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SNS世代の自己表現を応援したい。ミルボン新ブランド「DOOR」のパッケージデザインに込められた想い

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2020年9月10日に誕生した新ブランド「DOOR(ドア)」。

今回は、パッケージデザインを統括した堀田さんと、パートナーとして一緒にデザインを作りあげたGKグラフィックスの田川さんに、DOORのパッケージデザインに関するお話を伺う。

DOORのターゲットは、“自分らしさ”を大切に、日々SNSなどで発信を楽しむソーシャルネイティブ世代。彼女たちの自由な自己表現に寄り添う製品でありたいというコンセプトは、デザインにどう反映され、渾身の新ブランドとして世に出されたのだろうか。

約半年もの時間をかけたというデザイン制作の裏側、苦労した点、製品に込めた想いをくまなくお伝えする。

堀田ミルボン7年目。パッケージデザイン開発室チーフ。研究として4年ほど製品の開発に携わった後、パッケージデザインの部署へ異動して3年目。DOORのデザイン統括を務める。

田川ミルボンが古くからお世話になっている制作会社・GKグラフィックスのデザイナー。DOORのデザイン担当を務める。

良いものを作りたい。その一心で始まった新しいことづくめの挑戦

ミルボンの“中の人”である堀田さん。“パートナー”にあたる田川さん。ひとつの製品のデザインを作り上げるにあたって、どんなコミュニケーションを重ねていたのでしょうか。まずは、DOORプロジェクト発足当時のお話から伺います。

―はじめに、堀田さんは普段ミルボンでどんなお仕事を?

「パッケージデザインの部署で、容器に関わるすべてのことをおこなっています。例えばチューブやポンプなどの容器の仕様、素材、デザインのディレクション。化粧箱や、出来上がった製品をお客様のところに届けるための梱包箱の設計までやります」(堀田)

―かなり多岐にわたるんですね。今回DOORプロジェクトでデザインの統括を務められていますが、発足当時の様子を教えてください。

「通常は、製品コンセプトがある程度固まったところでパッケージチームに話が降りてきますが、今回はちょっと違っていて。デザイナーも開発メンバーも一緒に、コンセプトを考える段階から参加しています」

プロジェクトチームを立ち上げ、みんなでイチから考えるところから始めるという新しい方法。まさに新しい挑戦だったというDOORプロジェクト。

それは、会社としての「攻めた新ブランドを作る」という意気込みと、良いブランドを作りたいという想いが強いメンバーが揃ったことが大きいと語ります。

先日公開したDOORの開発員インタビューや、発売と同時におこなわれたプロモーションイベントの振り返りでも、みなさんのDOOR熱がひしひしと伝わります。(記事末でご紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください)

「コンセプトの根幹は商品を企画する方が考えていると思っていたんですが、みなさんでされていたとは。驚きです。制作を進める過程も、いつもと少し違った気がします」(田川)

いつもはデザインパターンを出すと即決だというミルボン。今回は複数パターンを市場調査にかけるなど、デザインを揉む時間が長かったそう。新しいブランドならではかもしれません。

―当初、ミルボンからの依頼はどんな内容だったんですか?

「製品をイメージするキーワードや人を集めた、ムードボードをしっかりと作り込まれた状態でお話をもらいました。芸能人名まで出され、コンセプトがかなりハッキリしているなと感じた一方、該当するリアルなターゲット像が見えづらかったですね」

自分らしい表現や発信を楽しむソーシャルネイティブ世代=18歳くらいの若いインフルエンサーをイメージしていたミルボン。ただ、発信をしている18歳は数多く、それぞれの趣味趣向はバラバラ。

「同じ18歳でも人によってかなり違いますよね。芸能人の方は普通の18歳とは少し乖離があるので、リアルなターゲットを深く理解するために、SNSにかじりつく日々でした(笑)」

コンセプトと現実のユーザー像がまだ遠く、ターゲットも幅広い状態からのスタートだったようです。

「好かれそう」はいらない。18歳の直球の好きを大切に

ミルボンからの依頼を元に、まずは3つのデザインを提出したという。

「コンセプトに沿わせつつ、リアルなターゲットを探りながらの提案。恐る恐るプレゼンしたことを覚えています」(田川)

「上げていただいたデザインを、コアターゲットである18歳前後のインフルエンサーさんたちに見てもらいました。ヒアリングでもらった声を元に再度デザイン案を出してもらったり、という作業でしたね」(堀田)

そうして一つに絞られたのは、白を基調としたシンプルで丸みのあるデザイン。社内でも評価が高く、そのデザインで役員審議に進めたところ、「DOORはこういうブランドじゃないよ」と一蹴されたといいます。

―そのNGはチームでどんな風に受け止めましたか?

