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髪と頭皮を科学する!異色の研究者、伊藤廉の研究室へようこそ|vol.1 “美髪”ってなに? 日々のケアで美髪をつくろう!

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カラーやパーマのダメージ、伸びるにつれ傷んでいく髪、老化によるうねりや薄毛、白髪……すべて仕方のないこと、抗いようのないことだと思っていませんか?
実は、その髪悩みのどれもが、ケア次第で改善できたり進行を遅らせられたりする可能性があるんです!
この連載では、髪と頭皮研究の第一人者として、メディアにも多数出演しているミルボン研究員・伊藤廉さんを先生に迎え、数々の髪悩みを解明していく研究室を開講!
第一回は、これまで感覚的だった「髪の美しさ」を科学的な視点から読み解いていきます。

先生:伊藤 廉(いとう・れん)
大学卒業後、大学や国の研究機関での研究職を経て、2009年、ミルボン研究員に。基礎研究グループの責任者として、毛髪だけでなく安全性やヘルスケアなど新領域の研究にも取り組んでいる。東北大学特任准教授や社外研究員を兼務しながら、髪の専門家として全国を飛び回るすごい人。

「美髪」とは?

ここ数年で一気に耳にするようになった「髪質改善」というワード。セルフィーや個人でのSNSアップが当たり前になり、見た目の美しさへの意識レベルはどんどん上がっています。
さらにトレンドは、フィルター加工で盛る時代から、無加工でも盛れる自然な美しさを追い求める時代へと移り変わりつつあります。

そんなニーズに応えるように、ミルボンは数年前から“髪の見た目の美しさ”に着目。感覚的だった「美しさ」を客観的に評価し、ケアできるよう研究を続けています。

─髪の客観的な評価方法として「美髪度」という独自の評価を採用されているそうですね。詳しく教えてください!

実際に研究員が目視で毛髪を判別し、地道に蓄積したデータベースをもとに、『美髪度』という評価方法を確立しました。当初は、機械で計測して美しさを数値化する道を考えたのですが、人間が「綺麗な髪だな」と判断する感覚は、色の均一性・中間から毛先へのまとまり・ツヤなどさまざまな要素から成り立っているので、機械での完全再現は難しかったんです。

多数の写真を床に置き、研究員が目視で分類。機械よりもリアルな感覚の評価に

このような実験の結果、面白いことに、正規分布になったんです。
正規分布とは、左右対称の山の形をした、統計学上で代表的な分布です。ちょうど真ん中くらいの人が最も多く、それより高い人と低い人が同じくらいずついる状態ですね。

─「美しさ」の価値観は、トレンドとともに移り変わるような気もします。

そうだと思います。とはいえ、平安時代でも簾(すだれ)から出ている髪の美しさを見て奥に居る女性の美しさを想像した、といった話が残っていますし、江戸時代にも米のとぎ汁でヘアケアする文化があったそうなので、変容しながらも“美髪”という要素が大事にされ続けていくことは間違いないでしょう。
「美髪度」における“美”を言い換えるなら、“healthy(ヘルシー)”が近いかもしれません。健康的な髪に見えるかどうかは、評価時にもとても気にしていますね。

─「肌年齢」はよく聞きますが、「髪年齢」もあるのでしょうか?

加齢が見た目に影響を与える面はありますが、高い評価の髪でも、50代や60代の方もいらっしゃいます。「〇〇歳くらいの髪」ではなく、あくまで美しさで段階分けしていますね。
美髪の人の消費者行動を見てみると、どれだけヘアケアにお金をかけているかではなく、どれだけ丁寧にヘアケアをしているか、こまめに美容室に来店しているかと強く関連していることが分かりました。

─美髪について、遺伝的な要因はありますか?

遺伝的な要因もあれば、後天的な美容行動で変えられる面もあります。僕はよく「目」にたとえていますね。両親の目が悪いと遺伝で子どもの目も悪くなりやすいと言われますが、携帯やコンピューターをよくやっている子はもっと早く目が悪くなっていきます。それと同じで、ダメージを与えないように気をつけたり、しっかりケアをしたりするなどの行動習慣がきちんと根付けば、未来は変わっていくと思います。

─意識が大切ですね! では、美髪度のセルフチェックはできますか?

