INTERVIEW

「私と美容師の素敵な関係」- vol.1

INTERVIEW | 2017.06.19

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「私の好きなものを知っているから、蝶野さんの提案はいつも、信じられる」

JR新宿駅から程近いビルの10F。街の喧騒を見下ろすような場所に『AFLOAT RUVUA』はある。週4日はこの店で、週1日は渋谷の『AFLOAT WORLD』でハサミを持つ、トップスタイリストの蝶野健太さん。彼の顧客として、5年ほど通い続けるアキさんに話を聞いた。

「初めて蝶野さんにお会いしたのは、主人の海外転勤が終わって、帰国したばかりのとき。通う美容室を探していたけれど、なかなかここだと思えるお店が見つからないタイミングでした。AFLOAT青山店のWebサイトで、蝶野さんの『絶対に、かわいい大人の女性にします』といったコメントに惹かれて……この方にお願いしてみたいなと思ったんです」
蝶野さんが担当したスタイリングの一覧を見て、その思いは確信に変わり始める。若すぎず、落ち着いた大人の空気を醸し出しているモデルたち。「なんの前情報もなかったから、どのスタイリストさんを選んでも不思議じゃなかったんだけど……やっぱり、蝶野さんの姿勢が頼もしく感じられたんだと思います」と、振り返る。

最初のオーダーは何だっただろうか? 当時のカルテを手に、2人が楽しそうに想い出をたどる。伸びた髪の根元が気になって、カット・カラー・トリートメントを頼んだらしい。
「それまでは小さめの美容室に行っていたので、最初から最後まで1人の方が担当してくれていました。でも、AFLOATには大きなお店ならではの良さがある。さまざまな方が得意分野で関わってくれるのは面白かったし、自分ものびのびと時間を過ごすことができるから、居心地がよかったんですよね。もちろん、仕上がりも大満足。青山店を選んだはずなのに、蝶野さんが新宿店に異動になったら、結局そのままついてきちゃいました」

長い時を刻みながら伸ばし続けてなお、アキさんの髪はつややかだ。縮毛矯正やブリーチをしている傷みが見えないのは、こまめなメンテナンスのなせるわざだろう。
「長い髪が好きなんだけど、20代や30代の“かわいらしさ”をずっと追いかけているおばさんになってしまうのが怖いんです。だから、どうしても不安は大きくて……でも、蝶野さんになら、お任せできる。私の要望を踏まえて、色や形が若作りにならないように、いつも的確なアドバイスをしてくれるから」
いま、彼女は毛先をブリーチして、かなり明るいグラデーションカラーを入れている。もともと明るい色が好きで、すこし冒険もしてみたかったから、はじめは全頭のカラーリングを考えていた。でも、彼女の雰囲気や髪の負担などを考えて、蝶野さんがグラデーションを提案したのだという。

お客様の言いなりになって、たとえ髪が傷んでも適当にあしらうのは簡単だ。だけど本当に大切なのは、お客様が求める髪型を長く楽しんでもらえるように、総合的なケアを提供すること。「ブリーチも入れたグラデーションなんて最初は想像もつかなかった」と言う彼女は、いま、とても幸せそうに毛先をなでている。

「昔からずっとロングヘアだったけれど、今度は鎖骨あたりまで切ってみようかなと考えていて……そういうイメージチェンジをするなら、蝶野さんにお願いしたいって思います。こないだ相談してみたとき、まずはいままでのイメージに近い、外ハネの軽いボブを提案してくれたんです。でも『年相応の落ち着いた雰囲気にするなら?』と尋ねたら、すぐにエレガントな内巻きを勧めてくれました。それも、いつかやってみたいなって思う」

担当制といっても、一回の施術時間はそう長くない。カラーはアシスタントが塗っているし、全体をカットしても15分あれば終わってしまう。引っ越しのことや家族のことなど、いつも他愛ない話をしているだけ。それなのに、これほどまで信頼関係が築けるのは、なぜだろう。

「私も仲良くしてもらっているけれど、蝶野さんは、いろんなお客様に愛されている方なんですよね。それから、私たちににこにこしてくれるのと同じように、スタッフさんともにこやかにお話されている。チームの雰囲気がいいのも、素敵だなと思っています」
そんな言葉を聞いて、蝶野さんが「スタッフみんなと仲良くしてくださるから」と、照れる。お互いをどう思っているかなんて、普段はもちろん聞く機会がない。すこし面映おもはゆいけれど、それ以上にうれしそうだ。

「蝶野さんは“髪の毛の主治医さん”ってかんじ。この季節はこういう悩みが出てくるとか、こういうことをやりたくなるタイミングだとか、私のルーティンを把握してくれています。だから、私のやりたいことと髪のコンディションを踏まえて、最適な方法を考えられるんですよね。会話の合間にぽろっと言ったリクエストも覚えていて、次回の施術で微調整してくれたりする。若いうちはある意味、どんな美容室に行ってもさほど差は感じられませんでした。でも、年齢を重ねてきたときこそ、本当に合う美容師さんが必要。ときどきお友達に『そのヘアスタイル素敵ね』なんて言われると、蝶野さんのおかげだなって、うれしくなるんです」

アキさんは昔、ベテランの美容師に切ってもらうことが多かった。でも数年前、まだ30代になったばかりの蝶野さんに出会って、美容師との関わり方が変わってきたという。蝶野さんがどんどん昇格して、カットやカラーの価格が上がっていくのも、悪くない。昇格しておめでとう、これからもがんばってねと、心から言える。信頼できるだけでなく、思わず応援したくなってしまう美容師は、初めてだ。
「これからもっと年を重ねれば、好みも変わるし、髪の悩みは増えていくはず。でも蝶野さんには、そのなかでいつもふさわしい提案をしてほしいし、してもらえると思っています。私の好きなものをわかってくれているから、信じられるんです」

蝶野さんはいつだって、アキさんが好きなもののかけらを集めているようだ。洋服やネイル、アクセサリ-。季節の変わり目のちょっとした変化も、見逃さない。お客様の好きなものを知ることが、きめ細やかな提案につながるとわかっている。先入観や決めつけは、要らない。お客様がそのとき興味のあることや見ているものをキャッチして、プラスαの提案をかたちにできたら――蝶野さんは「そうやって僕は彼女を、いつも一番かわいく見える髪型にしたいんです」と、まっすぐなまなざしで言った。

蝶野健太 AFLOAT Top Stylist

山野美容芸術短期大学を卒業し、afloatへ入社。サロンワークを中心に雑誌、Webの撮影、ヘアメイク、セミナー講師など多方面で活躍中。ブログなどのSNSを活用し、常に最新のスタイルを提案している。『一年間を通してお客様のヘアライフをより良い物に!!』をモットーに再現性の高いスタイル提案を行っています。

菅原さくら ライター

1987年の早生まれ。ライター、編集、雑誌『走るひと』副編集長など。人となりに焦点を当てたインタビューや対談が得意。雑誌やWebメディア、広告・採用、コピー、パンフレットなどさまざまなものを書きます。

CREDITS
写真:ミネシンゴ
取材・執筆:菅原さくら
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