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越境するMade in Japan

OTHER | 2019.10.18

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ロウアーマンハッタンの一角、Milbon USAのオフィスは、ショッピングを楽しむ人々で賑わう通りにある。ヘアケア、ヘアカラーのリーディング・カンパニーとして日本だけでなく世界でシェアを広げつつある、この会社は2004年にアメリカ支社をローンチした。16年目の今年、Milbon USAは新たな一歩を踏み出そうとしている。アメリカのヘア業界の今、そして、Milbon USAのこれからについて、副社長の田中さん、エデュケーターのクリストファーさんに話を訊いた。

——田中さんとクリストファーさんが、Milbonで働き始めたきっかけについて教えてください。

田中: 私は2004年に入社しました。当初は営業志望だったんですけど、国内で5年間、フィールド・エデュケーターとして活動した後、アメリカに赴任になりました。今はMilbon USAのVice President(副社長)という立場にいます。

クリストファー: 私はもう就職して2年ぐらい経ちますね……すごく長く感じますけど(笑)。スタイリスト、エデュケーターとしてキャリアを作ってきたのですが、ある時点で自分がもっと成長したい、知識を増やしたいと思っていることに気づいて、メーカーに就職したいと思うようになりました。色々探したんですけど、自分のコア・ヴァリューに近い会社がMilbonだったという感じです。

——実務としては具体的にどんなことをされているんでしょうか?

田中: 私は三つのセクションの責任者として働いています。一つ目は代理店への営業と開拓。二つ目はエデュケーション。もう一つは将来的に欧米向けのヘアカラーを発売する予定なので、カラー専任のチームの実務とプランニングをしています。

クリストファー: 私はそのカラー剤のチームの専任として働いています。

田中: クリストファーのような現役のスタイリストが関わってくれているというのが非常にポイントだと思っています。Milbon USAは2004年に創業したんですけど、今、僕たちは第3のフェーズにもうすぐ突入しようとしていると思うんですね。第1フェーズはジャパニーズ・ストレート。第2フェーズの今はサロン・トリートメントに力を入れていて。これから第3フェーズとしてヘアカラーをメインの商材として打ち出していきたいんです。でも、ヘアカラーを教育していくってなると、やっぱりライセンスを持った現役の美容師さんたちに力を貸してもらう方が話が早いんですよね。

クリストファー: 今の仕事では自分がスタイリストを始めた頃に学んだ知識や、今までに経験してきたすべてを総動員して、働くことができていると思います。

田中: ヘアカラーの業界は少し特殊なんですよね。今後は各主要エリアの協力してくれる現役の美容師さんと契約して、その方々にMilbonのプログラムを伝えてもらうシステムを採りたいと思っています。やっぱり10年こっちにいますけど、やっぱりまだまだわからないことは多いので、現役の美容師さんに手伝ってもらえるのは役立ちますね。

——お二人に伺いたいのですがMilbon USAは、アメリカのヘア業界で今現在どういう立ち位置なのでしょうか?

クリストファー: 市場の中で成長し続けている会社だと私は思います。米国全土のハイエンドなヘアサロンにも提供できていますし……コンシューマーやスタイリストからの評判もいいですしね。

田中: ほとんどの似た業種の企業は一般の消費者に向けても売り出して、メイン・ストリームを狙おうとしていますが、私たちはあくまでもプロユースというところが他との差別化になっているとは思いますね。

——日本とアメリカのマーケットでは、特に何が違うと思いますか?

田中: やっぱり一番大きな違いは髪質ですよね。ヘアケアとヘアカラーを比較すると、ヘアケアに関しては世界レベルに達していると思うんです。ただ、ヘアカラーになると現行品ではなかなか難しい。黒髪とその他の髪では全然性質は違いますし、新しいプロダクトを開発する必要がある。実は8年ぐらい前に黒髪専用のカラー剤を持ってきて市場テストをしているんですが、全く通用しなかったんですね。世の中に一社で黒髪用と他の髪質のカラー剤を持っている会社って存在しないんですよ。それがMilbonのこれからの大きな優位性になると思ってます。

クリストファー: アメリカは人種も多様ですし、人の好みも全然違いますからね。それに、日本よりももっと過激な髪色の変化をみんな求めているんです。ダークな髪色の人が明るい髪色を求めたりとか……幅広いレンジがあるんですよ。その人たちのニーズに合わせないと、上手くいかない。

田中: こっちにきて、カラーリストから教えてもらったんですけど、多くの欧米人は少女のような透明感のあるナチュラル・ブロンドを求めているんですね。ブロンドっていうのは若返りや富の象徴でもあるわけです。ナチュラルなブロンドって、色が不均一なんですね。黒髪用の全部綺麗に茶色にしてしまうカラーは通用しないんです。今度出すカラー剤はアメリカやヨーロッパ特有のハイライト技術、バリアージュ技術、トナー技術に対応しているんです。それと美容師さんの技術を組み合わせて、Milbonのカラーを提供したいと考えています。

——アメリカでは、コンシューマーは何から髪色や髪型のアイデアを得ているんだと思いますか?

