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人と向き合い、「感じて生きる」ことで、自分の中のハッピーを見つける

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「美しさ」をテーマに毎月ショートフィルムを配信しているミルボンが、2022年11月6日、ミルボン本社にて、初のリアル&オンラインイベント「美しさを拓く」を開催した。イベントでは2本のショートフィルムが上映された他、『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)』代表でもある俳優の別所哲也さんと、SSFF&ASIAでアンバサダーをつとめる俳優・映画コメンテーターのLiLiCoさんのトークセッションが行われた。

本記事では、イベント開催を記念して、ミルボン経営戦略部部長の坂下秀憲とLiLiCoさんの対談を実施。企業が文化の醸成に貢献するイベントを開催することの意義やショートフィルムの魅力、それぞれが考える「美しさ」などについて語ってもらった。

それぞれの角度で美しさを発見し、自分の中の「いいこと」を見つける

坂下:トークイベントお疲れさまでした。いかがでしたか?

LiLiCo:すごくいい空間でした。お休みかもしれない大事な日曜日に、オンラインの人も含めてみんなで会えて、ショートフィルムも楽しめたことがとっても良かったです。オフィスでイベントができることもなかなかないですよね。入った瞬間からすごく美しくてきれいな場所だと感じたし、どこを見ても清潔感にあふれていて、ショーケースもあったりして。佐藤社長はじめミルボン社員のみなさんもとってもフレンドリーで、こういう人たちだからこそ、様々な人の意見を取り入れながら新しいものを作り出せるんだろうなと感じました。

私と別所哲也さんは古いお付き合いで家族みたいな感じなんですけど、もう15年くらい、SSFF & ASIAに関わらせていただいていて。去年はミルボンとの素晴らしいコラボがありましたよね。とってもワクワクしたし、ここから何かが広がればいいなと思います。

坂下:登壇する側としても、今日のイベントは楽しかったと。

LiLiCo:楽しかったですね。みんなすごく丁寧に聞いてくださっていたし。もしかしたら、初めてショートフィルムを見る人にとっては「?」な部分もあったかもしれないけれど、私と哲也さんの話を聞いて一生懸命理解しようとしていたのがとっても素敵でした。すごく嬉しかったのが、小さなお子さんをお連れされた方がいたこと。ご夫婦だったのかな。周りに気を遣われたかもしれないけれど、誰でも来られる空間だといいなと思っていたから、お子さんをお連れしてきてでも見たかったというのが嬉しかったですね。

坂下:実は、ショートフィルムのイベントで一般のユーザーさんを本社にお招きしたのは初めてなんです。

LiLiCo:初めてだったんですか? 段取りも素晴らしかったし、こうしたイベントの開催に慣れている感じがしました。

坂下:今回のイベントのタイトル「美しさを拓く」は弊社のコーポレートスローガン「Find Your Beauty」でもあります。ショートフィルム上映後に、映画のプロの方から解説をいただき、その見方を参考にし、いろんな感想を聞いて、様々な角度で美しさを発見することで「美しさを拓く=Find Your Beauty」につながるお手伝いができたのではないかと感じました。そういう意味で、我々のスローガンを体現できた貴重なイベントになりました。

ファンのあいだではよく知られていることだが、別所さんの実家は美容院である。子どもの頃は、美容師である母や実家の美容院のスタッフに髪を切ってもらっており、美容は生活の一部だったという。

「学校から帰って来たらいつも美容院で母の働く姿を見ていたし、初詣や成人式の際なども、髪をきれいにしてから行く人たちを家で見ていました。ミルボンの製品についても、母にとっての商売道具ですから、昔から知っていました」

一方、LiLiCoさんは、昨年6月に初めてミルボンの『イルミネイティング グロー』を使い、そのクオリティに感動したという。

スウェーデンと日本では水質も湿度も違うため、来日以来、自分に合うシャンプーを今でもいろいろと試しているそうだが、『イルミネイティング グロー』を使った直後から「すごく調子が良くなった」こともあり、ミルボン製品を美容院から直接購入しているんだとか。

