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美容師と伴走する部署。ミルボンの教育企画部がサロンとともに描く未来

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左から、教育企画部 Tさん、Nさん

自社のテクノロジーにへアデザイナーの技術や経験を融合させ、数々のアイテムを生み出し続ける美容メーカー、ミルボン。その社内には、ちょっと変わった部署が存在するんです。名称は「教育企画部」。どんな役割なの?部設立の狙いとは?気になる業務内容をメンバーに聞きました!

教育企画部が担うミッションとは?

———教育企画、というちょっと変わった部署について、改めて社内や美容業界での立ち位置を教えてください。

Tさん 全社的なイベントやセミナーの企画運営に加え、毎年打ち出される政策を具現化するコンテンツを作るのがひとつの明確なミッションです。
「スペシャリスト室」というグループもあり、ヘアカラーに特化した「カラースペシャリスト」の4名など、直接美容師さんにカラーの技術を教えるメンバーも在籍しています。

Nさん 社内育成でフィールドパーソンの活動を支援していくという要素もありますね。また、全国のサロン情報を収集しているので、サロンがうまく言語化できていないタイムリーな課題を代弁できていると思います。
キャリアパスなど美容室が抱える課題を解決するため「PASSPORT」という提案書も作成しています。企業体のサロンが増え、産休後の復帰など働き方も多様化してきたなかで、美容師として一生涯働くイメージを持っていただきたいですね。

Tさん 「PASSPORT」には、美容師さんがアシスタントとして入社してからどんな活躍の仕方があるのか、1年間の教育の提案も掲載しています。オーナーさんが読んで、自店のスタッフにどのセミナーを受けさせるか、どの教育を活用するか考えてもらうイメージです。

Nさん 美容師さんの在り方もここ数十年で変わってきていますよね。昔はパーマ屋さんだったのがヘアデザインを売るようになり、技術者からデザイナーの役割になりました。変化に対し、どんな教育が必要なのかを言語化して提案しています。

———毎年新商品が発売されていますし、商品を軸にした教育が主だと思っていたのですが、イメージが変わりました。サロンの課題解決が軸にあるんですね。

Tさん 商品を売るだけでは美容室は成長しませんし、美容室の商品は“人”です。スタイリストと店長とオーナーではキャリアが異なり、今どんな課題を抱えているかも違いますよね。人が成長しない限りはサロンも成長しないので、美容師さんごとの課題にフォーカスし、教育を通じて課題解決をしています。

———具体的にはどうやって教育していくんでしょう?

Tさん 教えていくというよりも、それぞれのキャリアの課題に合わせた教育コンテンツを企画、開発するのが僕らの部署なんです。例えばアシスタントさんだったら、いまは早期デビューの必要性が叫ばれていて。そうなったときに、まず早期デビューにはどんな良さがあるのかを知らせつつ、効率的にデビューできる方法を考え、必要な教育を作っていくというアプローチですね。

———各サロンごとに個別対応をしていくんですか?

Tさん はい。いろんなコンテンツを準備しつつ「ここのサロンはこういう取り入れ方をしていますよ」という事例紹介をしています。早期デビューの切り口でいえば、最初はカラーやケアだけでデビューさせる方法もありますし、サロンによって解決方法はさまざまですね。僕らはスタイリストデビューさせるカリキュラムを作れるわけではありませんが、早くデビューするための知識として役立ててほしいです。

新しい時代の教育をイベントで創る

———今の教育現場で起きていることが見える化され、全国から集まった知見で課題が顕在化できているのがいいですよね。それらを活かし、教育企画は美容業界にどんなインパクトを与えているんでしょう?

Tさん 現代の美容室の経営課題を考えた上で何が必要なのかをテーマに、さまざまなイベントを企画しています。例えば、デザイン力を磨くことを目的にコンテストを開催していますが、ブラッシュアップを欠かさず、数年ごとにテーマを大きく変えています。ある参加サロンのオーナーに「ミルボンのイベントに参加して、メソッドをとにかく信じて、お店全体でも本気で取り組めば勝手にスタッフが成長してくれる。自然にお客様にも売れていく」と言っていただけたのは嬉しかったですね。

———今の美容師に必要なテーマというのは、どのように導き出していますか?

Tさん 美容師さんへの直接のヒアリングです。アシスタント、スタイリスト、店長、オーナーといったキャリアごとに今どんなことに悩み、どうなりたいのかを聞き、多く挙がった声を課題として据え、解決できるテーマを考えています。
あとは、同世代のなかでも少し先を行っているような人が何をやっているのかを聞くのもヒントになります。そのノウハウを少し具現化してあげると、課題に感じている人たちが追いついていけるようにもなるんです。

Tさん その側面でいえば、「DA -NEXT-」が代表的ですね。
30歳以下の美容師さんが参加できる、新規のお客さんから選ばれるための「強みづくり」と「発信力」を磨く“自己ブランディング強化イベント”です。特徴としては、ショート・ボブ部門、ミディアム・ロング部門などレングスで分けているところ。例えば少し前に“ハンサムショート”が流行りましたが、デザインに自分なりの強みを持たせ、特化して発信するとユーザーに届きやすい傾向があるんです。

