
マレーシアエリア・グランプリ:
CERES HAIR STUDIO
JUUN LAI
/ MASTER DESIGNER / 1986.12.5 Born
MALAYSIA Area
マレーシアのエリア・グランプリを制したのはCERES HAIR STUDIO(セレス ヘアスタジオ)のJUUN LAIさん。初出場だった前回の雪辱を果たし、日本行きのチケットを手にした。敗れた原因をしっかり分析し、次に活かして結果を出すところがレベルの高さを感じさせる。社会問題からヘアデザインを考えるという独自の発想は、日本においてはあまりないアイディア。そんなJUUNさんにエリア・グランプリのこと、普段のサロンワーク、グランプリファイナルへの意気込みを聞いた。
Ⅰ.初めてのDA参加と2回目の違い
--JUUNさんのDA参加は今回で何回目になるんですか?
2回目になります。
--最初に参加したときは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
参加する前に日本で行われたDAをインターネットで見たことがありました。他のコンテストは髪にしかフォーカスしていないのに対して、DAはメイク、服装など全体をチェックされます。デザイナーの技術だけでなく、美の総合力が問われる感じがしました。マレーシアではそういうコンテストはありません。
--美の総合力というところがJUUNさんには魅力的に映ったんですか?
以前からファッションショーのようなイベントに出てみたいと思っていたので、僕にとってDAは打ってつけでした。
--初めてチャンレジしたとき、結果はどうでしたか?
正式な順位は分かりませんが、ダメでした(笑)。
--1回目はダメで、2回目はエリア・グランプリを獲得。1回目の反省から2回目は、どのようなことを改善したんですか?
1回目はDAの趣旨をきちんと理解していなかったと思います。トータル的なところをチェックされることに対して、自分の認識が甘かった。2回目は全体のイメージをしっかりと考えて、髪、服装、メイクまで全部に気を配りました。

--DAにチャレンジして、ご自身のサロンワークがレベルアップしたと感じていますか?
感じています。今のサロンワークは「普段はどんな服装ですか」「スカートですか、ズボンですか」「どんな格好が好きですか」とお客さまに聞いてから、ヘアデザインを決めるようにしています。仮に、お客さまが普段はズボンをはいていて、イベントになるとスカートをはきますと答えた場合は、「もしこの髪型だったら、こうやって巻いたり、結んだりしたら、雰囲気は変わりますよ」とオススメしています。
DAから学んだことは、お客さま目線で見て、そこからデザインを提案することです。他のヘアサロンはスタイリストの視点から「あなたはこんなスタイルのほうがいいですよ」と一方的に言う場合が多いです。以前は僕もそうでしたが、今は違います。
--マレーシアのお客さまは、どのようなニーズを持っているのでしょうか?
キレイになりたい、でも手入れは簡単なほうがいい、と思っている人が多いかもしれません。矛盾していますが(笑)。

--それは日本でも同じです(笑)。
なので、お客さまが求めるキレイのレベルを少しだけ抑えて、家でも簡単に手入れできるスタイルを作ります。だいたいのお客さまは巻くのが好きなので、簡単な巻き方を教えて、こうしたらもっとキレイになれますよと伝えています。
Ⅱ.エリア大会を振り返って
--DAはリアリティブというテーマで行っています。このリアリティブをJUUNさんはどのように捉えていますか?
DAはチャレンジングなコンテストだと思います。AパネルとBパネルを合わせてCの新しい作品を作る。だいたいのコンテストはAの作品を作って写真を送れば終わりです。DAはそうではありません。だから難しくもあります。
--リアリティブの考え方はJUUNさんのサロンワークに繋がっていますか?
ケースバイケースです。お客さまによっては、リアリティブはオシャレすぎると考える方もいます。マレーシアでは万人にウケるスタイルではないと思っています。日本ではこういう問題はないですか?
--日本でも同じです。お客さまによってキャパシティが違って、受け入れる範囲が広いお客さまには大丈夫ですが、そうじゃないお客さまには難しい。相手を見ながらリアリティブのバランスを取っているのが日本では多いですね。
そうなんですね。同じですね。
--はい。それではA、B、Cの解説をお願いします。
Aは実際のファッションショーを参考にしました。色と全体的な雰囲気のコントラストがポイントです。今のトレンドであるネオンカラーを入れています。

--Bパネルはいかがでしょうか?
Bは自分が本当に作りたいと思ったスタイルで、社会問題でもあるんです。1回目に出たとき、僕はスピーカーが顔にいっぱいついている作品を作りました。それはその人が子供のときに子供らしい生活ができなかったことを表現したのです。今回は、モデルさんがガンを患っていて、そういった人たちでもキレイを求めている方はたくさんいます。すごく難しいときでも自分を諦めず、美を求めてくださいということを僕はメッセージとして発信したかったんです。
--社会問題をヘアに落とし込む発想がすばらしいですね。美はどんな人にでも平等にあるはずですものね。Cはどうでしょうか?
このモデルさんも難病を抱えている方です。耳のまわりに髪がないのがお分かりですか?
--今気づきました。
Aパネルによる実際のトレンドとBパネルによる社会問題を、このモデルさんで実践しました。耳まわりの髪がないところは、その場でちょっと上の部分を切ってつなげるように見せています。
--すごくステキなデザインです。
ありがとうございます(笑)。

--3スタイルとも毛束が動く様子が印象的です。こういうデザインがJUUNさんの特徴なのでしょうか?
もしこのような束感がなければ、スタイルが硬く感じられます。女性らしい柔らかい雰囲気が出ません。女性はどんなに強い人でも柔らかくて優しい一面がありますので、もし髪に硬い雰囲気を作ったら、女性らしさは出ないです。
Ⅲ.グランプリファイナルに向けての決意
--2回目でエリア・グランプリを獲ったときの感想をお聞かせください。
すごくうれしかったです。夢みたいな気持ちでした。DAというコンテストがあるというのは、実は2013年から知っていました。しかし当時はマレーシアにはミルボンがなかったので、出たいと思っても出ることができませんでした。その後、ミルボンマレーシアが設立されて、DAに出場できただけでもうれしかったのに、エリア・グランプリを獲ることができたというのは、自分にとっては大変な名誉なことです。
--そう言っていただいて、こちらもうれしいです。DAはマレーシアの美容業界をもっと盛り上げたいと思っています。
DAは、どこよりもチャレンジングできるコンテストです。僕は美容業界に入ってもう15年になり、いろんなコンテストにも出場してきました。実は、僕くらいのキャリアになると、コンテストに参加する人はほとんどいません。だけど、ベテランでも参加するに値するものだと思います。

--今、日本のDAでもベテランのエントリーが増えてきています。なぜなら、美容師はずっと感性を磨き続ける仕事なので、やめてはダメだと気づき始めたからです。日本では昨年、800名を超えるデザイナーさんが出場したんです。
そうなんですね。マレーシアで同じような状況を見てみたいです。

--JUUNさんは7月に行われるグランプリファイナルのために日本へ向かいます。残りの期間で準備しようと思っていること、努力しようと思っていることはありますか?
最近はずっと社会問題に興味があります。そこからインスパイアされるものを見つけています。自分の中では、Aはそんなに難しくないのですが、Bは自分が思っていることをみんなに表現したいので、そこは力を入れたい部分です。みなさんにBを作った意味を伝えて、これは現実に起きていることですよということを知ってもらえればと考えています。
--オブザイヤーに向けての意気込みを教えてください。
他の人を超えるのではなくて、自分を超えたいと思っています。エリア・グランプリを獲ったときよりももっと成長したいです。そのための努力が自分の成長の糧になると思っています。