(なお、ミルボンIDを利用すれば、対象商品は専用オンラインストアから購入することも可能)。

LiLiCo:印象的だったのは、最後に「『何かいいことないかな〜』って絶対言ったことあるでしょ?」と言った時に、会場のみんながすごく頷いていたことです。やっぱりみんなそう思ってしまうんですよね。でも、いいことなんて、ないんですよね。外からやってくるものではなく、自分の中にしかないもの。それを見つけてほしいなと思っています。

日本人は自分で自分の幸せを止めてしまうことが多い気がしています。「私なんか」とか「やりたいけど、こんな年齢だし」とか思ってしまう。そうじゃないんです。映画を見たり、私や哲也さんの話をきっかけにしたりして、自分の中にある「いいこと」を見つけられるようになってくれたらと思います。

国や地域の色を大切にし、その違いを意識する

坂下:ミルボンの経営理念は「ヘアデザイナーを通じて、美しい生き方を応援する」ことです。美しさは、人の心を豊かにし、心の豊かさが文化を育み、文化を大切にする社会は平和につながると信じています。ですから、文化の醸成に貢献することは、我々にとっては経営理念そのものなんです。 今、我々は、「MILBON BEAUTY MOVIES」として、様々な国や地域のショートフィルムを配信していますが、ショートフィルムとは、その国や地域の社会・文化・時代背景などの中から生まれてきたひとつの表現だと思うんです。

LiLiCo:もちろん、その通りですね。

坂下:そういうものに触れて「こういうアプローチで表現したいんだな」と感じることにはすごく価値があると思っています。しかもそのアプローチや表現の仕方が、国や地域によって違うところがいいと思っていて。実は美容も同じで、地域によって基準が違うんですよね。もちろん人それぞれではあるんですが、たとえば、日本は素材を大事にするんです。シャンプーでも化粧水でも、いろんなメーカーさんが髪や肌の素材をケアする商品展開が活発です。こうした素材を大事にする美しさの作り方が、日本独自のアプローチだったりするわけです。

一方、人種のるつぼであるNYであれば、様々な価値観が混ざり合った環境が故に、自己主張する事が重要で、ファッション的にはコンサバなのに色使いがすごく華やかだったりする。スキンケア商品のバリエーションは少ないけれどもメーキャップ商品は物凄く豊富だったりして、色の幅も彩度も、日本のものとは全然違うんです。これらはその国や地域から生まれてきた製品群だと思うんですよね。

こうした点では、美容もショートフィルムもきっと同じだと思うんです。やはり、各地域の文化があり、その地域の色を大切にすることで、グローバルなメインカンパニーになっていくことが我々のビジョンにつながっていきます。そういう意味で今日のイベントのような取り組みは、我々社員にとっても様々な価値観に触れて、感性を磨くことになる良い機会ですし、こういうことを大切する会社である事を、社員に伝える意味でも非常に意義のあることだと思っています。

LiLiCo:すごく面白い話です。この国には私に合うファンデーションがどこにもないんです。私のように褐色の肌を想定して作られていないから。髪の毛に関する感覚はもっと差があって、日本では櫛を使ってポニーテールにするけれど、欧米では指でやるんです。ある程度の雑さがあった方がかっこいいんですね。それくらい美の感覚が違う。

そういう感覚の違いをちゃんと意識している会社があるということが、とても嬉しいです。海外でも映画祭で何らかのコラボをする企業はありますが、ミルボンのように企業が主体となってショートフィルムを発信していくことは珍しいと思うので、昨年のコラボや今日のイベントなど、もっともっとやってほしいと思います。

ショートフィルムの魅力と、LiLiCoさん流・映画の見方

坂下:LiLiCoさんはSSFF & ASIAに15年近く関わっていて、この5年間はアンバサダーもつとめられています。LiLiCoさんが考えるショートフィルムの魅力とは何でしょうか?

