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髪と頭皮を科学する!異色の研究者、伊藤廉の研究室へようこそ|vol.2 薄毛と白髪は遺伝? 諦めるしかないの!?
カラーやパーマのダメージ、伸びるにつれ傷んでいく髪、老化によるうねりや薄毛、白髪……すべて仕方のないこと、抗いようのないことだと思っていませんか?
実は、その髪悩みのどれもが、ケア次第で改善できたり進行を遅らせられたりする可能性があるんです!
この連載では、髪と頭皮研究の第一人者として、メディアにも多数出演しているミルボン研究員・伊藤廉さんを先生に迎え、数々の髪悩みを解明していく研究室を開講!
第二回は、気になる“薄毛や“白髪”と遺伝”の因果関係について深掘りしていきます。

先生:伊藤 廉(いとう・れん)
大学卒業後、大学や国の研究機関での研究職を経て、2009年、ミルボン研究員に。基礎研究グループの責任者として、毛髪だけでなく安全性やヘルスケアなど新領域の研究にも取り組んでいる。東北大学特任准教授や社外研究員を兼務しながら、髪の専門家として全国を飛び回るすごい人。
「薄毛」も「白髪」もケア次第!?
「親の薄毛や白髪は遺伝する」と思っている人も多いのではないでしょうか。また、年齢を重ねるにつれ髪が薄く、白くなってしまうことには抗えない……というイメージもありますよね。ところが、廉先生曰く、薄毛や白髪も後天的な美容行動で予防やケアができるそう。
詳しく聞いていきましょう!

─前回は、「美髪」は遺伝だけではなく、後天的な美容行動でも目指せるというお話を伺いました。薄毛や白髪もケア次第で予防できるのでしょうか?

はい、遺伝がすべてではありません。諦めないでください!
まず薄毛についてお話しましょう。複数の研究報告があり、研究対象となった国や地域によっても違うのですが、例えばアジア人男性を対象とした研究では約50%の人が壮年性脱毛症(加齢による脱毛症)の遺伝子を持っているとされています。しかしながら、統計学的に見ると、薄毛の症状がある人は約30%。遺伝的な要素を持つ全員が薄毛になるわけではないことが分かります。また、ストレスや日々の洗髪の仕方など、後天的な理由で薄毛になる人もいます。ポニーテールやジャンクフードによる薄毛についての論文も存在します。
つまり、薄毛になりやすい遺伝子を保有していても発現しない場合があり、反対に、遺伝的には薄毛になりにくくても後天的な生活習慣で薄毛になってしまう可能性もあるということ。ケアや過ごし方が大切です!


白髪に関しても、薄毛とはメカニズムこそ違うものの、頭皮ケアが重要という点は共通しています。ミルボンでは、初期の白髪化を抑制する研究も行っています。
【白髪の予防と抑制】白髪には早めの頭皮ケアが有効?! ~ミルボンが徹底研究する白髪のひみつ~| Find Your Beauty MAGAZINE (milbon.co.jp)
─頭皮の赤みが薄毛や白髪の初期サインというお話もありましたね。

スカルプフローラと呼ばれる頭皮の常在菌のバランスが崩れると、「慢性炎症=頭皮の赤み」に繋がることがミルボンの研究で分かっています。現在、頭皮のケア成分として着目している成分は、カミツレエキス、葛根エキス、タイムエキス、メロン果汁濃縮エキスなどです。
ほかにも、食べ物や休息の取り方、マッサージ習慣など、予防・改善できるチャンスはたくさんあります!
─薄毛や白髪は生え際や頭頂部に多いイメージがあるのですが、なぜでしょうか?

分け目部分は特に、紫外線や乾燥の影響を受けやすいと言われています。
また、筋肉を動かすと「活性酸素」が発生します。活性酸素は、体内でウイルスなどを撃退してくれる存在ではありますが、酸化させる力が強く、老化の原因にもなります。表情筋のなかでも生え際あたりや頭皮はあまり動かず血流が悪いので、活性酸素が溜まってしまいがち。そんな影響もあると言われています。
─血流を良くするマッサージも有効なケアということですね! ストレスとの関連性はいかがですか?

マウスに対する実験でも、ストレスを与えると色素を作る細胞などが減少してしまうことが分かっています。物語の描写のように「一夜にして白髪に!」ということはありませんが、徐々に薄毛や白髪を進行させるひとつの要因と言えますね。
白髪を抜くのはNG! 大敵は、頭皮の炎症

─若い人にも“慢性炎症”は起こるそうですね。頭皮における炎症状態について、詳しく教えてください!

ニキビのような痛む箇所がなくても、頭皮が赤ければ炎症状態と言えます。
痛みや痒みなどの自覚症状を伴う炎症がある場合は皮膚科の受診が必要ですが、そのような症状がない場合でも、「今の自分の頭皮状態はどうなっているのかな?」と少し興味をもっていただき、気軽に美容師さんに相談してみることで、思いがけない気付きや、未来の美しい髪を育むためのケアのヒントをもらえるかもしれません。
洗髪の仕方や乾かし方など、ご自宅での頭皮ケア方法を見直すことでコンディションが整うこともありますので、ぜひ美容師さんに相談してみてください!
炎症は伝播するので、早めの対策がカギです。
─ついやりたくなりがちな「白髪を見つけたら抜く」という行為は、刺激になってしまって良くないのでしょうか?

NG行動です! 毛髪は一つの毛穴から何本も生えているので、無理やり一本抜いたら他の毛髪も巻き込むダメージになります。自ら炎症を作ることになるので、見つけた白髪が気になる場合はハサミで切りましょう。
そもそも、メラニン色素を作れなかったり、メラニン色素の運搬能力が低下していたりする毛を抜いても、また白髪が生えてくるだけなんです。カミツレエキス、葛根エキス、タイムエキス、メロン果汁濃縮エキスなどに着目した白髪研究は、まさにメラニン色素の輸送を改善することにアプローチしたもの。抜くのではなく、根本的なアプローチが必要です。

─では最後に、最新の毛髪科学に携わる廉先生から見た、これからのエイジングケアとは?

未来に向けて、まだまだ可能性は広がっています。
私たちの最新技術では、すでにスカルプフローラ(頭皮の常在菌)を調べることで、その人が薄毛や白髪になるリスクを見極めるところまで到達しています。ただし、こうした技術を一般に広く普及させるにはコストの壁があるのも事実です。
将来的には、より精度の高い頭皮チェックやパーソナルな提案、研究成果を活かした高機能製品がどんどん誕生していくはずです。ぜひ、期待していてください!
次回の連載テーマは…?
多くの人が遺伝だと思って諦めていたであろう薄毛と白髪。最新の研究では、解決の兆しが見えてきています。
次回は、「髪と頭皮老化のサイン・見極め方」をお届け!
印象を左右する髪、そして美髪や薄毛・白髪ケアにも重要な頭皮環境……実際にどんな老化サインがあるのか、詳しく聞いていきます。お楽しみに!

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