
LAB
髪の未来は“内部補修”で決まる。ミルボンが挑む、ケラチン研究最前線
「髪の毛の80%以上はケラチンでできている」。そんな話を聞いたことはありませんか?
毛髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質の一種。 しなやかさ、ハリ、そして形状までも左右し、美しい髪づくりには欠かせない成分です。
ミルボンでは見た目だけではなく髪の“内側から整える”ことの重要性に着目しながら、独自開発のケラチン原料による毛髪補修テクノロジーを研究してきました。
今回は、毛髪研究の第一線で活躍するミルボン研究員さんに、ケラチンの基礎知識から毛髪補修の最新テクノロジーまでお話を伺いました!

ケラチンって? 毛髪の“芯”をつくるキー成分
毛髪のダメージというと、キューティクル(表面のうろこ状の部分)が剥がれてしまうイメージがあるかもしれませんが、実は、毛髪のトラブルの多くは毛髪内部でも起きています。
爪や毛髪に含まれている“ケラチン”は、毛髪においては80%以上を占める中心的な成分。毛髪の強さやしなやかさを担う“髪の骨組み”のような存在で、毛髪の補修やエイジングケア※にも欠かすことができません。
※年齢に応じたお手入れのこと
健康な毛髪の内部はケラチンがしっかり詰まっており、毛髪の形状や弾力を保っています。しかしながら、ブリーチやヘアカラーなどのケミカルダメージや加齢に伴う生理的変化などにより、毛髪内部のケラチン状態が変化してしまいます。さらに、このようなケラチンは洗髪時に流出しやすく、毛髪内部に空洞ができてしまいます。
ここで重要なのが、毛髪の内部はとても複雑な構造になっているということ。
毛髪の構造を細かく見ていくと、表面のキューティクル、内側のコルテックス、さらにその中のマクロフィブリル、ミクロフィブリル……と、非常に複雑な構造になっています。

さらに、加齢に伴って変化したり、カラーやパーマなどによってさまざまな箇所が損傷を受けたりするため、それぞれの髪にとって的確な補修をする必要があるのです。
内部ダメージを“的確に補修”するには?
まず、毛髪内部のどの部分がどのように変化したのかによって、どのような成分を補給するのがよいかが変わります。
失われてしまったものと、なるべく同じものを補給してあげたい、という考え方です。
また、せっかく補修成分を入れても、すぐに流れ出てしまっては効果が持続しません。毛髪の内部にとどまり続ける「定着力」が必要不可欠でした。
毛髪内部の研究を進めるほど、ケラチン原料に対する理想は高まるばかり。
そこでミルボンは、毛髪内部に浸透して強く吸着し、洗髪を繰り返しても補修効果が持続するケラチン原料の開発に着手しました。
ミルボン初のオリジナル原料が“CMADK*1”という原料(以降、初代CMADK)です。これは毛髪を構成するケラチンタンパク質の中でもミクロフィブリル由来のケラチン成分からつくられた原料です。その後、初代CMADKの原料開発で培った原料化技術を応用し、マトリックス由来でSS結合(毛髪の強度や形状のために大切な結合のひとつ)が豊富に含まれる“MX-CMADK”、保湿効果に特化した“MOIST-CMADK”を開発しました。また、初代CMADKの進化として、ミクロフィブリル由来のケラチン成分からつくられた、より高い補修効果を発揮する3D-CMADKの開発にも成功しています。
このように、あらゆる毛髪に高効果を発揮できるようなケラチン原料を続々と開発しています。
ちなみによく聞かれるのですが、全てのCMADKは羊毛から作られています。
*1 カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチン

種類によって見た目も異なる
目に見えない毛髪の内部を“見る”技術と知見
ところで、極めて細い毛髪内部の緻密な構造は、一体どんな方法で確認できるのでしょうか?
ミルボンが活用しているのが、世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」。兵庫県にあるこの巨大施設では、毛髪の内部構造をナノレベルで観察することができます。
もちろん自社設備も豊富ですが、より精度の高い観察を行うために、外部機関であるSPring-8も活用しています。SPring-8は国の研究機関ではありますが、利用にあたっては厳しい審査があります。ミルボンは継続的にSPring-8を活用しており、高精度な毛髪観察を通じて様々なケア技術の開発に繋げています。

また、毛髪研究は、医療や皮膚科学といった領域に比べ、まだまだ未開拓の分野だといいます。
だからこそ、私たちミルボンが真剣に取り組む必要があると考えています。髪は直接的に命に関わるものではありませんが、その人の印象や気持ちに大きな影響を与えるもの。目に見えない毛髪のダメージ状態を解明し、それぞれの毛髪ごとに合わせたケアを行うことで、髪本来の美しさを与える。そんなヘアケアをこれからも届けていきたいです!
美容師さんとの連携で、ヘアケア効果を最大化
ミルボン研究のもう一つの強みは、実際に製品を扱うプロである美容師さんとの密な連携。
私たちは、ドラッグストアなどでの店頭販売ではなく、美容室で最適なアイテムを選んでいただくことを前提に研究を進めています。
どんなに毛髪観察技術を高めて素晴らしい製品を作ったとしても、それを使いこなせなければ意味がありません。美容室で美容師さんに毛髪の状態をきちんと見極めてもらい、必要なものを選んでいただける。この美容師さんの見極め技術があってこそ、ミルボンが研究開発している補修成分や製品の力が最大限に発揮できていると思います。

また、普遍的な髪の悩みはもちろんのこと、流行とともに変わるニーズにも応えるためには、美容師さんからのインプットも常に欠かせません。たとえば、より保湿効果の高いケラチン原料“MOIST-CMADK”の開発にあたっては、「最近では年齢層の高いお客さまからも”ブリーチや透明感のあるカラーをしたい”とご希望されることが増えており、それと同時に髪のうるおいやまとまりを求める声も多い」といったヒアリング結果を受けて研究が始まっています。
“毛髪の補修”ケアで、未来の髪を美しく

長年のたゆまぬ努力が実を結び、さまざまなケラチンが生まれたことで、一人ひとり異なる髪の悩みに対し、最適な補修ケアが可能に。
オリジナルの原料たちは今や多くのミルボン製品に配合され、美容師さんによる最適なセレクトを経て私たちの美髪への道をサポートしてくれます。今後のさらなる製品への活用にも期待ですね!
あわせて読みたい記事
良好な「血めぐり」が美髪や美肌を生む! クロロゲン酸に着目した最新研究レポート| Find Your Beauty MAGAZINE (milbon.co.jp)
育毛ケアに新たな可能性!? ~髪を生み出す“幹細胞研究”への新たな挑戦~| Find Your Beauty MAGAZINE (milbon.co.jp)