LiLiCo:2014年にSSFF & ASIAの審査員をしていた作家の湊かなえさんが「ショートフィルムは削りの美学」とおっしゃっていて、これ以上のことを言える人はいないと思うんですが、やっぱり、いきなりメインコースを食べたいときがあるんですよね。前菜はいらない、いきなり肉を食べたい!という時が。そんなふうに、「これがメッセージです」という、伝えたいことろまで一気に行く面白さがあると思います。

今は携帯でオンラインで見れますから、移動中とか、一杯飲んでいる間に1本だけ見ようとか、そういう楽しみ方もできる。そこで自分の心が豊かになるんですね。たった数分で心がすっきりすることもあれば、なかには哲学的な作品があって「ポカーン」としちゃうこともあるけれど、もう一度見たり、時間を置いてから見て内容を理解した時、自分の成長を感じることがあります。映画って2回目の方が面白いことが多いんですけど、なかなか長編を2回見るのは難しいですよね。でもショートフィルムならそのハードルが低い。

坂下:そうですよね。たとえば今日見た1本目の作品『Rise of a Star /スター誕生』は、哲学的な作品かもしれませんね。

LiLiCo:そうなんです。「それで、この人はどうなるの?」と思うかもしれない。でも2回見ると、カトリーヌ・ドヌーヴやみんなの立場を理解できて、見方が変わるかもしれない。嫌な人が出てこない作品でしたよね。強いて言えば、主人公のお友達がいちばん嫌なキャラクターだったかもしれない。でも私だって似たようなもので、若い頃は成功したかったから「この仕事、絶対私がやった方が面白いのに。あの人、本番前に風邪ひいてくれないかな」と思ってました。

坂下:2本目の作品『Princess/プリンセス』はいかがでしたか?

LiLiCo:私の中では、あの女の子が最後に自分の個性を見つけたのかな、という読み取り方だったから、お父さんの方に感情移入したという別所哲也さんの感想とは少し違ったけれど、それがまた面白かったですね。もう1回見ようと思いました。

坂下:もしかすると、男女によって感情移入する箇所が違うのかもしれないですね。

LiLiCo:そういうことはあると思います。だから私、映画を見るときは「5人のLiLiCo」で見るんです。まずは女性のLiLiCoとして。それから、男性誌の連載も結構多いので、男のLiLiCoとして。男の気持ちで主人公の魅力なんかを感じるんですね。さらには、オネエのLiLiCoとして。あとは、プロのLiLiCoとして。「この監督は必ず主人公の手から映します」みたいな見方ですね。そして最後に、いちばん大事なのが、ワクワクしながら映画館に通っていた素人のLiLiCoとして。

たとえばTBSテレビ『王様のブランチ』では、プロとしてのLiLiCoはほとんど喋ったことがないんです。あの番組での私の役割は、評論家ではなく映画ソムリエ。「ちょっとブルーになったときはこれがいい」「ぶっ飛びたいときにはこれを見ればいい」、そんな言い方なんです。

坂下:そうやって5人のLiLiCoさんとして映画を見ることができるのは、普段からそれだけいろんな人と関わって、いろんなものを見たり、その人の気持ちになったり、ということをやっているからですよね。

LiLiCo:そうなんです。いろんな人の会話が好きですね。ひとりで飲みに行って隣の人の会話を聞くのも面白いし、タクシーの運転手さんとお話をするのも好き。よくタクシーで「あの映画見ましたよ」と言われますが、「そういう感情で見たんだ」という発見があって面白いです。どんな人たちが見ているかも気になるから、紹介した映画をもう一度映画館に行って見ることもあります。大きい映画館のエレベーターで、見る前のワクワクした感じと、見終わった後のいろんな感想をみんなが話している感じも好きです。私、基本的に外で音楽は聞かないんです。その街の音も聞きたいし、人と会話が大好きだから。それがひとつの勉強になりますからね。

映画の中のさまざまな「美しさ」

坂下:せっかくなので、「美しさ」という観点から、LiLiCoさんの心に残っている映画をいくつか教えていただけませんか?

