ESSAY

“ハヤカワ五味”を形作る美容師

ESSAY | 2018.10.16

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“gift”



この言葉には、二つの意味があることをご存じでしょうか。


“gift”といえば、日本語でも”ギフト”と使われている通り”贈り物”という意味があります。その一方で、天からの贈り物というニュアンスが転じて”天性の才能”という意味で使われる場合もあります。「gift=生まれ持った才能」という意味を知った中学生の私は、その表現に目を輝かせていた記憶があります。

では、私たちにとってのgiftって例えば、どんなものがあるんでしょうか。
頭の回転が早い…とか、物事を集中して考えるのが得意だ…とかは、もしかしたら後天的なものではなく先天的なgiftかもしれませんね。そして、私が一番”gift”じゃないかなあと感じてしまうのは、肌や髪の毛といったような持ち合わせた身体です。

小学生や中学生の頃は、まだお互いのこともよくわからないし、今よりも容姿で判断されていたんじゃないかと感じます。しかも、当時はメイクもできなければ、自分に似合う服ではなく制服を着なければならない訳で、どうしても自分が生まれ持って持ち合わせた身体というものに向き合わなければならなかったように感じます。そのような時に、クラスの髪の毛が細くてサラサラで肌がしっとりと白い女の子に”gift”を見たのかもしれません、とっても羨ましかったなあ。

私は生まれつき、髪の毛が硬く、量も多いし癖も強く、いろいろ頑張ってはみたもののどうにもならなかったので強いコンプレックスを感じていました。結局、世の中は持ち合わせた素材でしか評価されないのか、と卑屈に思っていたのは、今のハヤカワ五味を知る人からしたら驚きかもしれません。

硬くてダメダメな髪の毛ならもういっそ派手にしよう!と思い、ブリーチをかけまくって赤のインナーカラーを入れていたような時期も実はありました。

当時の髪の毛、バッサバサ…

そんな中、たまたまtwitter上で出会った美容師さんが、その後のハヤカワ五味を変えて行くのでした。

その美容師さんの名前は田中一輝(たなかかずき)。
出会った当時は24歳とかで、静かだけど実はめちゃくちゃアツイ心を持った美容師さんでした。

正直、当時の私は髪の毛のことは諦めていたので、あまりどの美容室に通うかもこだわってはいませんでした。ですが田中さんに「難易度高いほど燃えます!任せてください!!!」と言われていたのもあり、私が美容室で流れる気まづい空気が苦手なのもあり笑、長時間一緒にいても心地いい、そして頼りになる田中さんにお任せしてみようと思いました。

田中さんが美容師をはじめた頃から特にこだわっているのは、髪質改善と縮毛強制。小手先に技術でごまかすのではなく、時間をしっかりかけて長く愛せる髪の毛に育て上げることを大事にしているそうです。

そんな田中さんも縮毛を専門的にやり始める前は、ブリーチや強めのカラー提案が中心。色味は綺麗でも傷み続けるお客様の髪を見て「何をやっているんだ・・・」と。そんな時、くせ毛が悩みの女性に縮毛矯正をする機会があったそうです。施術後、鏡越しに見るまっすぐになった自分の髪に目を輝かせる女性。 ほんとうに嬉しそうな顔を見て、「これだ!」と感じたそうです。それ以降、髪にコンプレックスを抱えている女性の悩みを解決したい!自分に自信が持ててもっとキレイになりたい!と思ってもらえるように、お客様に寄り添っていると教えてくれました。

よくある美容室とは少し違う内装の美容室sary。壁にかかる大きな白いキャンバスのようなものは実はスピーカーで、細かいところにも田中さんのこだわりを感じます。

中高時代の思春期真っ只中、「めちゃくちゃプライベートに踏み込んでくる美容師さん」に会ってしまった、とか…美容室に関して少し苦い思い出がある人もいるのではないでしょうか。そんな経験をすると、美容室に行くハードルが高くなってしまったり、なんとか穏便に済ませないものかと考えてしまうかもしれません。でも、日本には色んな美容室があって信頼できる美容師さんもいます。あまり絶望せず少しの勇気をもって踏み込んでみて下さい。きっと良い出会いが待っています。

自分の髪の毛が真っ直ぐ素直になっていくにつれて、私は自分の容姿に対して悩む時間がじわじわと減っていき、結果として、様々な仕事に真っ直ぐ取り組んでいくことができるようになりました。その後もお互い刺激をもらいつつ、田中さんは自分の美容室を表参道に開業、私はラフォーレ原宿に常設店舗を構えました。

saryオープン当時の写真。サラサラになっている。

田中さんに出会うまでは、私の髪の毛は恵まれていないと悲観的に感じていたし、メディア取材などでも傷んだ髪を写真に撮られるのがすごく嫌で、あがってきた写真を見る度に落ち込んでいました。パサパサの髪は可愛い服には似合わないからと、自分が本当に好きな服を避けてカジュアルで楽そうな格好ばかり選んでました。結果的にメイクも手抜きになっていく自分の姿から目をそらして仕事ばかりに打ち込んでいた記憶があります。

その頃は髪もメイクも服装も、これで大丈夫かな…変じゃないかな…と自信がなく、何をしている時でも心のどこかに容姿への心配がつきまとっていたような気がします。それが今のような自信を持てる髪になってからというものは、その心配もどこかに消えました。心配が消えた分だけ心に余裕ができ、もっと他の必要なことに使えているように思います。自分に自信を持つというと少し自意識過剰な印象もありますが、実はそうではなく自信を持つことで自分への心配がなくなり、自分を尊重でき、そこから他人を尊重する余裕が生まれるように感じます。そして他人を尊重することが、さらに自分を尊重することに戻ってきて、ぐるぐると美しい女性になるための良いループが回り始めました。

最後になりますが、私は田中さんから多くの刺激や、この素直な髪の毛など、様々なgiftをもらいました。美容師さんといいつつも、美容師さんの枠を超えて頑張っている同志として刺激をいただいています。美容室saryと田中さんにはこの先も長くお世話になると思います。これからも何度も通って、その中で少しずつ恩返しができらたらいいな。

取材協力:美容室 sary
住所非公開 http://sa-ry.com/
オーナー 田中一輝

美容室をテーマにした動画
「鋏と笑顔」はこちらから

執筆:ハヤカワ五味

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