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そのウワサ、本当? シャンプー成分にまつわるモヤモヤを洗い流そう! 〈ミルボン実験室①〉

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 シャンプーのこんなウワサを、どこかで目にしたことはありませんか?

「石油系シャンプーは危険」
「植物性や、天然成分のほうが優しくて安全」
「安全性や良し悪しは、裏面の全成分表示を見ればわかる」

 自分の髪に合ったシャンプーを選びたい! そんな時に頼りになるのは、髪のプロである美容師さんたち。
 ところが、ネットや口コミで広まった情報で不安を感じたり、思うようなシャンプー選びができずモヤモヤした気持ちを抱えたりしている人も多い様子。シャンプーに含まれている特定の成分を取り上げて危険性を訴える、ドキッとするような表現も多く見かけますが、実は「この成分が入っているから良い、悪い」と単純に判断することはできないんだそう。

 数々のモヤモヤが生まれてしまっているシャンプー、実際のところどうなの? プロである研究員さんに突撃取材してきました!

ミルボン研究員Y.M. 10年以上シャンプーや界面活性剤の研究に取り組む

シャンプーの一番の役割は“頭皮と髪の洗浄”

 まずは原点に立ち返って、こんな質問から。

─そもそも、シャンプーの役割って?
 頭皮・髪の皮脂や汗といった汚れを取り、清潔に保つこと(=洗浄)です。頭皮や髪を清潔にしておくことは、ニオイやべたつきの解消だけでなく、健康的な毛髪を育む環境づくりとしても望ましいです。その役割を果たすうえで重要なのが、洗浄成分(界面活性剤)です。さらに、頭皮や髪を摩擦から守りながら洗うためには泡をちゃんと立てることが大事です。キメ細かい泡は、髪の絡まりを防ぎながら汚れを落としてくれます。

シャンプーは、皮脂腺から分泌された皮脂やスタイリング剤に含まれる油分のような、水だけでは簡単に取り除くことができない汚れを、アニオン性界面活性剤などで洗い落とします。

─いっそお湯シャンのほうがいいという情報もありますが……?
 洗髪という行為自体が髪を傷めているんじゃないか、シャンプーの成分が髪や身体に悪いんじゃないか……と不安になっているのかもしれませんね。化学的な成分名を聞くと身構えてしまいがちですが、お湯だけでは落としきれない汚れもあるので、頭皮と髪を健やかに保つためにはシャンプーでの洗浄が大切です。
 「予洗い」といって1分半ほど時間をかけ、38℃程度のぬるま湯で事前にしっかり流すことは、その後のシャンプーの泡立ちを助けます。モコモコの泡で洗うことで、髪が絡んで切れてしまわないように、なめらかに洗えるのでおすすめですよ。

─洗浄のために必要なアイテムだということが分かりました! では、シャンプーはどんな成分でできているのでしょうか。
 水と洗浄成分である界面活性剤、保護成分である水溶性高分子などが主に配合されています。また、植物オイルや加水分解ケラチンといった毛髪補修成分や香りの成分、品質を保つためのpHの調整剤、防腐剤なども入っています。
 特にシャンプーの機能にとって重要なのは、 界面活性剤と呼ばれる洗浄成分です。泡立てて、水と油汚れを馴染ませ、汚れを落とすといった機能を持つ大事な成分ですね。

シャンプーに含まれる構成成分のイメージ

─洗浄成分にもいろいろあるみたいですが、種類や特徴は?
 よく聞く区分は「アミノ酸系」「せっけん系」「硫酸系」ですね。これは界面活性剤の化学構造をもとに判断されているようなのですが、この分類には疑問に感じるところも。
 例えば、ひとつの成分でも着目する構造によって分類が変わりますし、同じ「○○系」というくくりの中にもたくさんの界面活性剤があり、それぞれの性質や得意不得意が異なります。
 さらに、洗浄力、すすぎやすさ、保湿性など、すべてが100点満点の成分はなく、複数の成分をうまく組み合わせていくのが開発者の腕の見せどころ。
 ところが、市場に出るとその中の特定の成分が取り上げられ、アミノ酸系は優しい、硫酸系は危険、などとジャッジされてしまう場合があります。「○○系だから」のように、たった一つの界面活性剤の種類で判断するのではなく、そのシャンプーが全体として髪をどのような仕上がりにしてくれるのかで決めるのがいいですね。

シャンプーは数々の安全性試験をクリアして製品化される

─では、安全性についてお伺いします。「◯◯という成分は危険」「◯◯フリーだから安全」という情報をよく目にしますが、実際どうなのでしょう?
 ミルボンでは大前提として、すべての原料の安全性を確認したうえで製品に配合し、販売しています。さらに、様々な試験を重ねて製品の安全性を担保しています。
 よくネットで悪い成分とされている「ラウレス硫酸ナトリウム」「シリコーン」なども、我々は悪い成分だとは捉えていません。
 例えばラウレス硫酸ナトリウムは、比較的汚れを落とす力が強いことから「刺激性が強い」、というイメージがあるようですが、シャンプーに使われてきた歴史も長く、実績のある洗浄成分です。他の洗浄成分よりも少ない配合量で泡立ちや泡持ちが良く使いやすくなるため、その分毛髪補修成分なども入れやすくなります。
 また、シャンプーに配合したシリコーンが「毛穴を詰まらせる」などと言われるようですが、そのような事実はありません。シリコーンを配合すると格段に髪のなめらかさが上がり、指通りが良くなるので、髪同士が絡んだり、髪を引っ張ってしまったりすることによるダメージを防いでくれます。

─植物由来、天然由来の成分のほうが安全というのは本当ですか?
 そういった表現に安心感を覚える方はいるかもしれませんが、安全・危険の尺度とは全くの別問題です。「これが入っていないから安全、入っていたら危険」と一概に判断することはできません。
 例えば漆(うるし)は植物ですが、肌に触れるとかぶれてしまう人もいますよね。食物アレルギーがある方もいますし、食べて問題がなくても皮膚に塗るとアレルギーが出る場合もあるので、口に入れても苦くないから、食べ物だから安全というのも正しくありません。
 植物由来、天然由来というのは安全性とは結びついていないということですね。

全成分表示を見ても、シャンプーは語れない!