LiLiCo:そうですね……。たとえば、『あるスキャンダルの覚え書き』(’06)は、教師と教え子が恋をして、その様子を先輩教師が目撃するという、実話をもとにしたストーリーなんですが、ホラーよりも怖い女の心を描いた作品です。特にジュディ・デンチとケイト・ブランシェットの演技が見もの。ふたりの美しいまでの怖さを堪能できる作品です。この作品では、怖さが美しさになっています。

もうひとつは、私も出演している『ニワトリ★スター』(’18)。井浦新さんと成田凌くん主演のバイオレンスファンタジー映画ですが、この作品で私、全裸になっているんです。本来なら、今の自分が全裸になる必要なんてないのに、全裸になってすべてを賭けました。その自分の姿勢は美しいなと思っています。私が出演すると思ってオファーした、かなた狼監督もすごい。しかも彼は私が映画コメンテーターだと知らなかったんですよ。「『王さまのブランチ』で紹介してもらえたら……」という下心がなかった。そういう裏側も含めて、美しい映画だと思います。


他にも、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(’07)でナタリー・ポートマンが着ていたブラウスが忘れられないぐらい美しかったり、『サイドウェイ』(’04)のワイン畑や景色が美しかったり。映画にはそれぞれいろんな美しさがあると思います。

美しく生きるために必要なのは「感じて生きる」こと

坂下:さまざまな美しさがあると思いますが、LiLiCoさんにとって「美しさ」とは何でしょうか?

LiLiCo:自分の中のハッピーを見つけられる人が美しいと思います。そのためには「感じて生きる」ことが大切です。たとえば今日のイベントも、ただ呼ばれたから適当に喋るのではなく、「せっかくミルボンからのオファーなんだからこの機会にミルボンのシャンプーを使ってみよう」と思うかどうかで人生って全然違ってくるんですよね。「今度試してみます〜」と社交辞令を言ってその場をやり過ごすのではなく。

普段の会話でも「その服、どこの?」「〇〇だよ」「へえ」で終わらせるのではなく、本当にその洋服屋さんに行ってみるとか。私は最近、そういうことを聞かれたら「買うの?」と聞き返すようにしているんです。ただ会話をつなげるためだけに聞いているなら「〇〇だよ」と答えるけれど、本当に興味があるなら「〇〇だけど10年前のだからもう売ってなくて〜」と会話を広げられる。そうやって会話を広げることは無駄話だと思われるかもしれないけれど、無駄話こそが実はいちばん重要なんです。無駄話ができない人はなかなか成功しないと思います。

坂下:その話は、歌手や声優として活動していながら好きな映画を本気で紹介したところから現在の映画コメンテーターへとつながった、LiLiCoさんの生きざまそのものという感じがしますね。「感じて生きる」とても素敵な言葉だと思います。

LiLiCo:この言葉は、『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』(’12)という映画のセリフでもあるんです。ものすごいスラムのゴミの中で生きている主人公の少女に対して、この子のお父さんが「感じて生きろ!」と言うんです。この感覚を私はずっと言語化できなくて、それまでは「一生懸命生きる」という言い方をしていたけれど、映画を見た時に「これだ!」と思いました。坂下さんにとっての「美しさ」はなんですか?

坂下:会社で働く中での美しさをよく考えます。社員とどういう組織を作っていくか、この事業をやるべきかやらないべきか、お客さまからのリクエストにどこまで応えるかなど、さまざまな判断が求められるわけですが、この判断が美しいかどうかを考えるんです。

LiLiCo:そういう判断をするためには何が必要ですか?

坂下:向き合うことだと思います。自分とも、人とも向き合うこと。

LiLiCo:そうですよね。つまり「感じて生きる」ことですよね。私たちは立場もジャンルも違うし、使っている言葉も違うけれど、考えていることは同じなんですね。

取材・執筆 : 山田宗太朗 写真:ミネシンゴ

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