「フィードバックの内容は、大衆受けを考えずもっと攻めてほしいというものでした。これまでのミルボンの商品は幅広い方に好まれるデザインにする傾向が強かったので、攻め具合に迷っていたところもあったんですが、“あ、今回は本当に攻めていいんだな” って火がつきましたね(笑)

「ターゲットにヒアリングする際、聞き方で答えが違ったんです。“18歳にはどのデザインが好まれそう?  人気が出そう?”  と聞くとシンプルなデザインが選ばれることが多かった。でも、“あなたはどれが好き?”  という個人的な好みを聞くと、エッジが効いたものや、黒を主体としたクールなデザインが選ばれていたんですよね」(堀田)

自分らしさを大切にする世代のための製品だからこそ、大衆よりも個人の好きを大切にブランドを作っていく。もっと攻めていこう! と背中を押されたことで、当初の思いに立ち返り、舵を切り替えられたといいます。

「そこからまず、ヒアリングの対象をDOORのイメージに近い4人に絞ったんです。最初にヒアリングをしていたときからこの4人の方が良いなと少し思っていたので。自己主張があり、自分の軸がハッキリとした方達でしたね。4人と話し合いを重ね、彼女たちの個人的な好きを取り入れたデザインにブラッシュアップしてもらいました」

・・・

最終的に仕上がったのは最初の打ち合わせから半年後だったそうです。

誰でも表現できる時代だから、誰にも真似できないデザインを

―紆余曲折を経て、最終的にどうデザインに落とし込まれたんでしょうか?

「ターゲットを絞ったあと、さらにコアターゲットのイメージを掘り下げて出てきた要素を追加していきました。あと、このあたりで容器での表現が難しいかもしれないという話も浮上してきましたよね」(堀田)


「そうですね。追加の要望として、ビビットな世界観のムードボードをいただいたんです。SNSでの自己表現=映えの要素というところから。でも、でカラフルなものを容器で表現するのって技術的にかなり難しいんですよね。色が綺麗に出なかったりとか。それで、化粧箱のほうで表現する方向性が決まりました」(田川)

「それは、ちょうどコアターゲットの方たちの生活にもハマっていたんです。彼女たちは自由に自己表現を楽しみ、SNS映えという華やかな感覚をもつ一方で、普段は意外とミニマルでシンプルな暮らしをしている。そこからヒントを得て、外側のパッケージはビビットに、中身の容器はシンプルにする提案をさせてもらいました」(田川)

「この提案に、我々もすごくしっくりきたんです。これまでのミルボンは容器のデザインを主軸に進めるパターンが多かったので、化粧箱が主役になるのはかなり珍しくて。最終的なデザインの提案をいただいたとき、満場一致で『これだ!』って声を上げましたね」(堀田)

―ターゲットの生活も表現されていたとは……。デザインで特にこだわった点はありますか?

「そうですね。デザインをする際は、他のラインナップと並んだときにキマるように考えるなど、ブランドの雰囲気やトンマナを大切にします。でも今回は一般的なターゲット像とは少し違っていたため、それよりも、掘り下げて見えてきた彼女たちの生活や価値観を取り入れるように作っていきました」(田川)

「田川さんの作られるデザイン、本当にすばらしいです。…… どうやったらこんなグラフィックが作れるんでしょう?」(堀田)

「それでいうと、ひとつこだわった点があって……」

ミルボンがまとめてくださったコンセプトやイメージが大元にある上に、デザインに関してうまく言語化できないのですがと謙遜しつつ、口を開いた田川さん。

「今って、アートワークを作るソフトがすごく便利になってきていて、デザインしようと思えば誰でもできるんです。だからパッと見で、これは真似できない、どうやって作ったんだろう?と思わせるデザインにしたいなと思っていました」

「新しいことに柔軟な世代がターゲットなので、今までに見たことがないものを表現して、作り手も新しいことにチャレンジしたいという個人的な思いがありました(笑)。ソーシャルネイティブ世代がインスタで自己表現をするときの気持ちと同じような感覚なのかも」

ターゲットであるソーシャルネイティブ世代の自由さ、真っ直ぐさに、負けてられないと言わんばかりの熱。

それでいて、彼女たちの裏側にある生活までも汲み取り、もちろんミルボンの描いたコンセプトも忠実に表現しています。

多様化する時代で自分らしさを貫いていく。その手助けをDOORで。

最後に、DOORがどんなブランドになっていってほしいかを伺いました。

「コアターゲットの18歳前後の方々と話すなかで、自分らしさをすごく大事にしているなと思ったんです。インスタグラムも、自分の写真集や世界観集として使っているなと。DOORは、そんな自分らしさをプラスするための一つの手段であり、新しい自分を体感してもらえるようなブランドになって欲しいなと思います」(堀田)

「今回、新しい世代の新しい価値観に触れることがすごく面白かったです。例えば、ハイブランドに対する興味が薄かったり、自己主張がしっかりできたり、自己プロデュースが上手だったり。そんな新しい世代が、“自分らしいって素敵だよね” って思えるように。その一端を担う存在になって欲しいです」(田川)

また、堀田さんは、「おしゃれ感度が高いソーシャルネイティブ世代でも、髪のスタイリングはやり方がわからないという方が意外と多かった」といいます。

そんな彼女たちが、自由に髪を変えることで、新しい自分らしさを発見していける。そんなブランドになっていってほしいよね。

そう笑顔で語る、パッケージデザインを担当されたおふたりでした。


▼DOORに関する
研究員の開発秘話はこちら

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