向き合い、自身との長く深い対話を続けなければ、本当のじぶんを見つけ出すことはできない。それは厳しいことだ。サロモの場合、様々な髪型を試すといった基本的なことはもちろん、じぶんをつねに外側から見る視点も必要だろう。いくつもの積み重ねと試行錯誤を経た上に、Aiさんの等身大はある。

そんなAiさんだから、仕事のオファーはかなり多い。同じ雑誌の企画に、複数のサロンから依頼がくることも珍しくない。多いときには、同じヘアカタログの企画で10件以上のサロンからオファーがあった。そういうとき、なにを基準にサロンを選んでいるのだろうか? Aiさんは、「最初に依頼してくれたサロンです」と即答する。

「相手も忙しいですし、待たせるのも悪いから」

こうした相手への気遣いが、彼女の“大人”らしい雰囲気へとつながっている。なぜなら、人の印象は、決して外見的な特徴だけで規定されるわけではないからだ。Aiさんの場合、内側から滲み出てくる美しさが、彼女をよりエレガントに見せているのだろう。

ところで、意外に思えるかもしれないが、AiさんはいちどCoupeに落ちているという。2014年頃、まだ創業したてのCoupeに書類を送ってみたが、返事がなかった。その後Coupeは急成長し、ほかのモデルのあいだでも話題になるほどに。数年間の経験を積んだAiさんは、思い切って再チャレンジしてみることにした。

結果は即合格。Coupeに登録してから、依頼件数は激増した。多いときには、月に30件近い撮影をこなすこともある。かなり忙しいだろうが、「そんなことはない」とAiさんはいう。

「主婦ということもあり、時間にあまりしばられていないので、急遽入った仕事にも対応できる。良い意味で使いやすいと思います」

主婦であること、そして30代であることは、Aiさんにとって大きな武器だ。

「若い時は周りからの見え方とじぶんとが合っていなかったんです。でもやっと年齢が追いついてきてくれたので、これからが勝負。それに、オトナ系のモデルはあまり多くないんです。ほかに仕事があったり、子育てが忙しかったりして、撮影を続けることが難しいから。でも、わたしは大丈夫。理解ある夫も応援してくれているし」

考えてみれば、“主婦”とはふしぎな言葉だ。その肩書きがあるだけで、ほぼ自動的にある種の女性をイメージしてしまう。そのイメージには良いところもあるだろうが、問題点もあるだろう。

Aiさんは、そうしたイメージから解放されている。何かに従うのではなく、じぶんで人生をコントロールしている。

それは偶然の産物ではなく、強い意志の積み重ねによるものだ。同世代の女性だけでなく、これから30代をむかえるすべての女性にとって、Aiさんはひとつのロールモデルになるかもしれない。

Aiさんに、あたらしい女性の姿を見た。

hair:近藤留実(Respia Green)

この記事を読んで、サロンモデルにチャレンジしたいと思ったら、Coupeへ応募してほしい。

Coupeモデル応募

写真:ミネシンゴ
取材・執筆 山田宗太朗

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