セルフチェックはなかなか難しいと思います。美容室で美容師さんに見てもらって、お話を聞くことをオススメします!
ネットには情報があふれていますが、自分にとっても正しいかは分かりません。美容師さんはプロの感覚と積み重ねた経験で髪の毛を見てくれます。ひとりひとりに合った現時点での髪の状態を見て、最適な判断をすることが重要です。

また、ミルボンでも将来的に美髪度の測定が簡単に行えるように、さまざまな取り組みを進めています。全国の美容室に協力を依頼して頭髪データを収集したり、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンでは「2050年(25年後)の自分」が生成される体験ブースに髪の健康といった側面で参画したり、美髪に対して科学的により接近すべく、日々チャレンジを続けています。

現状、目視での髪のセルフチェックは難しいので、基本的にはたくさんの経験を持っている美容師さんに判断してもらいましょう!

老化の初期サイン!?頭皮もチェックを

─髪の状態が気になったらプロに相談ですね! 他に気にかけることはありますか?

もうひとつ、見逃してはいけないのが頭皮の状態です。頭皮は毛髪以上に自分で状態を判断することが難しいので、要注意です。

この図を見てください。下にいけばいくほど頭皮が赤い(慢性炎症が見られる)人の写真です。頭皮が青白い人に比べて、赤い人はどの年代であっても髪の毛が細く、本数が少なく、白髪が多い傾向が見られます。つまり、頭皮の赤み(慢性炎症)と薄毛や白髪には相関があるというデータなんです。

この状態を放っておいてしまった例があります。とある女性の当時と5年後の写真なのですが、ぱっと見では後ろ姿に変化はありません。しかし、5年後の頭頂部の分け目を比べると……抜け毛の範囲が広がってしまっています。きっとご本人や周りの人も気づかないうちに進行してしまったのでしょう。こうなると対処もしにくいです。

20代、30代でも炎症を起こして頭皮が赤くなっている方はいらっしゃいます。将来の美髪度に影響しますし、放置は危険なので、早めに髪のプロに見てもらいましょう!

─若い人でも頭皮に抜け毛の兆候があるなんて! 20代はまだケアしなくても平気だと思っていました。

20代でもエイジングの兆候が出ている方は多いというお話は、美容師さんからも聞きます。若い頃からコツコツとケアをしていくことが大事です。実は、僕自身も若い頃に抜け毛で悩んでいました

大学時代、生え際の後退と頭皮のニオイが気になっていました。僕は関西の大学に通っていて、友人とお互いにイジり合えるような環境だったので、友人からは「薄くないか?」と言われたり(笑) 
ところがミルボンに入社して、自分のこれまでの洗い方ではちゃんと頭皮が洗えていなかったことに気付いたんです。社内研修で正しい洗い方を教わって、初めて正解を知りました。

今では、数十年ぶりに大学時代の友人に会うと、「植毛した?」と髪を引っ張られるくらいに改善しましたね(笑)
美容師さんにシャンプーの仕方を教わったり、正しい力加減で洗いやすいよう設計されている頭皮用のブラシを活用したりするのもいいと思います!

─頭皮のニオイも気にならなくなりましたか?

同時に改善しましたね。実はニオイの研究もやったことがあります。約300人の頭皮のニオイを嗅いで、5段階レベルでどのくらいニオったかをチェックする実験をしました。
その結果、「自分の頭皮のニオイが気になる」と回答した人のグラフと、実際にニオうと判定された人の分布は同じような曲線を描きました。つまり、自分で“ニオうかも……”と思っている人は、他人が嗅いでもニオっている可能性が高いんです。ちょっとでも気になる人は、美容師さんに相談してみたほうがいいかもしれません。

─抜け毛や薄毛は皮膚科に頼るイメージがありますが、自覚症状があまりない段階では大袈裟かも……と思ってしまったりもします。その手前の予防の領域を美容師さんが担ってくれるんですね。

AGAなどの病気になるとお医者さんの領域ですが、日々のケアについては美容師さんたちがエキスパートです。人間なので老化はつきものですが、なにかの症状を大きく感じてから慌ててお医者さんに駆け込むのではなく、小さな違和感に気づき、日々のケアで少しずつ対処していくことが美髪の秘訣です。髪も頭皮も未病発想でケアを心掛けてほしいですね。

次回の連載テーマは…?

自分の印象に大きく影響する髪の美しさ。ちょっとした違和感を大切にしてヘアケアや生活習慣に気をつけると、未来の美髪につながることが学べました。

次回は、「薄毛と白髪は遺伝?諦めるしかないの?!」をお届け!
気になる二大老化サイン、薄毛と白髪について深掘りしていきます。お楽しみに!

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そのウワサ、本当? シャンプー成分にまつわるモヤモヤを洗い流そう!〈ミルボン実験室①〉| Find Your Beauty MAGAZINE (milbon.co.jp)

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