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髪の毛を寄付する一歩先。ヘアドネーションから考える私たちの「未来」

REPORT | 2019.12.12

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ヘアドネーションをきっかけに、どんな人生を歩みたいかを考えてもらえたら──。

特定非営利活動法人 Japan Hair Donation & Charity、通称「ジャーダック」と、「ジャーダック応援団」である株式会社アデランス、花王株式会社、テスコム電機株式会社、株式会社ミルボンの4社が協力して、2019年の夏休みに東京と大阪にて「ヘアドネーション」を知るための親子向けのイベントが開催されました。

今回は、大阪のミルボンで開催された「夏休み親子イベント 2019 ヘアドネーションと髪を学ぼう!」の様子をお届けします。

ヘアドネーションという「入口」から

2019年8月4日(日)の午後、株式会社ミルボンの中央研究所には小学生から高校生のお子さんとその保護者、合計80名が集まりました。

目的は、2015年頃から一般に広まってきた「ヘアドネーション」を知ること。寄付によって集まった髪の毛でウィッグを制作し、頭髪を失った子どもに提供する活動です。ヘアドネーションの活動を続けるジャーダックへの関心もどんどん高まっているため、2017年の夏から親子向けのイベントを企画しています。

始まりの挨拶は、ジャーダックの代表理事である渡辺貴一さんから。

「2009年にジャーダックを創設してから、今年で10年経ちました。活動を始めた頃はヘアドネーションの言葉すら知られていなかったのに、今ではみなさんの活動になっています。このイベントをきっかけに、ヘアドネーションの一歩先まで考えてもらえたら嬉しいです」

渡辺さんが語る「ヘアドネーションの一歩先」。今日集まった参加者は、それぞれの日常に何を持ち帰るのでしょうか。

ウィッグがあるから、好きなことに挑戦できる

舞突然会場の照明が暗くなり、聞こえてきたのは哀愁ただよう音楽。華やかな出で立ちの女性が登場し、全身を使って激しくダンスします。

サプライズで披露されたのは「フラメンコ」。情熱的なダンスを終えてもう一度登場したダンサー・吉田薫さんの姿に、参加者の視線が集まります。

「私は小学2年生から円形脱毛症になり、抜けたり生えたりを繰り返してきました。フラメンコに出合った大学生の頃は髪の毛が生えていたのですが、社会人になってからまた抜けてしまって。鏡を見るたびに泣いてしまう時期があり、フラメンコからも離れていたんです。

でももう一度フラメンコをやりたくて、今は試行錯誤しながらウィッグを固定しています。フラメンコのおかげで、自分の幸せだけでなく悲しみや苦しみも表現できる。ウィッグがあるから、今も楽しく踊れているんです」。

ウィッグユーザーとして体験談を話してくださった吉田さんに対して、参加者からは「ウィッグユーザーの方に対して、私たちにできることは何でしょうか?」との質問がありました。

「私は今日まで周りの友だちにたくさん助けられてきて、今は髪がないことを病気とは思わなくなりました。一つの個性としてウィッグを使っている方が周りにいたときに、一人ひとりが『自分にできることは何だろう』と考えてくれたら、私なら嬉しいと思います」

「髪を切ること」がヘアドネーションのゴールではない

続いては、デモンストレーションカット。2年間髪を伸ばしてきた小学3年生のあやかさんの髪の毛をヘアドネーションするために、美容師の入江さんが壇上でカットします。

あやかさんが髪を伸ばし始めた理由は、「お母さんがヘアドネーションのイベントに連れて行ってくれて、自分もやりたいと思った」とのこと。同じように髪を伸ばしている参加者がたくさん来ていたため、カットの様子を息を呑んで見守ります。

入江さんの美容室では、事前に希望のスタイルを相談した上で、なるべく捨てる髪がないようにカットするのだとか。

髪をウィッグに使用するためには、31cm以上の長さが必要です。長期間伸ばしてきた髪をヘアドネーションするのだから、美容室選びがとても重要なんだとか。

渡辺さんは「ヘアドネーションは単に髪を切れればいいのではなく、切った後の髪の毛が人の役に立つことがゴールです。伸ばしてきた髪への思い入れを理解してくれる美容師さんを選んでくださいね」と教えてくれました。

体験することで、「自分ごと」になっていく

次は、髪の毛の仕分けワークショップが始まりました。

毎日200〜300通以上送られてくる髪の毛の長さを計り、仕分けする作業に取り組みます。

少しドキドキしながらも、親子で力を合わせて次々に髪の毛を分類。

ウィッグに使える長さを満たしていないためにパーマ液のテストなどで使われる30cm以下のSサイズから、75cm以上のLLサイズまで。ほとんどの髪が31cmから50cm未満のMサイズの中で、この回では希少なLLサイズが何度も登場して盛り上がりました。

髪の毛があることもないことも、一つの個性

全ての仕分けが終わったら、今度はジャーダック応援団4社のブースを回って髪の毛への理解を深めます。

ウィッグをかぶってみたり、機械を使って自分の髪をズームしてみたり。

髪が生えている人にもさまざまな個性があり、髪が抜けることも個性の一部なのだと気付かされます。

ブースを回っている途中で、ヘアドネーションのために髪を伸ばしている男の子が話を聞かせてくれました。お母さんが髪を伸ばしていたことをきっかけにヘアドネーションを知り、3年間髪を伸ばし続けているそうです。

「自分で伸ばすと決めて、ようやく腰まで伸びてきた」と語る彼の眼差しに、渡辺さんが話していた「ヘアドネーションの一歩先」を予感せずにはいられませんでした。

ヘアドネーションの一歩先は、自分の未来を描くこと

イベントの最後、渡辺さんはこんなことを語りかけました。

「今では髪の毛を寄付するために、女の子だけでなく男の子も髪を伸ばすようになりました。彼らは髪を伸ばしているせいで、プールやトイレで後ろ指をさされてしまうこともある。それでも自分で決めて、髪を伸ばしているんです」

「そういう彼らを見ていると、みなさんが大人になった20年後の世の中はどうなるのだろう、と思いを馳せたくなります。今日こういう体験をしたみなさんが、社会をつくっていく。そうやって未来をつくるきっかけを届けられることが、このイベントの意義なのだと気づかされました」

「ヘアドネーションをするかどうかは、自分で決めればいい。ご家族の中でも異なる意見が出てくるかもしれません。ヘアドネーションをきっかけに一歩踏み込んで、どんな自分になりたいか、どんな人生を歩んでいきたいかを考えてもらえたらいいなと思います」

渡辺さんが冒頭で語った「ヘアドネーションの一歩先」。一歩先から広がる未来は、自分がヘアドネーションや髪のことを「自分ごと」として考えたこの日から始まる。そんな確かな予感を一人ひとりが胸に抱いた2時間でした。

■Japan Hair Donation & Charity(JHD&C、通称ジャーダック)
一般の方からの「ヘアドネーション(髪の寄付)」と募金等によりフルオーダーのメディカル・ウィッグ『Onewig』を製作し、18歳以下の子どもたちに完全無償で提供しているNPO法人。脱毛症や乏毛症、小児ガンなどの治療や外傷等、何らかの事情で頭髪に悩みを抱える子どもたちに、ウィッグを通して子どもたちの状況が少しでも良くなるきっかけを提供することを信念として活動を続けている。
https://www.jhdac.org/

取材・執筆・写真:菊池百合子

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