INTERVIEW

サロンモデルドキュメンタリー
「もし、サロモがいなかったら」ー vol.2

INTERVIEW | 2017.09.26

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Coupe presents
連載

サロンモデル、通称サロモ。美容師と作品づくりをするパートナーとして、必要不可欠な存在だ。多くのサロモが所属する『Coupe』には、経歴、職種、十人十色の人生観をもったサロモたちがいる。

「もし、サロモがいなかったら」ー vol.1 はこちら

「変わらない私のままで、新しい世界に出会える」

今回紹介するのは、キャンパスライフとサロモを両立しているARIさん。現在、大学2年生だ。
高校3年生の冬に『Coupe』のオーディションを受けた。社長が抱いた第一印象は「自分らしさを持った、こびない女の子」。そのキャラクターで突き進んでいく、伸びしろを感じさせたという。その予感どおり、ARIさんは多くのサロモが憧れるサロンに次々と呼ばれ、この9月には『ar』の誌面を飾るなど、目を見張るほどの活躍を続けている。

そんな彼女がサロモに興味を持ったのは、高校3年生の秋のこと。
「大学受験が終わって、何もすることがなかったとき、しょっちゅう一人で表参道に遊びに来ていたんです。そこで、あるサロンの方に声をかけてもらったのがきっかけ。とってもかっこいい人だったから、髪をセットしてもらうくらいならいいかなって、軽い気持ちでした」

長い髪をばさりとかきあげながら、ARIさんは笑う。クールなまなざしに、ちらりとのぞく八重歯のギャップが、とても魅力的だ。地元は葛飾。どこか外国の血を感じさせる顔立ちなのに、さばさばとした気っぷの良さを感じるのは、下町育ちだからだろうか。

初めて撮影をしたときは、まだヘアアレンジにあまり興味がなかったから、長い髪をきちんと巻いて、スタイリングをしてもらうこと自体が新鮮だった。できあがった写真も、想像よりずっと素敵に撮れている。それまでは撮られることが苦手で、幼いころの写真はいつもそっぽを向いていたという彼女。サロンでも、真正面からレンズを見るのは恥ずかしかった。

「でも完成した作品を見たとき、初めて自分の写真をSNSに載せて、みんなに見てもらいたいって思ったんです。いままで自分の顔を載せたことはなかったけど……いつもと違う自分になれたのが、うれしかったから」
そうしてSNSに投稿した写真には、友達からたくさんの反響があった。写真が苦手な自分が変われるかもしれない。そして、もっといろんな自分を見てみたい。サロモという仕事に、きらりと光る可能性を感じた。

ARIさんはそれから数ヶ月間、1日2本のペースで撮影をこなした。撮影に出かけては、帰り道にまた声をかけられて、次のサロンが決まる。それだけ数を重ねても、イヤな思いをしたことは一度もない。撮影はいつも刺激的で、面白かった。ばっちり髪を巻いてフルメイクをして撮るサロンもあれば、ナチュラルメイクでヘアを軽くさわるだけの美容師さんもいる。さまざまなやり方と、その数だけ新しい自分に出会えることが、とにかく楽しかった。

「最初はバイト感覚だったけど、もっときちんとやってみたいと思って、Coupeに応募したんです。スケジュール管理がめっちゃ下手だったから、きちんとした依頼ページがあるのも助かるし。なんだか、それまで毎日適当に暮らしていたのに急に忙しくなったから、自分だけじゃ頭が追いつかなかったんですよね」

そのころから、撮影の仕込みでは、スタイリングの様子を見て勉強をするようになった。髪の巻き方、散らし方、上手なスタイリング剤の使い方。さまざまな情報を吸収し、自分をアップデートしてまた、次の撮影に臨んだ。

プライベートでは、身体を動かすのが好き。近場なら、スケートボードで移動することもある。高校時代はダンス部で、ひたすら練習に明け暮れていた。写真を撮られるのは苦手なのに、人前でダンスをするのは平気だったの? と尋ねてみる。