─判断基準といえば、シャンプーボトル裏面の全成分表示を見れば良し悪しが分かるとも聞いたのですが……
 残念ながら、それは難しいと思います。全成分表示を見ただけでは、どんなシャンプーかを判断することはできません。
 例えば、他社製品の全成分表示を見たところで、正直シャンプーを作る専門家であっても絶対に同じものは作れません。大まかな配合量は予想できますが、中には0.0001%ほどのごくごく微量な違いが大きく影響する成分もありますし、全成分表示のルール上は同じ成分名でも、厳密にはもっと種類が分かれている成分も存在します。仮に全成分表示が全く同じ製品があったとしても、使ってみると全然違う!なんてことも。
 もっと言えば、全成分表示には記載されない、酸性やアルカリ性といったpHもシャンプーの機能には大きく影響するので、完全に“配合の妙”ですね。大きさの決まったコップの中に何を入れるのか、ベストなバランスを各メーカーが探っています。

pHが違う条件での各界面活性剤の泡立ちの様子
A, B, Cそれぞれ異なる界面活性剤。AはpHによる変化が小さく、
BはpHが低い方が泡立ちがよく、CはpHが高い方が泡立ちがよい
pHが違う条件で、同じ界面活性剤を使ったモデル汚れの洗浄テスト
界面活性剤の種類と濃度を揃えても、pHが違うだけで洗浄性が変わる

─よく、高級なアイテムと安価なアイテムの成分表示を見比べて、中身は一緒! みたいなのもありますが……?
 たとえ全成分表示が順番まですべて同じだったとしても、実際の配合量が同じとは限りません。加えて製造工程、つまり作り方にもそれぞれの企業のノウハウがあります。原材料が同じ卵でも、炒り卵と目玉焼きでは全く仕上がりが違うのと同じです。

─ちなみに、サロン専売品と、ドラッグストアで売っている市販品の違いは?
 一番の違いは製品設計の狙いです。市販品は、総合風邪薬のように、どんな人にも使ってもらえるようなオーソドックスな設計になっています。サロン専売品は、お医者さんに実際に自分の症状を診てもらった上で調剤薬局で処方される薬のようなイメージ。美容師さんが、その人の髪質や理想を踏まえぴったり合うシャンプーを選んでくれるので、細分化されてちょっと尖った設計のものが多いですね。

自分の使用感で判断基準を持とう

─では、逆にシャンプーが合っていないという目安、使用を控えたほうがいい目安はありますか?
 まずは、かゆみが出る場合はその人の肌に合っていないと考えられます。安全性を確認した商品でも、100%すべての人に合うわけではありません。シャンプー後は襟足までしっかり洗い流すようにし、それでも合わなければ使用を中止して、ひどい場合は病院に行きましょう。
 また、髪がひどく絡まること。どんなにいい補修成分が入っていても、きしんで絡まるようなシャンプーや、乱暴な洗い方は、髪の毛にダメージを与えるのでNGです。
 洗いあがりが油っぽくなってしまう場合は、シャンプーでしっかり洗えているか、トリートメントが髪質に対して重すぎるタイプのものではないかも確認しましょう。ちなみに、意外と知られていないこととしては、同じトリートメントでも、その前に使用するシャンプーによって仕上がりは全然違います。メーカーとしては、ライン使いしていただくことで、そのアイテムが目指す仕上がりを実感していただけるような作りにしています。

─「◯◯フリー」や「全成分表示」ではジャッジできないシャンプー。素人である消費者はいったい何を基に選んでいけばいいのでしょう?
 自身の髪質、悩み、こういう風になりたいというのを理解することが第一歩です。成分表示を基にした消去法ではなく、自分はこうなりたいからこのシャンプーを選ぶのだという判断基準があれば、自分に合ったシャンプーを選んでいけるはずです。
 ただ、自己判断はなかなか難しいことなので、美容師さんに頭皮や髪の状態をきちんと見てもらって、自分の希望を伝えつつ、最適なものを選んでもらうのが一番です。美容師さんは数多くの方の頭皮と髪を見てきた経験に基づいてアドバイスをしてくれますから、そういう点でも頼れる存在ですね。

自分の髪を知り、ポジティブに選ぼう!

 この成分は危険、悪影響……耳慣れないシャンプーの成分に対するネガティブな印象が一人歩きをして、「油を摂ったら太るからダメ!」「塩を使うと高血圧になるからダメ!」というのと同じ「白か黒か!」のようなお話になってしまっていたんですね。実際には適量の油も塩も体にとって欠かせないように、どれもシャンプーには必要な成分で、適切な量が配合されており、充分な安全性も確認されていることが分かりました。
 お洋服選びやメイクアップのように、なりたい自分をイメージしながら前向きにシャンプーを選ぶことができれば、ヘアケアもぐっと楽しくなりそう。カットやカラーの際に、プロである美容師さんに相談してみるのがおすすめですよ!

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