クリストファー: やっぱりSNSやネットだと思いますね。今、多くの人がやりたいと思っているヘアスタイルは、もともとバリアージュ技術が大きな流行となった70年代に流行したものなんです。セレブレティがそういうスタイルを取り入れたことがやはり大きな影響を与えていると思います。ヴィヴィッドなカラーの人も中にはいますけれど、あれもSNSで活躍するインフルエンサーからの影響が大きいんじゃないかと思います。

田中: さっき、クリストファーも言ってましたけど、アメリカは単一国家じゃないんですね。それぞれの州が異なるバックグラウンドを持っている。歴史や習慣も違えば、気候も人種の構成も全然違う。ってなると、毛質ももちろん違うわけで。アメリカ全体というざっくりした基準で考えると上手くいかないんです。

クリストファー: 本当にそうですね。

田中: デジタルでの戦略は本当に大事ですよね。もちろん、ヘアサロンが現場であることは変わりないんですけど、今はリアルとヴァーチャルが融合している時代ですから、デジタルも現場の一つなんですよね。情報の収集や発信をヘアサロンへの営業と同じくらい、あるいはもっとやっていかないと遅れを取ることになってしまうんです。

クリストファー: やっぱり、自分じゃない誰かになりたいっていうのが傾向としてあると思いますね。ビヨンセやマドンナ、レディ・ガガあるいはキム・カーダシアンみたいにしてくれって言ってくる人が本当に多いですから。もちろん、小さなトレンドはそれぞれあって、マッシュルーム・ブラウンやアッシュっぽい茶色、あるいはローズゴールドにするのが流行ってたりはするんですけど。どれも染めたてほやほやのフレッシュな感じというのではなくて、あくまでもナチュラルに見えるような髪色を欲しがっている。

田中: さっきのナチュラル・ブロンドの話にもつながりますけど、エフォートレス(努力をしていない)っていうのがキーワードだっていうのはよく聞きますね。

クリストファー: この5年ぐらいで黒人女性のトレンドもずいぶん変わってきて。リラクサーのような薬剤を使ったケミカルな縮毛矯正をみんなしなくなったんですね。オーガニックがブームだということもあると思いますけど、やっぱりフェミニズムからの影響も大きいんじゃないかと。ソランジェやアリシア・キーズのようなナチュラルなヘア・スタイルが流行していますね。

——ヘアカラー材をこれから打ち出していきたいということですが、Milbonがメーカーとしてこれからのトレンドを作っていきたいというような思いもあったりするのでしょうか?

クリストファー: 個人的には美しい髪色を作りたいというのはもちろんとして、髪色って人種ごとに特有の傾向があると思うんですけど、その人たちのコンフォートゾーンから少し外に出るようなスタイルを提案したいなって思ってますね。

田中: メーカーが流行を作っていこうとかは思っていないですが、トレンドに敏感に反応し合わせられるようにしようとは思ってます。ブルネットのようにMilbonがアジアでこれまで主戦場としてきた色はもちろん、ピンクやグリーンのような色が流行った時に日本のカルチャーと融合させた打ち出し方を考えたいな、とか。これまでオリジナリティとしてきたものを他メーカーや他国にシェアを取られたくないなぁって思いは正直ありますね(笑)。

——この10年間のアメリカ市場の変化というのもお二人は身にしみて感じてらっしゃると思うんですが、いかがでしょうか?

田中: VUCA(Volatility〈変動性・不安定さ〉、Uncertainty〈不確実性・不確定さ〉、Complexity〈複雑性〉、Ambiguity〈曖昧性・不明確さ〉の頭文字を取った2010年代のビジネスの状況を表すアクロニム)なんて言葉もありますが、10年前と今とでは全然状況が違いますよね。昔は成功したかったら、ニューヨークで夢をつかめというような雰囲気がありましたが、今はどこにいても夢がつかめる時代ですから。そういう動きに敏感でいなきゃいけない。

クリストファー: サロンごとの競争がすごく激しくなっていて、お客さんがサロンにつくというのではなくてスタイリストにつくという動きは加速しているというのは感じますね。Instagramでもやっぱりスタイリストのアカウントが人気ですし。

——今現在のアメリカのヘア業界のトレンドってなんなんでしょうか?

田中: バーバーはトレンドがきてますし、これからもっと市場が大きくなっていくと思います。

クリストファー: これだけバーバーの需要が今増えているっていうのは、実のところ美容師が男性の髪を切ることを恐れているからだと思うんです。でも、男性の美容に対する意識はどんどん高くなってきていて。ディテールにこだわったヘアカラーやカットを求める人が多くなってきているんです。需要に供給が追いついていない。やっぱりヘアサロンの人たちはバリカンを使ったことのない人も多いですし、女性ばかり切っていて男性の髪質に慣れていない人も多いので。ヘアサロンのような技術を提供してくれるバーバーを求めている人が増えてると思います。

田中: ビジネス的な観点でホワイトスペースだったんだと思うんですよね。誰も、美容意識の高い男性たちの需要に目を向けていなかった。だけど、そういう需要に火がついて、各社慌てていろんな商材を作り始めていますね(笑)。

Takuya Tanaka
2004年ミルボン入社。エデュケーターとして国内で5年の現場経験を経て、2009年Milbon USAへ赴任。サロン教育や代理店ビジネスの立上げを担当し2014年Vice Presidentに就く。10年のニューヨーク勤務を経て、現在は活動拠点をロサンジェルスに移す。全米に責任を持ちつつ西海岸強化に務める。プライベートでは3人娘の育児に奮闘中。


Christopher McCully Darring
芸術的な家庭環境で育ち、幼い頃から芸術と音楽に慣れ親しむ。2007年美容師となる。セッションスタイリスト兼エデュケーターとしてキャリアを築く。2016年Milbon USA入社。週末は美容師、平日はミルボンという二刀流。営業と教育の両ポジションを経験。現在はクリエイティブカラーディレクターとして、将来を担うヘアカラー展開の中心的役割を担う。

文・写真:ミネシンゴ

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