「うーん……ダンスをしているときの私は、いつもと違う私なんです。普段はあんまり目立ちたくないし、暗くてあまりしゃべらないけど(笑)、ステージではセンターに立ちたいし『私を見て!』っていうかんじ」

大学でもダンスをやろうと思っていたけれど、ほどよいコミュニティが見つからず、断念。でも、自分よりも大人とたくさんふれあえるサロモをするほうが、いまは楽しいのだという。
自分のなかにあるスイッチを入れて、人前に立ち、表現をするのは、ダンスとサロモの共通点かもしれない。ダンスがなくなってぽっかりと空いた隙間に、サロモが気持ちよくはまったのだろう。

サロモを始めたきっかけも、楽しいと感じる部分も、“いつもと違う私”との出会いだった。一方で彼女が興味深いのは、決して“自分らしさ”を変えないこと。涼しいまなざしが特徴的なARIさんは、ナチュラルクールな雰囲気を求められる機会が多い。それは彼女のありのままに、最も近いテイストだ。だから撮影をするときも、必要以上に“つくらない”ことを心がけているのだという。

「私は表情もあまり動かせないし、いろんなポーズをするのも得意じゃありません。自然なかんじで、素の表情を撮ってもらうことが多い。でも、オファーをくれる方々は、そういう私の写真を見て選んでくれたんだから、いつもそんな私のままでいられればと思うんです」

もっと思いきり笑えたり、さまざまに雰囲気を変えられたりすれば、仕事の幅は広がるかもしれない。だけど、そのために自分をつくろうとは思わない。自然体の自分を使ってくれる人がいたら、そのほうが何倍もうれしい。

求められるままに変わっていくことは、ある意味でたやすい。努力をする方向がわかりやすいし、手応えも感じられるだろう。でもARIさんは、自分らしさを際立たせていく道を選んだ。揺るがない持ち味を手に入れることができれば、確かに需要はある。明るい笑顔は練習できるかもしれないけれど、ニュアンスは本物じゃないと出てこない。ARIさんのブルージーな空気は、リアルだからこそ映える。

美容室は、ありのままの自分をまず受け入れて、変身させてくれる場所だ。同世代に自分を出すのが恥ずかしいというARIさんも、サロンでは素になれる。

「美容師さんは、私はこういうかんじにもなれるんだ、って再発見をさせてくれる。私らしさを際立たせながら、いつも新しい世界を教えてくれるんです」

できあがった作品をSNSに載せるとき、彼女はすでに次の撮影のことを考えている。この写真は、どんな仕事を運んできてくれるだろうか。どんなサロンの、どんな美容師と出会わせてくれるだろう。一つひとつの写真が結果になって、どんどん連なっていくのが、たまらない。
大学を卒業して、なにか別の職業に就いても、サロモは続けたいと言う。こんなに自分を表現できる場所。そして素のままでいられる場所は、きっとなかなか見つからないから。

hair:石井励斉(PLACE IN THE SUN)
photo:岩田直子

うまく話せないし、自分を出すのは苦手。そんなふうに言うけれど、写真のなかの彼女はじつに雄弁だ。美容師がスタイリングに込めた想いを、一身に背負って。変わらない自分と、それでいて新しい自分を、いつも表現している。

ARI サロンモデル

1997年7月16日生まれ。東京都出身の大学2年生。高校3年次からサロンモデルとして活動し、ナチュラル系のサロンで人気のモデルとなる。現在は学生とサロンモデルを両立し、月10~20件ほどの撮影をこなしている。
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菅原さくら ライター

1987年の早生まれ。ライター、編集、雑誌『走るひと』副編集長など。人となりに焦点を当てたインタビューや対談が得意。雑誌やWebメディア、広告・採用、コピー、パンフレットなどさまざまなものを書きます。

CREDITS
写真:ミネシンゴ
取材・執筆 菅原さくら
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