同世代で先を行く美容師が審査員となり、ノウハウを聞き出してイベントに落とし込んでいる

Tさん また、「DA -NEXT-」ではカット後にスマホ撮影タイムがあります。制限時間20分以内にその場で撮影から写真投稿までを行い、その写真はもちろん、どんなネーミングで発信するかまで含めて審査されます。新しいお客さんとの出会いや、自分の強みをヘアデザインで出していくことを求めるならSNSの活用は欠かせません。

———SNS時代だからこそのイベントですね!他にも今までやってきた「教育企画ならでは」の企画、事例を教えてください。

Tさん 美容の知識力を楽しみながら向上させる美容クイズイベント「美容知識王決定戦 KA(Knowledge Abilities)」も代表的ですね。知識を競うコンテストは今までどこもやっていませんでした。ネット社会でどんどん情報が増えて美意識も高まり、お客さんのほうがむしろ詳しいことも増えているなかで、美容師さんが信頼されることを考えると知識を身につけるべきだとは思っていたのですが…勉強しなさいよと言われて、やりたくないじゃないですか(笑)楽しみながらできることを考えていたら、クイズ形式にたどり着きました。

Tさん 内容も、基本的にはお客さんにお伝えできるような美容知識や商品知識です。社会知識として“○○県に○○月にオープンするテーマパークは?”なんて問題も少しだけ入れています。

Tさん また、「韓髪(ハンモリ)」は、韓国から講師を招いてのセミナーの先駆けになりました。

東京・恵比寿の「ザ・ガーデンホール」など全国4カ所で開催
ゲスト講師として招かれたハ・ヌン氏は日本で初セミナーとなった

独自のメソッドで、カウンセリング教育まで

Nさん ほかにも、美容師さんのためのオンライン学習サービス「エデュケーションiD」や、美容師個々の専門性を高め、成果につなげる「ビューティソムリエ育成制度」も企画・運用しています。

おそらくミルボンの教育で最も特徴的なのがカウンセリングです。「ビューティソムリエ育成制度」にはヘアケア、ヘアカラー、コスメティクス、デザインロジックの4つのカテゴリーがあり、さらにそれぞれ知識、技術、カウンセリングという項目に分かれています。体系化して学習できるような教育になっていても、なかなかカウンセリング教育を形にできていないことが多いのですが、ミルボンのメソッドにはきちんと型があります。
技術面ではお客さんに直接関わるレベルになるまで時間がかかりますが、カウンセリングは生モノ。型が入ると自信を持って話せるようになり、美容師さん本人もサロンワークでの成長を実感しやすいんです。お客さんにもそれが伝わってリピートに繋がりやすくなり、ソムリエ制度の中でも特に評価されている点ですね。

お客さんからすると、最初のカウンセリングで「この美容師に期待できるかどうか」が決まるはずなのに、カウンセリング教育ができているサロンさんはとても少ないと思います。そこにメスを入れ、売れている人たちのカウンセリングの共通項を探し、お客さんに支持されるカウンセリングの型を作り、検定に組み込んだりしています。

———長年、美容師は教育産業だと言われていますが、教育企画から見てどう感じますか?

Tさん 先程も言いましたが、美容室の商品は人であり、ファンは美容室につくというより人についています。商品であるその人がアップデートされず飽きられてお客さんが減ると、その集合体である美容室自体の売り上げも減っていくので、継続的な教育は不可欠です。
以前、一般の方にインタビューをした際、「自分のスタイリストさんがコンテストに出て自分磨きをしているのは、普段施術してもらっている客として誇らしい」という声があったんです。人によって得意分野は違いますが、自分の得意な領域においてアップデートしていくことが魅力にも繋がるはずです。

———飽きられない自分を保ち続ける。そのためにアップデートや教育が必要ということですね。

Nさん さらに言えば、この業界は流行産業でもあります。流行が移り変わればデザインが変わり、対応する技術も変わるので、教育が必要になります。実際にデザインだけではなくSNSをやらなければいけなくなったり、ツールも変わっていますから。

———それに加えてリーダー育成やマネジメントも必要ですもんね。サロンへのコンサルティング的な立ち位置でありつつ、新しいカルチャーも作り、文化を大切にしながら自社商品を売るというビジネスモデルは他の企業や業界でもなかなかない気がします。

「DA -NEXT-」など各イベントのグランプリが決まるファイナルステージ「MILBON BEAUTY FEST」
全国の美容師がその頂点を目指す

あらゆる架け橋として、これからも

———最後に、ミルボンが考える教育企画の未来は?

Tさん 僕らの部署は美容師さんに向けたイベントがほとんどなのですが、一般の方にも来てもらえるようなアイデアを考えていきたいです。美容師さんの凄さをもっと一般の人にも見てもらいたいですし、美容師さんにも「お客さんってこんなことを期待しているよ」というのを知ってもらいたいですね。間にメーカーが入ることで、お互いに普段とは違うことも感じられるんじゃないかなと。美容師さん、お客さん、メーカーや代理店さんも一緒に交流できるような場を作りたいです。

Nさん 今は国内発信が多いですが、グローバルに発信を行き来できるようにしたいです。世界の各地が繋がっている世の中なので、教育も各ローカルに合わせてカスタマイズしつつ、美容師支持率ナンバーワンを目指したいです!

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取材・執筆 : 高橋あやな 写真:ミネシンゴ

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