SALON MODEL

人生を変えてくれた美容師との出会い。傷ついた少女が自信を取り戻すまで|もしもサロンモデルが居なかったら

Coupe presents
連載

サロンモデル、通称サロモ。美容師と作品づくりをするパートナーとして必要不可欠な存在だ。多くのサロモが所属する『Coupe』には、経歴、職種、十人十色の人生観をもったサロモたちがいる。

今回紹介するのは、21歳の大学2年生、Shownさん。とても落ち着いていて品のある女性だ。

透き通るような色白の肌と澄んだ瞳。長い首にはショートカットがよく似合う。北欧系の顔立ちだが、出身は岡山県。現在は中央大学の法学部で学びながら、女の子向けメディアの編集インターンをやりつつ、サロモとして活動している。

元々Shownさんは、サロモどころか、髪に興味がなかったという。

「美容院に行ったことがほとんどなくて、1000円カットで済ませてました。髪をきれいにすれば垢抜けるっていう概念もなかったんです。だからずっと伸ばしっぱなしでした」

ショートカットにしたのは高校を卒業してから。

「浪人が決まって、すごくみじめな気持ちでした。絶対に1年で合格したくて、気合を入れるためにバッサリ切りました。“頭を丸める”という意識でした」

頭を丸める――。この言葉とサロモとは、ちょっと結びつかない気がする。しかし、頭を丸めた約3ヶ月後に、Shownさんにとって決定的な出会いが訪れた。

「岡山のスーパーで買い物をしてたとき、美容師さんに声をかけられたんです。ショートが似合ってるから写真を撮りたいって。そんなことを言われたのは初めてでした」

おしゃれは好きだけど、髪には興味がない。そんなShownさんが、初めてサロンでカットをして、カラーをした。それが、すごく楽しかった。

「施術後、鏡を見たらまったく違うじぶんがいました。こんなに変わるんだ!って本当に驚きました。美容師さんは芸術家なんだって」

初めてのカラーは、周囲からの評判もよかった。それがきっかけで、サロンに通うようになった。2ヶ月に1度くらいのペースで、少しずつサロモをやるようになった。自分が求められている、そう感じられることも嬉しかった。

「もっとこういうことができたらなって、ふんわり思うようになりました。でも自信がなかったんです」

やがて気合の宣言通り、1年で大学に合格し、上京した。『Coupe』を知ったのは大学のミスコンがきっかけだった。


「ミス中央のグランプリに選ばれたMiyukiさんという方がすごくきれいだったんです。素敵だなあと思ってTwitterを見て、そこで『Coupe』の存在を知りました。Miyukiさんは『Coupe』のモデルだったんです。サロモの事務所というものがあることも、そのとき初めて知りました」

すぐに『Coupe』に応募してみたものの、通らなかったという。

「たぶん書類審査で落とされちゃったんですよね。でも、2ヶ月後くらいにメールがきたんです。横浜の森さんという美容師さんが、この子で撮影したいって言ってくださったんです。サロモの卵を変身させるという企画でした」

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これがきっかけで、本格的にサロモの活動をはじめることになった。大変身企画のなかでも触れられている通り、“ふわふわかわいい”は誰にでもできるかもしれないが、かっこよさを出すことは難しい。だから、クールな印象を与えることができるShownさんへのオファーは多い。大学やインターンに通いながら、多いときには月に10本程度の撮影をこなす。にもかかわらず、Shownさんは「自信がない」という。

「なんでわたし、この程度で呼ばれてるんだろう?って思うことがあります。わたしなんかが表に出て偉そうな口を叩いていいのか……って。今回の撮影でも、“もっとああすればよかった”という小さな後悔が次から次へと浮かんできます」

それは向上心なのではないか、とも思うが、謙虚すぎるくらい謙虚なところがShownさんの魅力なのかもしれない。

「これまで注目されることがなかったので、慣れてないんです。モデルのお仕事を始めてようやく自分をすこしだけ客観的に見られるようになりました。たとえば“首が長い”ということも、むかしはまったく自覚がありませんでした。そんなこと一切思ったことがなかった。むしろコンプレックスだらけで、むやみに厚化粧をしたり、似合わない大きなカラコンを入れたりしていました。本当に自信がないんです」

やや意外な気がするが、なぜそれほど自信がないのだろう? Shownさんは、小学生の頃に受けたいじめの経験に原因があるのではないかと分析する。

「当時仲良かった友だちが、クラスのリーダー的な子にいじめられていたんです。わたしは、“なんでそんなことするの?”ってその子にたてついてしまった。そうしたら次の日からわたしもみんなに無視されるようになって……。容姿のことを悪く言われるようにもなりました。思えば、コンプレックスはその頃に芽生えたのかも……」

その経験がいまでも尾を引いている。だからむかしは髪を伸ばしっぱなしにして、じぶんを隠そうとしていたのかもしれない。

「でも、19歳の春に美容師さんと出会って、じぶんの長所を教えてもらえた。隠さなくていい、ありのままのじぶんでいていい、そう思えるようになりました。美容師さんはわたしの人生を変えてくれたと思います」

いじめは悲しい過去だが、自信のなさを引きずりつつ成長したからこそ、謙虚な大人になれたのかもしれない。

「それまで知らなかったじぶんの長所を見つけてくれて、引き出してくれた。そのおかげで少しずつ自信を持てるようになってきた。だから、じぶんもそういうことがしたくて、美容関係の仕事をしたいと思うようになりました」

将来のことはまだわからない。でも、じぶんと同じような気持ちのひとのために役に立ちたい。だからいま、求められることは全力でやる。サロモのほかに、編集インターンと法学部での勉強。選挙啓発活動サークルに所属して選挙や投票の意味を仲間と考え、朝8時からは研究室で国家公務員I種のための勉強もしている。これらの活動は別々のようでいて、実はすべてつながっている。

「まなぶことが好きだし、思考の訓練はどの仕事にも役立つはずだと思っています」

卑屈ではなく、謙虚であること。Shownさんの言葉や表情のふしぶしから、人生に対する彼女のスタンスが伝わってくる。

「まわりに恵まれて、いまとても幸せ」とShownさんはうれしそうにいう。彼女が岡山で美容師に声をかけられ、東京で『Coupe』と出会えたことは幸運だったかもしれない。しかし幸運は、その資格があるひとにしか訪れないものだ。

最後に、Shownさんが最近感銘を受けた言葉について。それはココ・シャネルの言葉で、「奇抜さはドレスではなく、女性のなかになくてはならない」というもの。ドレスに着られてしまうのではなく、それは女性の個性の背景であるべきという考え方だ。

「ドレス」を「髪」と言い換えてみる。するとこの言葉が、そっくりそのまま現在のShownさんを表していることに気づく。

hair:久保敏之(ブロッサム池袋店)photo:中村彰男

この記事を読んで、サロンモデルにチャレンジしたいと思ったら、Coupeへ応募してほしい。

Coupeモデル応募

写真:ミネシンゴ
取材・執筆 山田宗太朗

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