
LAB
ヘアアイロン前にオイルを使うと髪が“天ぷら”になるって本当?!〈ミルボン実験室⑥〉
日々トレンドが移り変わるなかでも、巻き髪スタイルは大定番のひとつ。また、最近は質感への関心も高まり、髪の毛にツヤやまとまりを与えるヘアオイルもヘアケアアイテムとして人気になりました。
巻き髪スタイルに必須なヘアアイロンは、髪の形状を整える際に150〜180℃程度の高温を要する美容器具。そんなヘアアイロンとヘアオイルの両方をデイリー使いする人が増えたためか、巷から聞こえはじめたこんなウワサ……。
「オイルがついている髪の毛にヘアアイロンを使うと、“天ぷら”のように髪の毛が高温になって焦げてしまう」!?
はたして本当なのでしょうか? 真相を確かめるべくミルボン中央研究所に潜入し、研究員さんに取材してきました!

ヘアアイロン前にオイルを使っても大丈夫?
─「ヘアアイロン前にオイルを塗布すると、天ぷらのように高温になりダメージが加速する」という都市伝説がささやかれていますが、そもそもヘアアイロンは毛髪にとってダメージをあたえるものなのでしょうか?
最近ではさまざまなヘアアイロンが開発されているので一概には言えませんが、一般的には“高温”が毛髪に負担をかけることは間違いありません。なかでも、180℃以上の高温を与えると熱によるダメージはより大きくなります。高温で毛髪のタンパク質が変性し、本来の性質から変わってしまうため、毛髪が硬くなるなど、不具合が生じてしまうんです。手触りやパサつき感などはその後のヘアケアでカバーもできますが、一度変性したタンパク質は、元には戻りません。

また、ヘアアイロンを使うとき、髪が絡まったまま巻き込んでしまったり、無理に引っ張ってしまったりすると、物理的なダメージが起こり、切れ毛や折れ毛の発生にもつながるため注意が必要です。
毛髪の表面にあるキューティクルが無理な力を受けて損傷すると、手触りやツヤ感が失われてしまいます。たとえば最近流行っているレイヤースタイルも、毛先が揃っていないため一部が折れた状態で巻いてしまいがち。コームなどで髪を整えてから、まっすぐな状態で綺麗に巻いていくのがポイントです。
─ヘアアイロン前にオイルをつけると温度が過剰に上がってダメージすると聞いたことがあるのですが、本当ですか?
まず、ヘアアイロンの温度が設定以上になることはありません。温度設定のないコンロや焚火なら火加減や風などの外部刺激により温度は上昇していく場合がありますが、温度をキチンと設定できるヘアアイロンであれば、過剰上昇はしません。
巻いた毛髪もプレートの温度に同調していくので、オイルをつけてもつけなくても設定した温度で巻かれることになります。

─オイルをつけているからといって設定以上の温度で巻かれることはないんですね。しかしながら、オイルをつけて巻いたら煙が出た! なんて話も聞きますが……
一口にオイルといっても、濡れた髪向けのアウトバストリートメントもあれば、スタイリング剤でもヘアアイロン用のアイテムや仕上げに使うアイテムなど、それぞれに用途があり、適した使用タイミングは異なります。濡れた髪を乾かすときに使うアウトバストリートメントは、熱で揮発する成分をたくさん含むものが多いため、ヘアアイロンの直前につけるとヘアアイロンの熱で揮発した成分が煙のように見えることがあるかもしれません。
また、ヘアアイロン前用のオイルを使用したとしても過剰につけて加熱すると水分や油分が揮発する量が増え、煙のように見える場合があります。使用方法を守り、過度につけなければ問題なくお使いいただけるはずです。

ヘアアイロン前用のオイルならダメージ軽減のメリットも!
先ほどヘアアイロンを使用すると熱ダメージ、物理的ダメージが生じるリスクがあるとお伝えしましたが、ヘアアイロン前用のオイルをつけて毛髪表面をコートすると、どちらのダメージからも保護してくれます。
物理的ダメージに対しては、オイルの粘性によって毛髪同士が寄り添い、ハネや乱れが整ってまっすぐになってくれるので、綺麗に巻き込みやすくなります。また、巻いたあとにヘアアイロンから毛髪を外すシーンではひっかかってしまいがちですが、オイルで滑りをよくすることでひっかかりにくくなり摩擦ダメージ軽減も期待できます。

もうひとつ大切なポイントが、熱ダメージ。高温のヘアアイロンを繰り返すと、毛髪の強度を低下させてしまう場合があるんです。
ヘアアイロン前に使用することで、強度の低下を抑制するヘアアイロン前用オイルをつくれないか? と研究を続け、実際に強度低下を抑制させる結果を得ることができました。

こちらのグラフは、髪の毛の強度を示したものです。毛髪はダメージするほど強度が下がり、引っ張ったときに切れやすくなる傾向があります。
日常のダメージを再現するためにシャンプーを行い、乾かしたあとにヘアアイロンでスタイリングを行うという一連の動作を約3ヶ月相当分繰り返して得られたデータです。ここで使ったのはヘアアイロン前用として用意した試験品のオイルですが、これを使用するとダメージを軽減できる傾向が確認できて、嬉しかったですね。
─ヘアアイロン用のオイルを塗る以外に、熱ダメージが軽減できる方法があれば知りたいです! 高温×短時間、低温×長時間、どちらのダメージが少ないのでしょうか?
一概には言えませんが、理想は低温×短時間。160℃以下の低温のほうがタンパク質への負担が少なく、ヘアカラーの色味が褪色しにくいというメリットもあります。
ヘアカラーの色落ちを防ぐ方法 サロンヘアカラー後の正しいアフターケアとは?〈ミルボン実験室④〉 | Find Your Beauty MAGAZINE


180℃設定、160℃設定のヘアアイロンでそれぞれ挟み込んでみると…

はっきりとした違いが!
低温だと形が作りにくかったり持ちが悪くなったりしてしまうのがデメリットですが、カール形成やスタイルキープを助けてくれるヘアアイロン前用のスタイリングアイテムを活用することも効果的です!
おわりに
適切なアイテムを使用すれば、むしろヘアアイロン前用のオイル使用は熱ダメージ、物理的ダメージから髪の毛を守ってくれる存在だということが分かりました。とはいえ専用品のオイルにもたくさんの種類があり、髪質も人それぞれ。そんな時に頼りになるのが、美容技術や知識を持つプロの美容師さんたちです。美容室で髪を美しく整えたあとは、ぜひ美容師さんに巻き髪ケア&スタイリングの相談もしてみてくださいね!

併せて読みたい記事
ヘアカラーの色落ちを防ぐ方法 サロンヘアカラー後の正しいアフターケアとは?〈ミルボン実験室④〉| Find Your Beauty MAGAZINE(milbon.co.jp)
トリートメント効果を高める秘密 美容師の美容技術とは?〈ミルボン実験室⑤〉| Find Your Beauty MAGAZINE(milbon.co.jp)