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髪の成分や年齢による髪質の変化について毛髪科学の研究者に聞いてみた。

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毎日お手入れしている「髪」そのもののこと、意外と知らないですよね? 髪の基礎知識を手に入れて、普段のヘアケアに役立てられることを専門家であるヘア化粧品プロフェッショナルメーカーの研究員に教えてもらいました!


今回はミルボンにて髪の毛の基礎研究に携わるリサーチャーの古田桃子さんです。古田さんの所属する基礎研究グループでは、社外にて大学とともに進めている研究なども多く“髪の質感”を数値でも表すことや、素材としての髪の毛についてのリサーチを深めているそう。私たちの頭皮を覆う髪の毛ってそもそもどんなものなのかを教えてもらいます。


【目次】
■髪の毛って一体どんな成分でできている?
■髪の毛の伸びる速さはどれくらい?
■髪の毛は一日何本抜ける?
■人種による髪質の違いとは?
■年齢による髪質の変化とは?

■髪の毛って一体どんな成分でできている?

古田さん:髪の毛のほとんどの成分はたんぱく質です。また、髪の毛1本に着目すると、実はいくつかの層に分かれた構造を持っています。
私たち研究者は髪の毛をのりまきに例えることが多いですね。

――よく聞く大切な「キューティクル」もそこに含まれているのでしょうか?

古田さん:はい、そうです(笑)。髪の毛の太い人と細い人では少し傾向が異なるのですが、太い人で考えてみますと、一番外側にある“のり”が「キューティクル」。中に詰まっている“お米”の部分が「コルテックス細胞」といって縦方向に並んだ層です。ちなみに髪の毛は中心に空洞がありまして、その部分をかっぱ巻きのかっぱです、と説明したりしますよ。
つまり大きく分けると髪の毛の中身は3つの構造に分かれていて、髪のいちばん外側にあるキューティクルは、髪を守ってくれているような存在です。キューティクルとコルテックスでは少し性質が違って、キューティクルは固めで、コルテックスは柔らかい素材なんですよ。そして、髪の一番中心にある空洞は、細い髪にはなかったりして、実はまだその役割はわかっていないんです。

――ちなみにそのキューティクルが剥がれてしまうとどうなりますか?

古田さん:キューティクルは髪の保護をしていて、瓦のように、ちょっとずれながら平均すると8枚くらいのものが重なりあって層をつくっています。ちなみに重なっている部分は脂質などでつながっていて、その脂質が不足して少し浮いてきてしまうと、ひっかかりがうまれて髪がもつれたり、切れ毛などにつながってきてしまうというわけです。

キューティクルが剥がれてしまうと、髪が絡まりやすくなったり、摩擦に対して弱くなってしまう。つまり、キューティクルが無くなること自体もダメージですし、キューティクルが無くなると、その内側にあるコルテックスもどんどんダメージに弱くなる、ということです。

左:ダメージを受けて浮いているキューティクル
右:健康な状態で整っているキューティクル

■髪の毛の伸びる速さはどれくらい?

――ちなみに髪の毛って平均するとどのくらいのスピードで伸びているのでしょうか?伸ばそうと思うと、そういったダメージやケアの仕方も気になるところです…

古田さん:髪の毛って、だいたい1ヶ月に1.2cmくらい伸びるか伸びないか。そのため、髪が長ければ長いほど、先のほうはもう随分昔の髪だったりします。
だから、髪を伸ばそうとするときにただ放置して伸ばしっぱなしにしてしまうのは、大きなダメージのもと。毛先の髪は根元に比べ、これまで蓄積されてきたダメージでキューティクルの接着能力も弱まってしまいますから、例えばお風呂で髪を濡らす前には丁寧にブラッシングしてあげるなど、からまりを防ぐちょっとしたひと手間をかけてあげてくださいね。。生えてきたての根元のほうがやはりキューティクルはしっかりしているけれど、女性で髪を伸ばしたい方も多いですから、ケアとしては髪の毛を先までコートしてあげるという方向性が大事になってくるかな、と思います。

――暑くなる夏の季節だと特に気を付けることはありますか?

古田さん:実は外にいる時に私たちが浴びている紫外線は、髪を酸化させてしまう原因。夏は特に肌にも日焼け止めを塗ったりしますよね。髪の毛も同様にケアしてあげる必要があるんです。紫外線にさらされて酸化が進むと、髪を形成するたんぱく質の結合が一部切れてしまう、というようなことも!なので、日傘や帽子といったアイテムは髪の紫外線予防にも効果的ですし、最近は日焼け止め効果のあるトリートメントも多くなってきていますよ。素材としてもろくならないように、日々のケアが重要ですね。

また、地肌の環境としても、脂質が除去されず残ってしまっている
と、熱や光を浴びた際に酸化し始めます。その酸化した脂肪酸や脂が頭皮に溜まることにより、頭皮の環境が悪化して炎症を引き起こし、髪が抜けやすくなる、というようなことも。

ちなみに、プールで色が抜けてしまうというのは、髪のなかにあるメラニンが塩素によりダメージを受け分解され、色が薄くなっているものです。プールや海に行った際は、シャワーをきちんと浴びで真水で髪をしっかりすすぐことが大事ですよ。

■髪の毛は一日何本抜ける?

――髪の毛の生え変わりのサイクルや、抜けやすい時期など傾向はありますか?

古田さん:髪は、同じ1本の毛穴から「生えてくる→成長が止まる→抜ける→また新しい髪の毛が生えてくる」というサイクルを繰り返しています。しかもその成長のサイクルは毛穴ごとに結構違ってもいるんです。
1本の髪の毛は、女性ですと大体3〜7年くらいは伸び続けていきます。髪の毛は、伸びきるとそのあとに退行期というのが2〜3ヶ月あり、それぞれ抜けていくのが基本的なヘアサイクル。
日本人の成人女性だとおよそ10万本くらい髪の毛があると言われていますが、そのうち平均して1日100本くらいは普通にしていても抜ける、と言われています。
季節や年代によっても髪の毛の抜け方は変わりますね。

――1日100本も抜けているんですね・・・・

古田さん:100本の髪の毛って束にしてみると実は結構少ないなっていう印象だと思いますよ。でもそうやって毎日少しずつ抜けたり生えてきたりが頭皮では起こっているんですよね。なので、日々のケアが大事になってくるんです。

■人種による髪質の違いとは?

古田さん:そうですね、髪の毛の種類ってとても個人差があるものなのですが、ざっくり毛の種類は人種で大きく3つくらいに分けることはできます。

日本人はモンゴリアンと呼ばれ、傾向としては髪太めで、直毛の人が多いです。色は黒だったり褐色のアジア圏に多い髪の毛ですね。

欧米の方々に多いコーカシアンは、髪の毛が細いという傾向でして、くせ毛の方も多いです。色は褐色やブラウン、少ないですがブロンドの方もいる。

アフリカに多いエチオピアンという人種は、モンゴリアンよりももっと太い髪の毛で、縮毛が多いと言われています。

直毛が多いとされるモンゴリアンですが、実は日本人女性の7割くらいは「くせ毛」という自覚があるという調査結果もあります。これは、元からのくせ毛と同時に、加齢による髪質の変化も影響しているはずです。

■年齢による髪質の変化とは?

――くせ毛じゃなかった人も年を取るとくせ毛になったりするんですか?

古田さん:最近の研究によって髪を断面から見てみると、毛の中のたんぱく質に偏りがあることがわかってきました。というのも、たんぱく質には、濡れた際に水を吸いやすいものと吸いにくいものがあるんです。これがどちらも均等に髪の毛の中にあれば直毛なのですが、たんぱく質のあり方に偏りが出てくるとくせやうねりを生じることになるというわけです。

古田さん:さらに、年齢を重ねた女性の悩みとしてよく挙げられるのが、髪がうねるようになった、というもの。加齢によりダメージを受けやすくなると、たんぱく質が髪から流れ出てしまい、その結果髪の内部の状態に大きな偏りが出てくることに。
そのほか、頭皮の毛穴の形も正円のひと、楕円のひとなどさまざま。このあたりは白髪の研究と同時に私たちが現在研究を進めている、じつはまだわかっていないことの多い分野でもありますね。髪って、これからわかってきそうなことがたくさんある、とても面白い研究対象なんですよ。

ヘアケア、と一言でいっても頭皮にアプローチするのか髪にアプローチするのか、髪の外側なのか内側なのか、本当にいろいろな形がある、ということですね。

じつはまだまだ神秘に包まれた部分も多いという髪の毛の世界、今日は顕微鏡の写真も使って詳しく聞かせていただきありがとうございました!




古田桃子さん
(株式会社ミルボン)開発本部 中央研究所 基礎研究グループ リサーチャー

写真:ミネシンゴ
取材・執筆:鈴木絵美里

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